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第二十二話 裏切るわけがない

  赤蜘蛛は鴉座を見るなり、殴りかかろうとしていたが、陽炎の説得により何とか踏みとどまった。

 そして状況を説明して貰い、確かに他に星座が連れて行かれている今、彼が必要なのだと痛感し、益々憎らしかった。

 そう、赤蜘蛛が調べたところによるそのプラネタリウムを崇める者たちは、既に陽炎の作った星座全員と、鴉座を封印したことも知っていたという結果がでたのだ。

 なので、彼が思わぬ伏兵その二となるだろう。


「――厄介なときに厄介な者っていうのは集まるものだね」

「どういう意味?」

「……そこの鴉と、うちの皇子のことですよ。もう随分と前からね、掴めない人で――嗚呼陽炎どのの異母兄弟になるのですけれどね、これが困ったことに放浪癖があるもので。それで中々来られなかったのです、申し訳ない……ッ」


 陽炎は、思わぬ兄という存在に驚いた――というわけではなく、赤蜘蛛が頭をさげたりしたので慌てて頭をあげるようにお願いして、それから柘榴達の世話を頼む。

 錠剤を劉桜にも飲ませることを忘れさせず、一日一回だと教える。


「陽炎どのはどうされるのです?」

「いやぁ、まぁ俺なりに収集つけたいから、けじめをつけさせるつもり」


 その時のあくどい笑みに、赤蜘蛛は苦笑して、文句を言おうとはせず、ただ判りましたお気をつけを、と丁寧にお辞儀をしてから、柘榴の元へ向かう。

 最後に鴉座を制するように一睨みしてから。

 

(貴方に睨まれずとも、自分しか今は居ないのは判ってる。裏切るわけがない――)


 鴉座は信用してもらえない歯がゆさと共に、それも仕方ないという諦めを持った。

 だがそれと同時に陽炎が駆けだしていて、鴉座は驚き、待ってください、と続いて追いかける。

 

「どうされたのです?」

「皆の様子を見に! 朝の女の様子じゃ、水瓶座は酷使されて疲れてる筈だ! 好きな人に会うだけっていうのも、中々癒しになるだろ?! 指定時間前に会っておく!」

「……――狡賢い方だこと」


 鴉座は苦笑を浮かべて、皆のリアクションを想像しつつ駆けていく。

 

 

「陽炎というのは痛み虫を集める為ならば、賞金首といえども毛虫のように人を殺してきた。オレはそれに人間の愚かさを知りつつも、力を貸した。あの軟弱が生きているのはオレが手を添えたからだ。オレの力は、流行病よりも恐ろしいが、扱う者によっては救いとなる。だがあいつは悪を選び、そしてそれに逆らえず……」


 人々の前で、教祖の命令により、陽炎を貶す蟹座。

 それに怒りを隠せなかったのは大犬座だが、影で鷲座に説得されていた。


「あれは、仕方のないこと。逆らうことは全て陽炎どのの危険に繋がる、大犬座どの」

「だからって、許せないっていうかあの顔、すっごい生き生きとしてるわ! 楽しんでるじゃない! 爽やかな顔で怖いわ! せめてあの顔をやめさせなさいよ! 誰よ、あそこにいる好青年は!!」


 それはサドだし、条件があるから、と言ったら多分、彼女は益々怒るだろうと思いつつ鷲座は必死に影で宥める。

 鷲座にとって要求されたことは、蟹座の行動をどんなことでも止めないことだった。

 他の星座が止めようとしていたら、宥めて落ち着かせて、そして鳳凰座が泣きそうだったら必死に慰めて、今だけだと説得するという何とも苦労するものだった。

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