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110弾 この依頼の完了方法を考えよう

「なんか濃い1日だった気がするわ。」


 入浴を終えて、自部屋に戻って、メムが早速そう言ってくる。


「まあ、あのディマックさんでしたっけ、とんでもない変装術を持っているのでしょうね。それなのに変装も無しで俺とメムに会うなんて、大胆というかなんというか。」


 俺も買い物帰りにしたミアンとの話も思い起こしながら、ちょっと性格の変わった、能力の高そうなあの師匠と俺が戦って勝てるかどうか心配になる。


「そうね、それにね、ダン。あのディマックはヤバいわよ。色んな意味で。」


 メムが真剣な顔になる。


「メム様、何か感じられたので………。」


「あの人、少年愛嗜好よ、ほぼ確実ね。あなたに知り合いの少年の紹介を求めるなんてね、それにあれスカウトかしら。ヘルバティアに対して。多分、目的があって少年ぽいヘルバティアに声をかけたような気がするわ。」


「ああ………、やっぱりメム様もそう思ってましたか。」


「やっぱり、って、もしかしてダンも、そう思っていたのね。」


「ええ、まあ話をしてみて変装術は凄腕なのでしょうけど、何かゆがんだ感じは受けました。」


 メムも同じ感じを受けていたのか。認識が一致したのだな。


「ふぅーん、じゃもう一つ。あれ、組合本部長よ。」


「………はあ、………へ、組合本部長、ですか。」


「朝のうちに会って、昼食後に会って、匂いが同じだったわ。組合本部長としての顔と、別の顔を変装で使い分けていたりしてるのかしら。」


 まあ、あの3姉妹の変装を匂いで気づいたからな、前はセイクさんの変装も。信頼できるな。


「さすがですね。よくわかったというか、嗅覚がとんでもない。」


 俺は感嘆まじりに言う。


「でも、これで組合本部長に優位に立てるのじゃ。」


「いや、難しいでしょう。それにメム様の力と、異世界のものであることを知られると………かえって面倒なことになるでしょう。」


「…あ、そうか。あの時の3姉妹のリアクションも考えると。」


「ただ、俺たちは、それを知っている、という切り札(ワイルドカード)は持てます。ディマックさんは、俺たちがあの人を組合本部長と思っていない、と認識してるはずです。」


 メムが目を見開いて、うなる。そして、


「うん、うん、そうか、そうか。下手に組合本部長だと騒ぐよりは、組合本部長の意図を汲めるようにしておかないと、ということね。」


「まあ、それもこの依頼の完了のために必要でしょう。」


 さすが、猫型でも女神様だ。組合本部長の意図を汲めるようにすることは考えていなかった。


「じゃあ、早速調べにかかるのね。また3姉妹から話を聞くの?。」


「いや、他の依頼もこなしながらにしましょう。ここは一気に片付けるより、アプローチ方法も考えておかなければ。」


「……いいけど、何もしないというのも。」


「いや、ご両親の残した資料はまだ見てないですから。まずは、それを見て読んで調べることになるでしょう。どうですか、メム様。」


「わかったわ。でも、やることはいろいろあるって訳ね。」


 メムも久々にやる気を見せている。前みたいにあっという間にやる気が消えてしまうことがないように願おう。



 翌朝、早朝に部屋のドアをノックする者が。

 ベットからムクリと起きて、メムと一緒にドアを開けると、ミアンがいた。


「早朝から起こしてしまってすみません。ちょっと、……お話ししてもいいですか。」


「………なんでしょうか。」


「…………あの………えっと……。」


「何かあったのですか?。ああ、もしかして、メムとモフモフしたくてもできないからこの時間にモフモフしたいが、ヘルバティアには内緒にしてほしい、とか。」


 メムが俺の顔とミアンの顔を交互に見て何か気づいたようだが……。


「あの………、ニシキさん。あの………。」


「モフモフじゃないのですか。」


 メムが横目で俺の顔を見てくるが一体何が。


「あの……私たちに助力すると言ってくれましたが、どう助力してくれるの……でしょうか?。」


 ミアンが言い淀みながら、俺に質問してきた。でも、いつものミアンの会話と違い、何か歯切れが悪いというか、奥歯に物が挟まったというか。


「うーん、今ここで言うのもなんですが、助力する前に、まずご両親の残された資料、絵に関することの書いたものとかを読んでみたいのですが。それから、どう助力するかになるかと思っています。」


 メムが、俺の顔とミアンの顔をまた交互に見て、ため息をつきながら左右に首を振る。


「あ、そう……ですね。すみません。早朝に起こしてしまって。失礼します。」


 俺の回答を聞いて、妙にあっさりと引き上げた。まあ、あとでヘルバティアにもご両親の残された資料を読みたいと相談するか。


「ところで、メム様。俺の顔に何かついていたのですか。」


 俺は自分の顔を撫でながら尋ねる。


「いや………、まあ、顔洗ってきたら……。」


 そう言った後、


「しっかり顔洗ってきなさいね。」


 と言って、また寝床に潜り込む。それを見て俺もベットに潜り込もうとしてやめて、服を着替えた。


「朝の散歩に行ってきます。」


 中途半端に起こされたので、体を動かして覚醒させようと思い、メムにそう言って、早朝の散歩に行ってきたのだった。



 散歩しながら、調査協力の依頼について、どう調べ真相にアプローチするか独り考える。資料を読み込んで、わかることがあればいいが、残り2枚に描かれている絵が何か。それが分かれば

 そういうのが描かれた絵を探す。この異世界に画商みたいなのがいるかどうか、裏の方で取引されていたりしてないか。

 うーん、究極手段は、俺が絵の謎を解いたとハッタリをかまして噂を流す。そうすれば、黒幕とやらが接近するだろうから、俺が囮になるか、メムと一緒に囮になるか。でも、この案はもう少し後で考えるか。

 うーん…………。歩きながら考えるより、どこかに座って考えた方がいいかな。あの石の腰掛けにでも、そう考えて座り込んだ。

そこへ、


(ちょっと、プチ家出でもしてるの。私を置いてどこ行くつもり。)


 念話術の声が聞こえて、メムがひょっこりと姿を現す。


(え、メム様に伝えて行ったのですけど、散歩すると。)


(………あ、あ、そうだったかしら。あの後二度寝したから……。)


(目を覚ますと居なくなっていて、ちょっと焦った?。)


(……そろそろ朝食よ。戻りましょう。)


(じゃあ、財布は持ってきてるので近くの店でパオニスでも買って帰りましょう。)


(はーい。)


 下宿先に戻ると、台所でミアンとヘルバティアが話し合っていた。


「姉さんは、無理しないで下さい。ここは私がやりますから。」


「ミアン、ノボーッとした状態で台所で料理しても危ないわよ。」


「姉さんの料理の方が危ないです。」


 そういうやり取りをしているところへ、ミヤンも加わる。


「ティア姉さんは、料理がからっきしダメなのだから無理に参加しなくっても。このミヤンがミアン姉さんを手伝いますから。」


「大丈夫よ、私も彼らを見てると、自分も前に進まなきゃって思えてくるの。その第一歩として、弱点の克服よ。大丈夫よ、いろいろ知識を増やしたから。」


 ヘルバティアがそう言って半ば強引に調理を開始する。

 それを見ていた俺たちは、………こっそり自部屋に戻り、自前の朝食にすることにしよう、………としたが、できなかった。


「あっ、メムちゃーん。メムちゃんにもいっぱい食べてもらうわよ。」


 めざとくヘルバティアが俺たちを見つけてしまい、


「メムちゃんに私の作った朝食を食べてもらうのよ。あ、ニシキさんもどうぞご一緒に。」


「いえ、俺たちもう自前で朝食に用意をしたので、そう、パオニスも買ってきたので。ね、メム様。」


「そう、ダンの言うとおりよ。残念だけど今度ということで、ね。」


 俺たちは、ものすごく嫌な予感がしている。


「いいじゃないの、その買ってきたパオニスは、一緒に朝食に足しましょう。………え、私の料理したものが食べられないっていうの、いい度胸ね………。」


 ひえー、包丁を持ったままで威嚇しないでー、別の意味で恐怖を感じる。

 ヘルバティアの背後で双子妹たちが、必死の形相で手招きしている。これは、断れない、ということか。

 あきらめて、3姉妹と朝食を取ることにする。


「まあ、助力してもらうのだから一緒に食事ぐらい、いいわよ。これからは。さあどうぞ、メムちゃん。あ、ニシキさんも。」


 ヘルバティアが調理した朝食を俺とメムは平らげさせられ、そして………、はい、成仏しました。

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