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103弾 彼女らの話の続きを聞いておこう

(何か変わったわね。ヘルバティア。)


(メム様もそう思いますか。)


 予想外の変わりっぷりに互いに顔を合わせて、驚きの念話術会話をする。


(でもどっかで、タガが外れて元に戻るのかもしれないわ。そう思わない、ダン。)


(まあ、その可能性が大きい気もしますが。)


 そのまま、リビングダイニングに案内され、朝食を共にとることになった。

 朝食は、昨日の夕食時に比べるとより活気があった。

 ただ、これから話することもあるからか、早々と食事を終えて、各自、朝食後の後片付けや身支度をする。そして、再び昨日のように俺とメムが3姉妹と相対する状態になり、再び話を続けることになる。



「昨日はとんだ乱入者のために、話が途中になってしまいました。昨日、私たちがニシキさんたちに話したことは私たちの行方不明になった両親の絵の話、それを受けてニシキさんが描かれた絵について教えてくれると共に、異世界人であることを話してくれました。」


 今日は、ミアンが進行役みたいな形になっている。


「で、これは再確認なのですが、ニシキさんとメムちゃんは、私たちに助力する。ただし、ニシキさんたちがいた元の世界に戻る目的を妨害しない限りで助力する。このような話になりますがよろしいでしょうか。」


「その通りね。この話を書面にするのかしら?。」


 メムが答えて問いかける。


「ええ、その方がいいでしょう。」


 ヘルバティアが短く答える。


「私としては、その条件が妥当なところかしら。どうなの、ダン。」


「そうするのが、今の時点では最もいいでしょう。」


 俺たちの答えを聞いてミヤンが


「よかったわー。今、敵対していたら結構大変なことになっていたかもしれないからねー。」


 と胸を撫で下ろす。


「あれ、結構やり合っていませんでしたっけ?。」


 俺が冷やかし半分でミヤンに軽くツッコミを入れてみる。


「いや、昨日、5人を魔法発動で叩きのめしたのをみると、とてもとても………。」


「ミヤンはもう少し実力をつける必要があるし、相手を冷静にみることも必要よ。」


 ミアンがミヤンをたしなめる。ミヤンが少しムッとした。


「ところで、ご両親の情報とかを教えてもらえますでしょうか。俺としても助力のためにそちらの情報が欲しいです。昼食後には警備隊の事情聴取もあるので、それにも備える必要がありますし。その対策もしておくほうがいいのではと思いますので。」


「ニシキさんの言う通りです。どんな質問ですか。」


「まず最初に、ご両親の姓名を教えてください。」


「父はチャティーア・バードスタ、母はチャティーア・アネミクと言います。マレトゥル山地にある洞窟を、鍛練と探索しに行く予定だったのです。」


 ヘルバティアが答えてくれた。


「最終的に絵は何枚描かれていたのでしょうか。」


「5枚です。2枚を盗まれたようなのです。」


「それはいつ頃気付きましたか。」


「両親が帰ってこなくなって、5日後に警備隊に届けは出しました。届出したその後、両親の部屋が荒らされているのに気付きました。部屋を整理して、隠し扉を開け、隠し部屋にあるものと両親の部屋にあるものを確認していきました。不明の両親の手がかりを探るため、描いた絵について書かれた紙や、冒険日誌や記録を探し整理していくと、昔、パーティを組んでいた時に遭遇した事象について書かれた紙を見つけました。そこには、両親がパーティメンバーとして洞窟を探索中に、異世界に迷い込んだことが書いてありました。その異世界に5日ほど迷い込んだのだが、元のこの世界に戻ったら、ほんの少しの間の時間しか経っていなかった。ただ、その異世界で見たものがあまりに異様で忘れられないので、何枚かの絵を描いたことも書かれていました。」


「昨日聞いた話になるわけですね。」


「ええ、隠し部屋や両親の部屋をどう確認しても、冒険日誌の一部が欠けてしまっていました。それに、絵についての説明が5つ、長文の箇条書きでありましたので、5枚を描いたのだとわかりました。そこまで確認しても、絵が3枚だけだったので、もしかすると、2枚はどこかに行ったのだと判断しました。それが、………確か警備隊に不明の届けを出してから10日後です。」


「絵が無くなったことについて盗難か何か届けは。」


「ええ出しました。ただ、不明の届けを出してから時間が経っていましたので、警備隊では関連性まではわからないと言われました。」


「不明になって手がかりを探したのですね。自分たちで。」


「一応、両親のいた、その時活動休止中のパーティのメンバーには一報しました。ある程度の情報はもらえたのですが、活動休止中だったので、あまり不明についての手がかりはなかったです。」


「手がかりを求めて、裏ギルドにも手を広げた、と言うことですね。」


 今まで俺との質疑に応答していた、ヘルバティアをはじめ、ミアンもミヤンも、苦渋の表情を浮かべる。


「あと、一昨日侵入したコソ泥にあれだけ過激に尋問したのも絵が関係していた、それが両親不明の手がかりになると思ったからですね。」


「………その通りです。」


 苦渋の表情を浮かべたままで絶句するヘルバティアに代わって、ミアンが答える。


「変装して茶店を経営しているのには何か理由があるのですね。」


「………実は、両親が不明になった際、マレトゥレ山地には行ってなかったようなのです。両親の使ったドラキャが、そこに行く途中で、途中の街で置いてあったのです。でもその場所からマレトゥレ山地まではかなりの距離があり、わざわざドラキャを乗り捨てるのも、別の乗り物に乗り換えることも不合理すぎるのです。それで、私たちは、探索中に何かあったのではなく、途中で事件に巻き込まれたのではと考えました。」


「警備隊にはそのことは話されたのですか。」


「いえ、話をするには証拠が少なすぎました。ただ、行方不明後に絵と冒険日誌の一部がないことが判明したことで、このままでいるのは危険な気がしました。そこで、私たちで手がかりを探すために、変装術を学びつつ、変装状態で茶店を経営しながら、今までやってきたのです。女手だけで、しかも若い女の子だけだと、変な虫が寄り付く可能性も大きいので、その点も考えてのことです。」


 ミアンが、淡々と表情を殺して答えた。


「わかりました。ありがとうございます。以上で質問は終わりましょう。」


「では休憩にしましょう。」


 間髪を入れずにミヤンが休憩を入れてきた。



 休憩をしながら、俺は今までの話をメモにして清書する準備をしている。


(ねえ、もうちょっと質問してもいいのじゃないの。)


 メムが念話術で聞いてきた。


(…いや、今はこれくらいにした方がいいでしょう。あまりあれこれ聞いても、彼女たちの心理的負担が大きいような気がします。)


(ふーん、まあ、ダンがそう思っているのならいいわよ。)


(まあ、昼食後の警備隊の事情聴取をどうするかはあるからなあ………。)


(ああ、それもあったわね。)


(大変ですが、メム様もグランドキャットとして事情聴取にいるだけでいいので。しゃべりは無しでお願いします。)


(分かったわ。)

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