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123弾 このど阿呆をとっちめよう

 互いにうなずくと、その塀みたいなものを観察する。すごいな、魔法の発動でこんな立派な塀ができるのか。高さは3マータル、厚みもある。ちょっと登るには厳しいか。メムも首を左右に振る。飛び越えるにも爪を立てて登るのも厳しいようだ。そこに、イハートヨの話が聞こえてくる。


「そう、お前たちの両親を殺害したのは俺だ。……どうだ、死ぬ前に色々教えてやる。」


 じゃあ、じっくり拝聴しましょう。


「俺は、俺は、あのアネミクに恋焦がれていた。ものにしてやろうと思っていた。ずっとな。だがあいつは、あの野郎と、お前たちの父のバードスタと結婚しやがった。でも、でも俺は諦めきれなかった。隙を見てお前たちの家に忍び込み、いろいろと情報を盗んだことも、アネミクの下着を盗んだこともあった。」


 お、一息ついたか。そう思っている間に俺に接近する人2人。とりあえず手を挙げて音を立てないようにお願いする。話は聞こえているようでその2人には侮蔑の表情が出ている。


「そして俺は盗んだ冒険日誌からお前らの両親が、異世界に行ったことを知った。俺もそこに行ければとんでも無い力が手に入ると思った。そこでその異世界について研究してみた。そうしてパーティの活動も休止してその間にさらに研究を進めた。その間もお前たちの家には、何度もこっそり忍び込み、情報を抜き取り、隠し扉に異世界のことを書いた絵があると知った。そして2年前。」


 おお、いいところで区切るなあ。このクソストーカー野郎。そこにもう1人が俺に接近する。俺は相手を見て思わず無言で一礼する。相手は静かにうなずく。

 イハートヨは調子に乗って来たようだ。


「2年前、俺はストーキングして得た情報から、あの両親が鍛錬と探索に行くことを知った。そこでこっそり強襲しようとしたが、おたがい庇いあった結果、俺の魔法発動でダメージを受け死んでしまった。お前たちに使っている、ウッディウイップバインドの魔法が首に入ってしまってな。実に残念だった。実に残念だった。俺は、アネミクとお前たちをじっくり犯し、なぶり、絶頂したかったからな。だが、これでもいい。お前ら3姉妹に俺がオスを教え込んでやる。しかし、……実によく育ったなあ。最高だ。ウッディウイップバインドには、縛りつけたものを俺の元に引き寄せることも可能だからな、まずは……どいつにしようかな…。」


 もう頃合いだな。新型魔弾の試し撃ちだ。


「皆さん下がってください。」


 俺はそう言ってハンマーを起こし引き金を引く。


 ドシュ、ドシュ。

 ドゴーン、ドゴーン。


 激しい爆発音と爆炎が高く上がり、周りが埃っぽくなり、視界が薄く遮られる。


「よし、開いたな。」


 俺はそう言ってバリケードの中に突入した。メムが後に続く。その塀みたいなものは、一辺が見事に吹き飛んでいた。

 その中では、局部を露出したイハートヨと何が起こったか把握しようとする覆面の奴3人が右往左往していた。3姉妹は茶色の蔓のようなもので、体をぐるぐる巻きにされていた。まあ、派手にぶっ飛ばしたからみんな埃まみれになってしまったか。

 俺とメムはダッシュで縛られた3姉妹の前に立つと、短剣を持って襲いかかる覆面の奴らに魔弾をぶっ放す。


ドシュ、ドシュ、ドシュ。


 魔弾は魔法を発動させて、奴らの肩を撃ち抜く。

 覆面の奴らは肩から血煙を上げて、ひっくり返った。

 イハートヨは、局部を露出したまま、剣を振りかぶり、俺に向かって突きを入れようとするが、


「ぎゃぇーーーーーーーーー。」


 おぞましい声で悲鳴をあげる。

 股間から血が滴り落ちる。

 メムがイハートヨの股間に噛み付いたのだった。


(全く、あんなもの、噛み付く程度で十分でしょ。噛み切るのは嫌だからね。)


(十分です。メム様。)


「ニシキ、貴様ぁ!。……殺してやる!、殺してやる!、殺してやるーーー!!。」


 イハートヨがわめいた後、短杖を口にくわえ、右手で大剣を鞘ごとつかみ、大剣を抜く。左手に大剣、右手に短杖を持ち換える。大剣と短杖の二刀流か?。


 そこへ、


「まあ、派手にやったね。ニシキ殿は。囮調査ってもっと静かにやるものだが、こんなことになるなんてね。」


 警備隊総隊長が、そう言いながら登場して3姉妹の様子を見ながら、ヘルバティアを庇うように立って、


「イハートヨ・ダノーツ。観念しな。ここにはもうすぐ警備隊も来るよ。」


 と、警告する。

 さらに、


「これが私たちのパーティのリーダーだったなんてね。お嬢さんたち大丈夫?。」


 と言いながら、タータルさんが現れて、無言でベランツさんも一緒に現れてミアンとミヤンを庇うように立つ。


「お、お前ら………。」


 パーティメンバーに見られたことで動揺を隠せないイハートヨ。その隙をついて、俺は、残り一発をイハートヨの持つ短杖を狙ってぶっ放す。

 見事に命中して短杖は砕け散る。それにより、魔法の発動効果が切れたのか、3姉妹を縛っていた蔓のようなものは、くったりとなり解けてしまう。それを見た総隊長にタータルさん、べランツさんが3姉妹を救い上げてバリケードの外へ運び出す。


「うぉおおおおおおおおお!。」


 イハートヨが獣のように咆哮して、俺を睨みつけると、


「なぜ、俺が怪しいと思った。何が何が……原因なんだ。」


「完全におかしいと分かったのは、絵を見せて会話した時ですよ。俺は下宿先でいろいろあったとは言いましたが、あなたはその後、襲撃があったと言いました。なぜそう言えるのですか。そうです、あなたが襲撃を指示したからでしょう。」


「う、う、うーん。そ、そう言われれば。」


 そう会話しながら、俺はゆっくりと弾倉を降り出し魔弾を込める。


「さあ、どうするのですか。ある意味、あなたの終わりでしょう。局部まで露出させて、そして悪事も露出しましたが。」


 そこへ怪我した体を無理くり動かして、無言で覆面の3人が俺に襲いかかろうとするが、


「ぎゃっ。」


「うぐっ。」


「ぐはっ。」


 メムが竜巻のごとく噛みつき、引っ掻き、頭突きを3人相手に繰り出した。


(さあ、お仕置きターイムの始まりよ。いいわね、ダン。)


(殺しちゃダメですよ。メム様。)


(金的にダメージ与えるだけならいいでしょ。)


 相手3人も怪我しているし、メムも暴れる気満々であるからか、3人を次々戦闘不能にしていく。少しメムにやられる奴らが可哀想に思えてくる。


「覚悟しろぉーっ。」


 そう叫んで、イハートヨが大剣を両手に持ち、俺をめがけて突きを繰り出してくるが、


「集中。」


 そう呟き、拳銃を構え、狙うはあの大剣。ゆっくり動いて見える大剣に狙いをつける。


 ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ


 装填した魔弾全弾一気にぶっ放す。全て大剣に命中し、大剣はポッキリと折れた。

 ふぅ、殺しちゃダメだしな。

 しかし、イハートヨは折れた大剣を放して、拳を振り回してくる。右ストレートか。動きはスローに見えている。

 俺は、右手で拳銃の銃身を持ちかえ、殴打用武器に切り替えて、銃把を相手の右拳めがけて叩きつける。

 グシャリとぶち当たる感触があり、イハートヨは動きを止める。そこへ追撃でやつの左頬に銃把を叩き込む。イハートヨはぐたりと崩れ落ちた。その傍では、覆面の3人を叩きのめし戦闘不能にしたメムが、俺を見ながらグイッと胸を張っていた。

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