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122/189

122弾 ちょっと小芝居してみよう

 2日前、下宿先の自部屋で、


「ここまでしたからには、ちゃんと説明してくれるのでしょうね。」


 メムが俺に早く説明しろばかりに、机に座り込む。


「もちろんです。お待たせしました。では。」


「じゃあ、ダンが雑貨屋で買ったものについて説明してちょうだい。」


 そう言って机に置いた袋の中身をクンクンと嗅ぎ、俺の顔を見る。


「それは、香玉かおりだまというヤツです。前世なら匂い袋みたいなものです。」


「結構いい香りがするわね。」


「ええ、メム様の能力を全力発揮してもらおうと思いまして。」


 俺がそう言うと、


「へえ、ずいぶん私を高く買ってくれるじゃない。で、私はどうするの?。」


「遊撃役です。」


「はい?、はい?。」


 メムが体全体にクエスチョンマークを浮かび出しそうな勢いで俺に確認する。


「今回は、俺と別行動です。3姉妹についてもらいます。」


「え、じゃあダンが単騎で、あいつと渡り合おうとするつもり。ダメよ、危険よ。それなら、この囮調査は無しにしましょう。」


 メムが全力で俺に反対する。


「うーん、困りましたね。じゃあ、俺の考えを説明しますよ。まず、俺が単騎でイハートヨと会うのは、相手の警戒心を緩めるためです。手土産にあの3枚の絵を示して、この前の勧誘に応じる形をとります。そうすることで、向こうは、自分らの計画が漏れているとは思わないでしょう。それに、絵の強奪なりのリスクを負わないで済む、ということで、俺にいろいろ話してくれるかも知れません。おまけに、俺がこの絵をダシに、3姉妹を呼べると進言することで、その通りにことが進めばもっと信用してくれるかもしれません。しかし、信用するといっても、他の場所に俺を連れて行くかもしれません。そういう時に、ある意味自在に動けるのは、メム様しかいないのです。そして、メム様の嗅覚に全てがかかっているのです。だから香玉かおりだまを数個用意したのです。ドラキャや絵に匂いをつけて、行き先をメム様に判別してもらうのと、手違いなどで3姉妹が不明になった時の用心としてです。」


「……そういうことなら、でも3姉妹の匂いは十分判別可能よ。香玉かおりだまはいらないわ。私も女神としての力が全くなくなったわけじゃない、つもりよ。」


 意外とメムが弱気なとこを見せてるな。まあ、単騎で行動させるからな。


「それに、さっき警備隊総隊長宛の手紙で、俺が調査した結果について書いておきましたので、そちらからも援護はあるでしょう。それに手紙には、組合本部長にもその旨伝えてくれとは書いていますので。」


「……それは手回しがいいわね。でも、あの組合本部長よ。マイナスの戦力にならないかしら。」


「正直どう動くは、組合本部長に関して言えば、ギャンブルです………。ジョーカーのカードです。」


「はあ?、それはいいの?。」


「それでも打てる手は打ちましたので。」


 まあ、それでもダメなら、研究中の新型の魔弾を投入するつもりだが。


「ふぅ、わかったわよ。あなたの囮調査に乗ってみようじゃない。」


 メムがようやく乗り気になった。


「でも、この囮調査、今から始めるわけではないでしょ。」


「もちろん。明日、俺は、組合本部へ行ってイハートヨに会えるかどうか確認してきます。会う理由は、勧誘について回答するため、とします。」


 その後は、3姉妹にもこの話をして、俺が裏切り者の役を演じることと、3姉妹にメムをつけることを了解してもらい、3枚の絵を預かる。




 俺は前々日のことを思い出し、まあ流れ的には俺の想定の範囲内だろうと考える。まずは、この小屋の構造を調べてみる。

 小屋の中をあちこち歩き回ると、ある場所だけ足音の響きが違うようだ。床にかがみ込み、その音の違うところを拳でコツコツと叩いて確認する。

 なるほど、小屋の中央のここに隠し扉か。小屋はまあまあの広さで前世でいうところの15畳ほどの広さだが、寝床だけの殺風景なもの。隠し扉は簡易に作られた何かの木でできてる。床に似せているが、その隠し扉の部分だけ作りが粗い。

 じゃあ今度は、ちょっと小屋を外から見てみるか。

 じっくり見てみると、まあ前世でいうところのログハウスに近いかなあと思える。これイハートヨが自分で組み立てたのかなあ。

そう思いながら、小屋のあちこちを眺めていると、ドラキャの音が近づく音がする。2台か。そう思いながら音のする先をみると、ドラキャがこの小屋に向かって来ていた。


(メムよ、聞こえるかしら。)


 念話術。まさか。


(一緒なのか、彼女たちと。)


(ええ、ドラキャに隠れているわ。見つからないようにね。あと、彼女たちは刃物を突きつけられている状態よ。)


(メム様、そのまま潜んでいてください。あなたがこの状況で、最大の切り札ですから。)


(わかったわ。)


 よく隙間があったな。車軸のところか、それとも、一体どこに潜んでいるのやら。

 ドラキャが小屋の前にきて止まる。中からイハートヨと、橙色覆面の奴に、首に刃物を突きつけられたヘルバティアが降りてくる。

 もう1台からは、赤色覆面の奴と、橙色覆面の奴に、同様に刃物を突きつけられたミアンとミヤンが降りてくる。

 やはりイハートヨはこうしたか……。


「おい、お前、ニシキ、小屋に一緒に来い。あとの絵を出す。」


 調子に乗っているな、俺に命令をして残り2枚の絵を出すつもりか。


「えっと、じゃあついていきます。」


 そう返答して、イハートヨと一緒に小屋に入り、俺が見当をつけていた隠し扉へ。


「ついてこい。」


 短くそう言って、俺を従わせて狭い階段を降りる。両肩がこすれそうだ。

 小さな物置みたいなドアを開けて、絵を引き出す。1枚を俺の右手にもう1枚を左手に持たせて

 俺の前を先に行き、出口へ向かう。

 隠し扉を抜けると、2枚の絵をイハートヨに渡しながら見る。やはり絵には、旅客機と、とある特徴ある建物の絵が描かれていた。

 と渡し終えた途端に、イハートヨが剣を抜き俺に突きを入れる。


「集中。」


 そう呟き、あえて、隠し扉から狭い階段へ入る。


「ふん、そこに逃げ込むか。ご苦労だった。絵まで持ち込んでくれた上に、あの娘たちを呼び出す助けまでしてくれて、本当にありがとう。勧誘した甲斐があった。」


 そう言いながら、隠し扉を閉めてロックをしたようであった。


「まあ、パーティメンバーになったのだ。後でお前が死ぬ前に愉しませてやる。少しそこで待っていろ。」


 わぁお、悪役ムーブ半端ねえ。

 イハートヨはどうやら絵を持って、小屋から外に出て行ったようだった。


「ウッディバリゲイド。」


 そう大声で言う声が聞こえた。イハートヨが魔法を発動させたようだ。

 さらに


「ウッディウイップバインド」


 何かを縛ったな。


(ねえ、あいつイハートヨの奴、自分の周りを木の枝の束で囲ったわよ。まるで塀みたい。)


 メムが念話術で伝えてくる。

 さて、俺を閉じ込める手も予想されたので、安心して拳銃を抜き出す。

 思いっきり接近して、銃口を扉に当てハンマーを起こし、引き金を引き


 ドヂュ、ドシュ。


 やっぱり脆いな。【火球】の魔弾2発で隠し扉は粉々になる。

 小屋にも用心のためか、ロックされているため、


 ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ。


 【火球】の魔弾4発をぶっ放すと、小屋の扉も砕け散る。

 さて、どうなっているのかな。おお、なるほど。10マータル、10メートル四方の木の枝が組み合わさった塀みたいなものができている。それを見ながら、研究した新型魔弾を装填する。

 そこへメムが駆け寄って来た。

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