表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/192

118弾 これから教育受けてみよう

 翌日、俺たちは朝食をとり、身支度を済ませて、組合本部へ向かう。いつものように掲示板をチェックして依頼を探す。


(このようなことをするのは、ずいぶん久しぶりのような気がするわね。もしかして、変装術を教わることに何か不安があって逃げたのね。)


 メムが念話術で言ってくるのを無視して、商業ギルド系の依頼を見つける。これとこれを一緒にやれば、ルート的にも一気に終わらせられるか。そう思いながら、受付へ行き依頼受理の手続きを済ます。急ぎの配送達なので、さっさと荷物を配送達をして依頼完了手続きの書類をもらい、受付に戻り手続きをして依頼完了して代金を受け取る。


(ずいぶんさっさとやったわね。もうすぐ昼食だけど、いいの。)


(まあ、商業ランクも気にしておかないと。上げれるうちに少しでも上げておきたいですし。)


 そうメムと念話術でやり取りをして、組合本部の食堂で昼食にする。

 昼食後は、セイクさんに相談することがあって、相談に乗ってもらう。


(昨日は不在だったけど、何を相談するの?。行方不明の調査の件かしら。)


(いいえ、華燭の典の時のマナーとかを相談します。)


(ああっ、そうね、聞いておかなきゃね。)


 いや、メムには何か着せるべきなのか、そう心の中でツッコミを入れつつ、


「相談事項は何でしょうか?。」


「あのー、実は、華燭の典に招かれそうですので、何をしたらいいか、とか、何を着ればいいかとかを知りたくて、話を伺いたく。」


「あらー、いいことですね。正祭典礼服を着ればいいかと思います。まあ、売っているのを買うことになるでしょう。あとは、華燭の典ということでしたら、何かしら役をすると思いますので、その役用の上衣を用意することになります。」


「はあ、えっと、せいさいてんれいふく、を着るのですね。その上に、やくようのじょうい、を着るということですね。」


「大丈夫ですか、頭から煙が出てるような状態に見受けられますが。」


 確かにこの世界トゥーアールの風習について知るのは、初めてなこともあるからなあ。


「すみません、このグランドキャットには。」


「ええ、益獣用の正祭典礼服がありますので、それを着ればいいのですが、その大きさだと合うものがあればいいのですが。」


 えっ、そうなの。聞いておいてよかった……。


「そういう正祭典礼服についてなら、あなたと契約しているマーハ商店に聞いてみてはいかがでしょう。正祭典礼服について私より詳しいでしょうから。」


「なるほど、よくわかりました。あともう一つ質問というか相談なんですけど、パーティの組み方にルールはあるのでしょうか。」


「そうですね、パーティを組むことになれば、前に臨時メンバーの依頼実施の際に聞いたかもしれませんが、パーティ名を登録する必要があります。あとは組める人数が最大9人までとなります。」


「最大9名ですか。このグランドキャットは数に入るのですか。」


 俺は隣で狸寝入りをしているメムを指差して聞いてみる。


「数には入りませんが、人によっては数に入れる人もいます。糧食の補給とかの問題があるからです。」


「補給の問題というのは、一体。」


「依頼の内容によっては、糧食の補給を受けることができる依頼があります。ただし、それに益獣が入らないことがほとんどです。パーティメンバーの数で用意するのですが、益獣の分は主人自身で用意しなければならないのです。益獣の数を入れるとパーティとして管理しやすいでしょうが、不用意に多く補給を受けて、過剰補給となることもありますので。」


 うーん、なかなかシビアだ。まあでもある意味当然か。


「過剰補給を受けると何か犯罪に問われるとか?。」


 恐る恐る聞いてみる。


「いえ、依頼完了までに言って、受けた補給を返却してくれれば問題にはなりませんが、そのままにしておくと、後で返却か金額を支払うかになります。長期にわたり返却請求や支払い請求を無視した場合、しょっ引かれます。」


 あー、前世の日本で、駐車違反とかの軽微な違反を無視し続けた結果みたいになるのか。あれもほっておくと警察が家にやってきたりするのだったっけ。


「勧誘とかにルールはあるのでしょうか。」


「うーん、しつこい勧誘とか強引な勧誘はもちろんダメです。そういう勧誘をされた場合は、こちらに一報してください。パーティのリーダーに組合本部から警告が行きます。それでも勧誘が止まらない場合は、そのパーティに対する依頼を全て停止します。そのパーティは一切の依頼を行うことができなくなります。」


 ふーん、しっかりしているなあ。でも。


「依頼を停止しても、まだ勧誘を続けた場合のパーティは。」


「ほとんどないですが、強制解散になります。大連合機関を通じてその旨も他国に伝えられます。」


 なるほどなるほど。大連合機関というのはそういう役をするのか。


「ただ、ニシキ様の場合、まだランクはミドルランカー。パーティを組む前にランクを上げ実力をつけることをお勧めします。」


「いやー、よくわかりました。相談に乗っていただき、ありがとうございました。」



(なるほどね、確かに聞いておいてよかったわね、ダン。)


(メム様のですか。益獣用の正祭典礼服を探すのか……。うーん。)


(そうと決まればマーハ商店にレッツゴーよ。)


(いや、まず調べるべきことを調べましょう。)


 ということで、組合本部の許可をとって書庫に入る。その後、街の中央図書館にも行って資料を漁り読む。


(これで華燭の典は大丈夫、かしら?。)


(うーん、マナーの話は頭に入りにくいなあ。)


 こういう慶事のマナーはなかなか難しいな。ましてや異世界でマナーを学ぶとは……。



 マナーを学ぶことは、半ば諦めて下宿先へと帰ることにする。夕食前か、自部屋に一度戻ってから夕食に行くか。そう思いながら、奥に向けて、


「ただいま戻りました。」


 そう言って自部屋に戻ろうとすると、変装したミアン=イワンがやってきて、


「師匠から手紙が来ました。私たちの変装術向上のためにも、どんな形でもニシキさんに教え込めということです。」


 あ、え、もう連絡したのか。もう少しタメてくれても、とは思うが、


「わかりました。よろしくお願いします。」


 俺は、半ば諦めの境地で頭を下げる。


「では、夕食はご一緒に、入浴後に変装術の話をしましょうか。」


「はい、わかりました。」


「何よ、ダン。私にバフロッグ退治の時に歌わされて以来の困惑顔ね。あー面白そう。」


 元女神とは思えないくらい悪魔的なコメントだなあ……。



 夕食と入浴を済ませて、リビングダイニングに皆が勢揃いする。


「では、変装術について、教育を開始します。」


 ヘルバティアが緊張した面持ちでそう宣言する。

 そんなに肩に力が入っているとなあ、ああ、カチカチになってるよ……。


「あのー、そんなに緊張されると、教育を受けるこちらとしても受けづらいので……。」


「だ、だいじょびよ。き、きちゃんと教育をしゅるから。」


 あーあ、緊張でしゃべりがカミカミになっている。絵面的にはなんか可愛い。

 そこへメムがヘルバティアの隣に来て、


「こんなのはどこぞの食い物とかと思っときゃいいのよ。緊張しないようにって言ってるアイツも、意外とビビっているから。」


 おい、ヘルバティアを落ち着かせるためだとしても、なんて言い方しやがる。


「メム様、ひどいです。」


 俺がそう言うと、


「いいじゃないの、ダン。あなたも、この3姉妹のために犠牲になる覚悟はしているのでしょ。」


「なんかそのセリフは、この場面で言うものではないと思いますが。メム様。」


「そう言いながら、何されるかわからないからブルってるのでしょ。」


「随分な言い方しますね、………ダメだ、何も言い返せねえ。」


「ふふん、どうよ。」


 そのやりとりを目の当たりにした双子妹が、揃ってクスリと笑う。それを見てかどうかは分からないが、ヘルバティアも少し落ち着いたようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ