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132弾 猛抗議により撤回しよう

 どうしてこうなった……。

 今の俺は完全アウェーな状態になっている。3姉妹とグランドキャットが1匹、俺を取り囲んだ状態になり、俺は自部屋の隅のベットに腰掛けて、3人と1匹を交互に見渡す。そしてため息をつき、途方にくれる。


「ねえ、何か言ってくださいよ。」


 そう言って、ヘルバティアが険しい顔で、俺を睨みつける。


「ええ、どうして下宿を出ようだなんて。」


 ミアンの口調はソフトだが、醸し出すオーラが不気味だ。


「私たちと闘って出ていくのもいいけど、無事に出れるかしら。あ、メムちゃんもこっちの方についているからね。」


 ミヤンはもはや言ってることが、どこかの戦闘狂民族みたいだ。

 俺は大きく息を吐き出して、意を決すると、


「では説明します。盗まれた、チャティーア家のものだった絵とか冒険日誌が戻ってきたところで、それを確認して、元の世界に戻る方法を調べる。調べた結果次第では、この下宿どころかこの国を離れなければならないでしょう。俺はそう考えています。」


「まあ、そう考えているのは分かるのですけど、それで頑なにこの下宿を離れるというのも、どうかと思います。」


 ミアンが反論する。


「まあ、今すぐ出ていくわけではないのですが………、これ以上俺とメムの元の世界への帰還に際して、あなたたちを巻き込むことは避けたいのです。帰還のためにさまざまな問題や、もしかすると強大な敵と戦うことになるかもしれないですから。」


「私たちじゃ、ニシキさんとメムちゃんの今後の活動の足手まとい、戦力不足だと言ってるのかしら。」


 ミヤンが、背後に怒りの炎が燃え上がったか、と思うような気迫で俺を睨みつける。


「まあ、2人とも。落ち着きなさい。ニシキさんの言には筋が通っているわ。わたしたちに気を使ってくれているのは分かる。けれど私はニシキさんにいて欲しいのです。メムちゃんまでいなくなるのは嫌だし。メムちゃんでモフモフできなくなるのは嫌だし。まあ私的欲望です。でもニシキさん、あなたは私たちに助力してくれた。それもまた事実です。その恩も返したいと思っています。」


 何か一部開き直っている感もあるけど、あの囮調査も下手をすれば精神的、肉体的ダメージを刻み込みかねない危険さはあったから、……恩と言われてもなあ。


「ダン、ここまで彼女たちに言わせて、まだ下宿を出ると言うつもりかしら。いい、一つ重要なことを言うわ。私たちが地球からの異世界人、この世界トゥーアールから見て、私たちが異世界人であることを理解した上で、この3姉妹は、一緒にいて欲しいと言ってくれてるのよ。元の世界に帰還する、戻るためには、この世界で、私たちを理解してくれる人をじっくり増やすことも、必要じゃないのかしら。まあ、むやみやたらに、私たちは異世界人だと示す必要もないけどね。」


 メムがいつになく真面目な顔で俺を論破にかかる。


「私たちそんなに力不足でしょうか。過去にあなたと戦っていますし、そんな過剰に保護されている感じもあるのが、嫌なのです。あなたやメムちゃんと離れるのはいやです。」


 ミアンが半泣きでそう訴える。

 そんな双子妹を制して、ヘルバティアがこう言い出す。


「………そこで、メムちゃんやニシキさんに提案があるのですが、私たちチャティーア・ヘルバティア、チャティーア・ミアン、そしてチャティーア・ミヤンとパーティを組みませんか。」


 俺の予想を遥かに超える提案を持ち込んだのだった。

 メムが大きくうなずき、


「私は大賛成よ。あなたの戦闘にも大きな助けになるはずよ。賛成しなさい。私たちのことを理解した上でパーティを組んでくれるのよ。」


 そう言って俺に賛同を求めた。


「わ、わかりました、わかりましたから。パーティを組む話は少し考えさせてください。それに、下宿を出る話は白紙撤回しますから。」


 俺は、こう答えるしかなかった。



「うーん、なんてことだ。」


 俺は腕組みをしながら一人うめく。結局、俺が下宿を出ないと言ったことで、3姉妹とメムは勝利の凱歌をあげながら、部屋から出て行った。メムが、まさか3姉妹を焚きつけたのだろうか。まあしかし、そこまでやるとは思わなかった。

 おまけにパーティの結成の話までも出してくるとは。メムの仕込みか、持ち込み企画か。あんな形でメムが3姉妹と組むとは……。

今後どうしようか。


・パーティを結成するためにまず組合本部のセイクさんへ相談す

る。


・3姉妹の実力の再確認、そのための探索等


・3姉妹各個人で依頼をこなし各ランクを上げてもらう。


 などなどか。いろいろ相談や確認をしなくてはいけない。うーん。それに魔術研究もしたいしなあ。あー、やることが増えてきたような気がする。メモして綴っておこう。メムもいないうちに。


 そう思って研究についてメモして綴って、今後どうするかの考えをまとめてメモすると、1階から自部屋に誰かが来る足音がする。複数の足音がしてるのだが、何か足音に乱れというか、バラバラでバタバタな感じがする。

 気になってドアを開けたのが失敗のようである。


「あ〜、ダン〜、ちょっと、顔貸しなさいよー。」


 メムが足元をヨタつかせながら、こっちにやってくるが、歩みが遅い。


「メムちゃーん、メムちゃーん、メムちゃーん。」


 ヘルバティアが四つん這いでメムの後を追いかける。

 なんかアルコール臭が漂う。こいつら酒飲んだのか。て、未成年は飲んじゃダメだろ。いや、この異世界トゥーアールは飲酒可能年齢が違うのか、いやいや、なんでこうなってる。俺も少し混乱する。


「は〜い、ダン。顔かしてね〜。」


 メムがそう言いながら、俺にもたれかかり、


「わーい、モフモフするー。」


 とヘルバティアが俺とメムに抱きついてくる。

 そこへ双子妹が現れるので、


「ちょっと、この長姉をなんとかしてください。」


 俺が必死に声をかけるが、これも失敗のようだ。


「ニシキさん〜、ダンさん〜、抱き枕だ〜。」


 とミアンが言い出し、よろよろしながら歩み寄ってくる。


「ダメよ〜、ダメダメ。私の人形よ〜。」


 ミヤンもミアンの後ろでそう言いながら歩み寄ってくる。


「ちょ、ちょっとー、皆さん落ち着いてください。もうこれ以上は支えきれないので、いやー抱きつかないでくださーい。うう、く、苦しい………。」


 俺は、1匹と3人に押し倒されて押し潰された。

 そして1匹と3人は、そのまま酔いつぶれてしまった。



 なんとか四苦八苦して、酔いつぶれた3姉妹と元女神猫から脱出をして、3姉妹を一人づつ引きずって、自部屋の前から彼女の各々の部屋に放り込む。最後にメムをかついで、元女神猫の寝床に放り込むと、もう夜も遅い時間であった。


「うーん全くなんて日だ。」


 そう呟いて就寝した。

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