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【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい  作者: かぎのえみずる
第一部――第六章 朧月を閉じこめたプラネタリウムに、三人の勇者
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第三十八話 冷静な鷲座

 ――陽炎様。


 ――陽炎様。


 ――陽炎様。


 その声の響きにぼうっと眼を開いた。目を開くとそこには、水瓶座が居て、自分を手招いている。

 嗚呼、彼の手の中にはあの水がある。水瓶の文様がぐにゃりと曲がりくねって見えるが、特別気にはならなかった。ぼんやりと薄暗い闇の中ただ一つ見える光路を辿ろう。そうすれば彼の元へ行ける。

 ふらり、と歩きかけたところで、がしっと手を捕まれる。

 そこで眼が一気に覚め、己の足下には光の道なんてなくて、部屋を出かけていたのだと知る。


「……あ」



 捕まれたのが幸いにも水瓶座ではなく、鷲座だった。

 鷲座はにこりとも笑わない顔で、自分を無言でベッドに寝かしつけて、隣で本を読む。

 よく見ると部屋の何処にも水瓶座はいなくて、水の症状か、と陽炎は少し悔しくなった。


「だから言ったでしょう、君の無謀さ故の事故だと。唇を噛みしめるほど悔しがるんだったら、最初から勉強しながら星座を作れば良かったのに。そうすれば、柘榴のようにあれを危険視しながらも利用して免れることも出来た」


 悔しがっている空気を感じ取ったのか、視線を向けずに鷲座は言葉を向けた。その言葉にはどれも容赦がない。


「……――鳳凰座姉さん作れたのも偶然だしなぁ。あー、くそ、だって勉強かったるいじゃん! こう知らないで作っていって見たら、いつの間にか出来てる星座っていうのが楽しかったんだよ! 文句あるか!」

「いや、無いですよ。好奇心からの行動は誰にも止められない。文句があるとしたら、今度からは勉強してからにしなさい、と、愛属性が何処まで自分を好いてるか否定しないで自覚しなさい、くらい。愛属性は否定されれば否定されるほどムキになる。……だけど皆はそういう君に惹かれている。小生は、少し嗜めてるだけで嫌いではない。これでも愛属性だということを、お忘れですか? 否定しないように。彼らのようになるのは嫌ですから」


 真顔で淡々と言うので、鴉座のようにへらへらと口説かれるより怖く感じた陽炎は、何となく逃げ出したくなった。

 それを見抜いたかのように鷲座は本に眼を通しながらも、「逃げたらまた捕まりますよ」と淡々と教えてくれた。

 多分鴉座と違って、甘やかす愛属性ではなく、厳しく育てる愛属性なのだなぁと陽炎は感じて、大人しくベッドの中で眠ることにした。



「……そういえばさ、此処って何処? 何かごく当たり前みたいに、俺此処にいたけど、こんな大きな屋敷持つような知り合い、いねぇし」

「嗚呼、それについては明日、話します。会わせたい人も、明日会わせます。……今は、眠ってなさい。体力だけでも補っておくんだ」

「……へーい」



 眠りの早さは前々から聞いていたが、すぐに彼は眠ってしまった。陽炎が眠りに完全についた証に寝息が聞こえると、鷲座はちらりと陽炎へ視線をやってから本へと眼を戻す。

 その本は、陽炎の母国について書かれた本だった。



「君の国を知る喜びも、好奇心からの行動だ。だから、君がこれを止める権利はない」


 言い訳じみた言葉を鷲座は呟いて、本を読み進める。

 それから、ぱたんと本を閉じて、窓際へと視線をやる。静かに向けた視線の先には、麗しき水の精。

 月明かりの逆光を浴びる水瓶座がそこに、髪の毛を靡かせて突っ立っていて、陽炎を招こうとしていた。

 しかし。

 水瓶座は鷲座を見て固まり、そしてすぐさまに姿を消した。

 水瓶座は鷲座には弱いのだ。水瓶座は鷲座の視線をまともに喰らうと体が固まり、一切動けなくなるのだ。

 姿が消えるのを確認してから、鷲座は淡々と消えた水瓶座へ言葉を投げかける。


「君は昔から独り占めが好きだったね。だけど、残念。偶然とはいえ、星座に詳しい方があそこにいて、反則でも星を作れる方があの時居合わせた。それが君たちの運の尽き。男色が君たちの所為でマイナスイメージだからね、小生が君たちを追い払って尻ぬぐいをしてやるよ」

「……鴉座、水瓶座……」


 鷲座が言い終えて少し経つか経たないかだった。

 寝言が聞こえた。小さな声で、だが。

 だが、それだけでも静かな鷲座の心を揺さぶるには十分で。鷲座は片眼鏡をかけなおしながら、ふぅと息をつく。


「それでも、こうして別の名を呼ばれると、君たちがそれ程までに欲しがってしまうのが判る自分が嫌だ。自制心を強く持とう。柘榴もそれを望んで小生を作った」


 鷲座は頭をふって、本を再び開いて、最初から読んで、主人の母国への思いを馳せた。

 それから彼の過去を思い出して、どう育ちどう感じたかを想像する。

 それにふけるだけでも十分、楽しめた。


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