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130弾 この下宿から離れよう?

 これが弔食事ちょうしょくじか、パニオスをスープにつけたパンがゆのようなものに、野菜類のスープ。汁物のみのメニューを見て、カレーライスと味噌汁を組み合わせたメニューを想像してしまう。そんな感じで夕食を終え、いつも通りメムはヘルバティアと入浴し、俺は自部屋に戻り灌水浴室で体を洗い、再度自部屋に戻る。珍しく、いや初めて、入浴を終えたメムは単騎で部屋に戻ってきたのだった。


「珍しい、というか初の怪挙ですね。単騎でお戻りになるなんて。」


 驚いてしまう。いつも誰かしら一緒にきていたからなあ。


「やっぱり、ダンの見立て通りなのかも。弔葬の典が終わってメンタル的に疲れてしまっているようね。」


 メムが、そう言って俺の予測が合ってたことを認める。うーん、やっぱりそうか………。


「もう俺たちもそろそろ寝ますか。」


「そうね、疲れは溜めたくないし。」


 そう言ったところにドアがノックされる。ドアを開けると、そこにはヘルバティアがいた。


「ちょっと、話したいことがあるのだけど、いいかしら部屋に入っても。ついでに使用状況を確認するわ。」


「いいですけど……。」


 俺がそう言って入ることを許可する。まあ、契約主の権利で、使用状況の確認なんて言ってきたので拒否もできないだろうけど。


「質素な部屋ね。あんまり物を持たない主義かしら。」


 部屋に入って周りを見渡したヘルバティアは、そう言ってベットに腰掛ける。


「冒険者稼業をしていると……。」


 俺はそう答えるが、そこでまたドアがノックされる。今度は誰だろう。そう思いながらドアを開けると、ミアンとミヤンがいた。


「ちょっと、話したいことがあるのだけど、いいかしら部屋に入っても。」


 とミヤン。


「ついでに使用状況を確認するわ。」


 とミアン。


 2人はそう言って、俺の返答も待たずに部屋に入っていく。


「姉さん、何しているのですか。」


 ミアンがやけに静かすぎるトーンで問いかける。


「あなた達こそ何しにきたの。」


 ヘルバティアもミアンのようなトーンで逆に問いかける。


「もしかして、ティア姉さんもミアン姉さんも、ニシキさんと一緒に寝ようとしてた?。」


 ミヤンの質問で室内に冷たそうな空気が流れる。


「ミヤンがそんな問いかけするということは、ミヤンも同じことを考えてたのね。」


 とミアン。


「ふーん、私は契約主として部屋の使用状況の確認と、さみしいからメムちゃんと一緒に寝に来たのよ。ニシキさんはついでよ。」


 と妙に言い訳を足すヘルバティア。


「ふーん、面白くなってきたわね。でどうするの、ダンは。」


 とニヤつくメム。


「じゃあ、俺が外で寝ますので、皆さん、この部屋でどうぞごゆっくり……。」


 俺がそう言うと、メムが無言で俺の腹部に頭突きをかます。どうもうまく誤魔化したいが無理なようだ。おぉ痛ぇー。


「せっかく面白くなってきたのだからね、下手なことはさせないわよ。」


 メムがどこかの悪役みたいになっている。


「ニシキさん、大丈夫ですか。」


 そう言いながら俺に寄ってくるミアン。


「とりあえずベットに横になりましょう。」


 そう言って俺をベットにあげるヘルバティア。


「ティア姉さんに変なことはしないように。」


 そう言うと俺の両手を縛ろうとするミヤン。

 こ、これは危険な兆候だ、俺の身が危ない。このまま下手したらベットで永遠の眠りにつきかねない。どうしよう。


「えっと、俺はベットで寝ます。その隣にメムを置きます。メムの隣をヘルバティア、その隣をミヤン、ミヤンの隣をミアン。この並びでいかがでしょうか。」


「そうね、それにしましょう。探索用の寝袋を取ってきてそう並んで寝ましょう。」


 俺の必死の提案にヘルバティアが賛成する。ミアンとミヤンが3人分の寝袋を取りに行き、すぐに戻ってくる。

 そしてその夜は、俺の提案した形の川の字で、皆で眠ることになった。



 ふと、眼を覚ますと、メムがベットに上がり、俺の顔を覗き込んでいた。


「今は夜半過ぎよ。みんなよく寝てるわ。」


 小声で俺に話しかける。


「なぜ、俺の顔を覗いていたり?。」


「だって、寝言か悪夢のせいでかうめいてたし。」


「そうですか、そんな自覚はなかったのですが。」


「意外とビビリなのね。…この際この子らにまとめて手を出してしまえばいいじゃん。」


「メム様、修羅場を演出する気ですか。」


「そんなことはないわよ。でもまあ、ダンは気を使ったのね。やっぱり弔葬の典が終わってからガクリとくるかもしれないと予想したから、この行動も受け入れたのね。」


「……まあ、そうですが。」


「ふふふ、いい子いい子。」


 メムがそう言って俺をあやすように頭を撫でる。肉球がぷにぷにして、いい気持ちではある。


「メム様、……俺たちこの下宿を出ましょう。そして、別の下宿を探しましょう。」


「………うーん。それはどういう意味かしら。ダン。」


 そう言って、メムが動きを止める


「言った通りのことです。」


「ふーん、そうなんだ………。とりあえず寝ましょうか。話は明日聞きましょう。」


 メムは寝床に戻っていった。



 朝になり、結構早く目が覚めたようで、3姉妹はまだ眠っている。こっそり静かに起きて顔を洗いに自部屋を出る。

 洗面所で顔を洗い、


「さて、これからどうするか。」


 と呟くと、


「何を、どうするのかしら。」


 と声がして、ギョッとして振り向くとメムがいた。


「おいっ、びっくりさせるなよ。本当にもう……。」


 俺がボヤくと、メムが真剣な顔で、


「昨日の夜半の話は本気なの?。」


「本気だと言ったらどうしますか。」


 俺はそう言いながら庭に向かう。


「え、すぐに出るつもりなの?。」


「そんなことはありませんよ。盗まれた、チャティーア家のものだった絵とか冒険日誌が戻ってきたところで、それを確認して、元の世界に戻る方法を調べる。調べた結果次第では、この下宿どころかこの国を離れなければならないでしょう。」


 そう言いながら、俺は庭に歩みを進める。


「ああ、いい天気ですね。メム様。」


「ふーん。まあダンの言う事には筋は通っているけど……。私は反対よ。」


「元の世界に戻らなくていいのですか。」


「そうとは言っていないわ。あっそうだ、3姉妹は何かブツブツ言いながら部屋から各自の部屋に戻っていったわ。」


 そう言ってメムが深呼吸をする。


「あ、おはようございます。」


 庭に出てきたミアンが、俺たちを見て挨拶をする。


「おはようございます。ミアンさん。」


「この庭、気に入ったとかですか。」


「朝のこの庭はいいなとは思いますよ。」


 俺とミアンの会話を見ながら、メムが四肢を使って伸びをして、


「朝ごはんは一緒に食べましょうよ。」


 と言い出す。


「そうですね、そうしましょう。じゃあ、水やりをしてから準備にかかります。」


 ミアンがいそいそと、花壇に水やりを始める。


「………俺も朝食準備のお手伝いしますので。」


 俺はそう言って台所へ向かう。メムもついてきた。



「あ、そうだ。ニシキさん、今日手伝ってくれますか。」


「いいですが、何を手伝うのですか。」


 朝食をとりながら、ヘルバティアに手伝いを依頼される。


「イハートヨが盗んだ物などが戻ってくるから、その受け取りと片付けね。あと5枚の絵も。」


「ああ、わかりました。警備隊本部に受け取りにいくのですね。」


「ええ、ドラキャを使うから一緒に乗ってくれますか。」


 まあ、そういうのもあるな。俺はそう思いながら、


「いいですよ。じゃあ朝食を終えて身支度をすればいいのですね。」


 と回答する。


「そうね、でもそんな急がなくていいわよ。出かける時に声をかけるから。」


 と、ヘルバティアはゆっくりと出かける模様のようだ。

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