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106弾 思わぬ依頼に悩んでみよう?

 俺は、後ろを振り返り、ヘイルさんと顔を合わせて首をひねる。 そこへ、


「その手を使うか、そうか、その手を使うか。」


 総隊長がそう言い出して、俺の顔をじっと見る。


「組合本部には話を通しておくけど、警備隊の捜査協力と手伝いの依頼として受けてもらう、と言うのはどうだい、ニシキ殿。」


「え、え、え、冗談ですよね。」


「冗談じゃないさ。本気だよ。警備隊も人手不足だ。この事件について今は人手がさけない。この街への民の流入も続いているのに対応もしないといけない。前に王国会議で警護依頼を出した前例もある。申し訳ないが引き受けてくれないかい。組合本部には話を通す。頼む。頼みます。」


 そう言って頭を下げてくる。

 そこへ、茶店のドアが開き、妹のドゥジョン・エリスが戻ってきて、


「姉さん、買い物は終わったわよ。え、どうしたの。ニシキさんに頭を下げて………。」


「ちょうどいいわ、エリス。あなたからも頼んでちょうだい。」


 なんというか、妹まで巻き込んで、頭下げてのお願いか……。


「というか、エリスさんまで頭下げなくていいですよ。もう勘弁してください。」


 俺は、二人が頭を下げて頼むのを必死で止める。ここで止めないと今度は、いつぞやみたいに土下座合戦になりかねない。

 ヘイルさんは表情をこわばらせたまま、俺たちを、ただただ見つめている。


「わかりました、わかりました。ただまず組合本部と話をして下さい。そうでないと、こっちの一存ではまだ何とも言えないですから。それに、警備隊内で話を通すことも必要でしょう。」


「じゃあ、依頼を。」


「条件次第です。そうとしか言いようがないです。もう頭をあげて下さい。お願いですから。」


 似たようなゴツい目な体格の2人の女性が、頭を下げるのをいつまでも眺めるわけにもいかないし、無下に断るわけにもいかない空気を感じる。


「警備隊の捜査協力と手伝いの依頼は、組合本部に話を通しておくから、よろしく頼む。」


 総隊長がそう言って、俺はやや強引に押し切られた感じになった。



「見てたわよ、何か面白そうね。受けましょうよ、警備隊の依頼。」


 メムが大乗り気である、と言うより悪ノリしている気もしないではないのだが………。

 事情聴取と依頼する件についての話が終わり、総隊長ら2人が帰った後、俺とヘイルはリビングダイニングへ戻り、ミアンとミヤンの双子妹の奇妙なものを見るような視線に晒されながら、さらにメムの楽しそうな視線に晒されていた。


「あまり、この依頼受けるのはどうかと思いますが…。」


 とミアン。


「陰から見てたけど、断れなかったのかしら。」


 とミヤン。


「まあ、事情聴取の流れはまあ良かったのだけど、あんな展開は予想していなかったしね。それにあんな頭を下げられたら、迫力があって断りづらいと思うわ。」


 と変装を解いたヘルバティア。


「あのー………、何とか条件闘争をして、こっちにいい条件をとった上で、依頼を受けようかと思いますので、ご容赦を。平にご容赦を。」


 俺は、そう言って頭を下げてその場を収めて、いったん自部屋に戻った。考える時間は欲しい。メムが俺の後を静かについてきていた。


「うーん、予想以上で困ったな………。」


 部屋に戻った俺は、ベットに腰掛けて、頭をかかえる。


「予想以上って、どういうこと?。」


 メムが俺の言った言葉を拾って聞いてくる。


「予想以上と言ったのは、警備隊が俺の思っている以上に人手不足なんじゃないか、ということです。まあ、ある意味俺たちの行動の結果なところはありますが。」


「ああ、白粉石鉱山の操業で街も私たちも潤ったけど、民の流入も多いままだからということね。」


 メムは、黒い尻尾をフリフリしながらそう言ったが、何かを考えているようだ。


「俺の中では、事情聴取に総隊長でないものが来て、今回と、あと1、2回ほどするのじゃないかと思っていましたが、こんな形になるとは………。」


「まあ、断りづらそうね。どっちにしてもあの3姉妹が、ご両親の行方不明について警備隊に届けを出してる以上、警備隊も気づくでしょうし。もしかすると、絵が2枚なくなったことによる盗難の疑いもあってそれについても届けを出しただから、警備隊員に頭の回る者がいれば関連性があると気づくでしょうから。」


「まあ、前向きに検討してみますか。」


「ダン、その言い方だと、無難を目指して議会で答弁する、どこぞの顕職についた政治家みたいね。」


 メムが、いやーに厳しい意見を申し立てる。


「しかし、組合本部的にはどうなんだろう、この話………。」


 俺は、深く息をしてベットに横になる。そこへメムが俺の体をまたいで、


「どっちにしても、この依頼やらなきゃいけないでしょうね。」


 と言ってきた。


「となると、あとは条件をどうするか………。」


 そこへ、ドアがノックされて、


「ミアンです。ニシキ様、よろしければ夕食の材料の買い出しに付き合ってくれるでしょうか。」


 と声がした。

 ドアを開けると、初老の男に変装したミアンがいた。


「俺はいいのですが、変装されていくのですか?」


「一昨日、昨日のことがあるので、用心はしたいかな、と思っています。」


「メム様、残ってもらって、用心棒役をお願いできますか?」


「もちろんいいわよ。敵が来たら奇襲をかまして、思いっきり噛みついてやるわ。」


 まあ、この気合いなら用心棒役で十分対応してくれるか。


「いいのですか、姉が暴走しかねないかも。」


 ミアン、変装したのでイワン、が心配する。


「まあ、意外と相棒は、優秀な益獣のはずですので。」


「はず、はいらないでしょ。」


 メムは会話の中でも、細かいところのツッコミは早い。

 ということで、俺はイワンと買い物に行くことになった。



「買い物代まで出していただいてありがとうございます。こっちの用事で、組合本部で依頼を探せない状態になったのに、そこまでしていただくことは。」


 イワンが買い物代を払った俺に、深々と頭を下げてお礼を言う。


「いえ、この2日間、そちらの手料理を頂いておいて、ただ払わないのも心苦しいので。」


 近所の市場で買い物を終えた帰り道である。間も無く下宿先、行き交う人はまばらになってきた。


「しかし、変装の技術はすごいですね。声音まで変えるのですか。」


「まあ、変装術の師匠の教えが良くて、ここまでやれるのだと思っていますから。」


 イワンとの会話をしながら、ここまで見事に元の形を消して、動きや声を別人に仕立てていることに感心する。


「じゃあ、不明になってからすぐとは言わなくとも、変装の技術を約2年弱で学んで身につけた、というのですか。教えもいいのなら弟子も優秀ということでしょうかね。」


「でも、ニシキさんは見破りましたからね。変装を。」


 少しイワンがヘコみ気味に言ってくる。


「まあ、あれは……まぐれ当たりみたいなもので。」


「へえ、……まぐれ当たりですか………。」


 イワンが少し首を傾げながら言っている傍らで、3姉妹に変装術を教えた師匠とやらが気になってきていた。

 そうしているうちに下宿先に戻ってきた。


「ん、あれは。」


 玄関前で、イワンが何か見つけたようだが、


「どうかしましたか?。イワンさん。」


「いや、ちょっとね。後でやっておくか。」


 ゴミか何かが気になるのかな。

 俺は、買ってきた物を台所に持っていく。その間にイワンが


「ちょっと玄関のゴミを拾ってきます。」


 と言ってツイッと出ていくが、すぐに戻ってきた。

 ヘルバティアとメムが一緒に部屋の掃除をするのを見ながら、俺は夕食の準備を手伝い、3姉妹と一緒に夕食をとる。

 俺が見る限り、メムが地球の女神であることを告白してから、ヘルバティアのメムちゃんへの猫可愛がりは、かなり抑えられているようだ。でも、夕食時にはメムを隣に座らせていたが………。

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