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124弾 これで解決するだろう?

(ふーん、いろいろ手配はしていたのね。やるわね、ダン。)


(証言する人はいないといけませんので。メム様も遊撃役、ありがとうございました。)


 念話術でお互いを称え合う格好になった。

 そしてそこに警備隊のドラキャが2台やってきて、わらわらと警備隊員が覆面の奴らの覆面を剥ぎ取り、縛り上げて、覆面の奴らの怪我を無視してドラキャに押し込む。


「こいつはしっかり縛っておきな。お前がちゃんと連行しときな。」


「はい、総隊長。」


 そう言った警備隊員を見て、クンクンさせたメムが


(あれ、これは、あの師匠よ、兼組合本部長よ。)


 と伝えてきた。


(まあそうだとしても、今はまず、3姉妹の様子を見ましょう。)


 そう返して、3姉妹のところへ。タータルさんがミアンを、ベランツさんがヘルバティアとミヤンを介抱している。


「まず、大丈夫ですか。」


 俺は3姉妹に声をかける。


「ありがとうございます。これで………解決しました、ね。」


 そう言ってヘルバティアが俺とメムに駆け寄り、俺たちに抱きついて泣き出した。その後ろからミアンとミヤンも長姉の背中に抱きつく。3姉妹全員泣きじゃくっている。



 ひとしきり3姉妹の号泣に付き合った後は、警備隊総隊長の指示で、現場と証拠の保全や小屋の中の捜索を行い、出て来たものを3姉妹が確認した上で、警備隊詰所本部へ持ち帰ることになる。5枚になった絵もしばらく警備隊で預かることになった。家から無くなった冒険日誌も出てきたが、これも同様であった。

 現地で事情聴取をしたあと、街に戻り、警備隊本部で俺とメム、ヘルバティアら3姉妹と今後の予定について話をし、俺は警備隊総隊長から直轄依頼完了の書類をもらって、下宿先へ送ってもらう。下宿先へ戻った頃には夜になっていた。3姉妹は、体調面の様子見のため近くの療養所で入院みたいになった。



 下宿先へ戻り、自部屋に入り、水をコップ一杯飲み、一息つく。


「メム様、もう今日は、疲れました。」


「そーねー、もう寝ましょう。」


 そのままグッタリとして、眠りについてしまった。



 翌朝、空腹で目を覚ますと、保管していたパニオスを軽く食べて、灌水浴室で体を洗う。


「しかし、昨日はお疲れ様でした。メム様。」


「ふぅ、しかしよくパーティメンバーまで呼べたわね。一体どうやったの?。」


「パーティメンバーは多分組合本部長か警備隊総隊長が呼んだのでしょう。位置の特定にはメム様が使わないと言った、香玉かおりだまですよ。あれを3姉妹に渡しておいたのです。ドラキャから匂うようにさせていましたので。それに、メム様にビー玉を渡しておいたのが良かったのです。ドラキャからあんだけ匂わせれば、そしてビー玉も転がってれば気づく人は気づくかなあとは思いましたが。」


「警備隊総隊長への手紙にも書いていたのかしら。ダン。」


「あの時は何か目印をばら撒くか、何らかの方法で考えています。後は組合本部長にもお知らせください。そう書いていたのです。」


「へえ、じゃあ、組合本部長のあの師匠が現場に警備隊員で変装して来てたのは、おそらく。」


「ええ、総隊長から連絡を受けたのでしょう。もともと総隊長と本部長は結構つながっているのでしょうね。でなきゃあんなスムーズに、直轄依頼の話が進むことはないでしょう。どっちにしてもメム様の遊撃役としての活躍のおかげですよ。」


「そ、そう。何か怖いのだけどねえ。でもダンの予想した通り、ご両親は、ね………。」


「こればっかりは、なんとも言えません。生きていればとは思ったのですが………。」


 結局しんみりしてしまう。


「あ、そうだ。ダン、今回の戦闘であの塀、というか木の絡まったバリケード、を吹っ飛ばしたのは、あれは新たなタイプの魔弾なのかしら?。」


 しんみりした空気を振り払うかのように、メムが明るめの声で聞いてくる。


「ええ、こうしてみたのですよ。」


 俺はそう言って、手近にあったメモ紙に【爆裂火弾】【岩弾】と書いて、メムに見せる。


「え、ああ、球の字を弾に変えたのね。そうか、あなたの名前でもある字よね。」


「ただ、実際発動させてみて、わかったことというか考えられることが一つ。」


「なあに、何か問題点でも。」


 メムが怪訝な顔をするが、


「うーん、ちょっと思ったのですけど、俺の魔力の消費量は、漢字の字数によってじゃないかと。」


「へー、あ、でも威力も上がってたわね。そうか、あのバリケードぶっ飛ばしたのはこの漢字四文字のものね。」


「ええ、そうです。この【岩弾】は、覆面連中に対して発動させました。」


 俺も少し得意げな顔をするが、


「じゃあもし、漢字最大数の魔弾を使って魔法を発動させれば、ものすごいことになるのじゃない。そうすれば、元の世界に戻ることも可能になるのじゃ。たとえば、寿限無寿限無五劫の擦り切れ・・・なんてものを書いて魔弾にすれば。」


「メム様、落語の寿限無には、漢字だけじゃなくてカタカナも入っていますが。しかもそんな長いのをこの紙に書けないでしょう。」


 魔弾用の外装の紙と詰め込み用の紙を示して反論する。全く、この元女神猫は斜め上の発想をする。


「ガラスペンが良くなっても、無理かしら。シストラニさんの作ってくれたものでも。」


「いや、………もういいです。」


 なんかこの元女神って、単にわがままなだけじゃないのだろうか………。


「とりあえず組合本部と療養所に行きます。依頼完了の報告と、彼女たちの見舞いをしましょう。メム様。」


 俺はそう言って立ち上がり、食後の片付けをして身支度にかかる。


「そうね、彼女たちは大丈夫かしらね。」



 組合本部へ向かい、受付に直轄依頼の完了についての書類を渡すと、受付が驚いた顔をする。慌てて奥にいくと、セイクさんを連れてくる。


「依頼を受けてから、8日程度で完了させるなんて………、いったい何をしたのですか。」


 セイクさんが依頼完了の書類を確認しながら、驚いた表情で俺たちを眺める。

 ええ、そんな早く完了させちゃったのはダメだったのか、幸運もあるような気がするだが。どう答えよう。


「あ、ああ、え、えっと、運が良かった?。的な感じです。」


「うーん、普通この手の直轄任務は結構時間がかかります。月単位、いや下手したら年単位ですけどねえ。」


 半ば呆れたという感じでセイクさんがため息をつく。


「何か問題でもありましたのでしょうか?。」


 俺がセイクさんのリアクションが気になり、疑問を投げかけてみる。


「まあ、問題、というわけじゃないのですが。では、組合本部長のところへ一緒に来てください。」


 セイクさんがそう言って、俺とメムは再び、組合本部長室へセイクさんに連れられて向かうことになる。


「では。」


 セイクさんがそう言って、本部長室のドアをノックした。

 ドアが開き、冒険者ギルド長のロジャー・ヤングさんが顔を出す。


「どうぞ、入ってくれ。セイク君、君は事務所で待機してくれ。」


 そう言われて、セイクさんはドアから事務所へ向かう。

 部屋に入ると、


「直轄依頼の完了か。ご苦労様じゃ。よくやってくれた。」


 と、前に対面した時と同じく、妙にしわがれた声で声がかかる。前の時と同じに奥の席で、魔法使いのような服装をしてフードを深く被り、顔の下半分ををフェイスベールで隠した威圧感のある老婆が……これが組合本部長に変装した3姉妹たちの師匠か。

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