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113弾 ここで推理してみよう

「ああ、お疲れ様です。ヘルバティアをミアンが抑えている、というところですか。」


「ええ、そうです。女神でもグランドキャットには変わらない、とかいって、1日1時間の制限を破ろうとするので………。」


「はあ、そうですか。」


「でも、下宿開始当初に比べたら、だいぶマシになったわよ。」


 メムが気だるそうに言う。


「そういえば、ニシキさんは、どこであんな絵の技術を覚えたのですか。」


 ミヤンが思わぬ質問をしてきた。


「うーん、学校の授業。あとは、自学自習というところで。なぜこんな質問を。」


「いや、今日見せてもらったニシキさんの描いた絵、結構上手だな……と思いまして。」


「でも、俺たちのいた世界じゃあれでもまだ上手とはいえないですよ。そちらでは、やはり絵描きの需要とかが多い、とかですか。」


「ええ、肖像画を描く人は稼ぎも大きいです。うまく、早く、安くが揃っている肖像画家は人気がありますから。」


 写真なんてものはこの世界トゥーアールには全く無さそうだしな。

 続けてミヤンが


「あとは、素早くスケッチできる力のある冒険者も肖像画家並みに稼ぎますね。未知の獣とかに遭遇した時に、素早くスケッチした絵は貴重ですから。」


 と言ってくる。

 まあそうだろうなあ。


「あなた方は、そういう能力はどうなのですか。」


 と聞いてみた。


「うーん、そんなに上手に描く力はないと思います。描く能力は、ある程度先天的な能力もあるでしょうから。」


 とミヤンが答える。

 それについては否定しない。音痴と一緒で絵のセンスがなくて、壊滅的な絵を描く天才いや天災な知り合いが俺の前世でもいたからな。


「じゃあ結構な数の絵画が流通しているのですね。」


「ええ、肖像画、人物画が大半でしょうけど。あ、夜分に失礼しました。おやすみなさい。」


 ミヤンはそう言って引き上げた。


「まあ、入浴の時にも話が出たからね。絵の話が。」


 そう言いながらメムが寝床へと向かう。


「ふぅん、どんな話でしたか。」


「そうね、ご両親が不明の後、同じパーティにいたメンバーに聞いたり、変装してそのメンバー宅に張込んだりしたけど、手がかりが全くなかった、って。絵の情報もそれらしき物は見当たらなかった、ともね。」


「うーん、やはりそうですか。」


「え、やはりって。」


 メムが寝床から出てきて俺に寄ってくる。


「黒幕は多分、ご両親と同じパーティにいた者じゃないかなと。」


「え、どうしてそう言えるのかしら。」


「まだ、あくまでも推理のみで証拠はないですが、今までの聞いた話をつなぐとおぼろげながら、あらましが見えてくるようです。」


「よし、話を聞こうじゃないの。」


 メムが机の上に飛び乗る。


「いや、もう寝ましょう。明日にしましょう。」


 俺はそう言ってベットに移る。


「えー、そんなもったい付けないでよ。さっさと言ってよ。」


「じゃあ、明日は魔術研究ですので。」


「えー、ぶーぶーぶー。」


「魔術研究にして、3姉妹には部屋に入れないようにしてから話しますよ。それでOKですか。」


「………わかったわ。じゃおやすみ。」


 メムがあっという間に寝床へ戻って眠りにつくのを見て、俺も眠りについた。



 翌朝、散歩がてらパオニスを買い込む。しばらくはこっちはこっちで食事をしようと思ったからだ。正直、昨日のトンデモ料理にはしばらくトラウマになりそう、というかもうなっている。

 パオニスを買って戻ったら、ミアンが部屋の前に。


「あの………今日はどういう予定でしょうか。」


「えっと、魔術研究に(いそ)しみますので、しばらくこもります。多分ほぼ一日。」


「あっ、そうですか………。」


「何かこの家や店で手伝うことでもあるのでしょうか?。」


 俺がそう聞くと、


「……昨日は、申し訳ありませんでした。」


 そう言ってミアンは急に頭を下げた


「はい?、なんのことですか。」


「いや、その………無理に姉さんが作った料理を食べさせたことに……です。」


 そう言われても、別にミアンが詫びることではないのだが……。

 俺が困惑していると、俺の隣で、メムが妙なリズムで踊っている、のか。


「いや、あなたが詫びる話でもないですし、もうこの話は終わったことで。はい。」


 俺がそう言うと、ミアンは無言で一礼して、俺たちの前から離れていった。



「さて、朝食にしましょうか。あっさりしてますが。」


 俺はメムにそう言って、簡単ながら朝飯の支度をする。


「はーい、で、今日の予定はどうなの、ダン。」


 メムがニヤつきながら変な質問をする。


「昨夜話したでしょう、あらましについての話をすると言いましたが。」


「………なんか、つまらない。」


「はあ、昨夜、もったい付けるなと言って、それはないでしょう。」


 少し声を荒げる。


「…いや、ごめんなさい。そうね、あらましの話をするのよね。どうぞどうぞ。聞かせてちょうだい。さあ聞かせてちょうだい。」


 何かメムがおかしいのだが、よくわからない。

 とりあえず、また『魔術研究中』の札をドアノブにかけてから、メムとの話になる。



「まず、ご両親の行方不明から話しますか。」


「時系列に話すつもりなのね。」


 メムは俺の隣で床に横たわり、俺は椅子に座り机に広げた数枚のメモを見ながら話をする。


「行方不明の件については、おそらく、残念な結果になっているでしょう。」


「え、そんな言い切っていいの。」


「あくまで、推理のみですから、証拠はありません。ただあの3姉妹のことを思うと、まだ俺が言うことではないでしょう。」


 そう言って俺は水を口にする。


「残念な結果とは言うけど、………推理が雑な気もするわ。」


「動機は、俺たちのいた地球世界の情報、あのご両親が転移した時の情報でしょう。その異世界に5日ほど迷い込んだのだが、元のこの世界に戻ったら、ほんの少しの間の時間しか経っていなかった。でも少しの時間でもいなかったこと他のパーティメンバーが知ったら。もしくは、誰かそのパーティメンバーに話した。」


「うーん、その誰かが、情報を得るために拐かした、その後は、消した。と言うことかしら。」


「その後、彼女らの家から絵と冒険日誌の一部が盗られている、情報を得てそういう行動をした、そして得た絵と冒険日誌から詳細を調べてその異世界、つまり地球の世界について情報を得ようとした。」


「じゃあ、2年間かけて調べて、さらに情報を得るために、家に侵入し、襲撃をした。ということなの。」


 さすが女神様、察しがいい。


「目的は、残りの3枚の絵でしょう。おそらく黒幕は、地球に転移するのに何がいるかは、わかっている可能性が大きい。ただもしかすると、5枚の絵を揃えることで、地球に行くための『もの』が手に入るのじゃないかと思っている。」


「絵が揃うと、地球への扉が開くとか。だとしたら、元の世界に戻るチャンスね。」


 メムが俄然やる気を見せる。


「いや、5枚の絵が揃って、地球への扉が開くのではないでしょう。お宝が出てくるかもしれないですが。俺たちが前に絵に隠されたお宝、白粉石の鉱山の地図を見つけたようになるのかもしれません。」


「………この世界の奴らは絵に宝の地図を隠すのが好きなのね。」


 メムはちょっとムッとする。


「そして、俺たちは、以前に黒幕と疑われる奴らに会っています。」


「え、もしかして………あ、四つ星 (クアトロ・エステレイア)。ダンが臨時パーティメンバーになって活動した時の。」


「かつては七つ星 (シエテ・エステレイア)と言っていた、とニザールさんが教えてくれました。」


「昨日の話で出てたのは七つ星 (シエテ・エステレイア)、だった。」


「あとは、調べていくしかないでしょう。この推理が成立し得るかどうか。」

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