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第二十一話 あの時助けられたのは

 そう鴉座がくつくつと影で笑っていたのもつかの間、今度は別の方向から人間の陽炎を呼ぶ声が聞こえる。

 柘榴だ。

 陽炎は警戒心を露わに、鴉座は綺麗に作られた笑みのまま振り返る。

 振り返ると柘榴は、手をひらひらとふって、少しまばらにいる人の群れの中、陽炎の居る場所まで、身軽な足音で駆けてくる。


「な、何だよ」

「嗚呼、今日は見たことのない星座と一緒にいるんだぁな」

「……初めまして鴉座です」

 柘榴は陽炎に挨拶をする前に、隣にいる人物に気づき、陽炎と居るのだからきっと星座だろうと推測してみたら、それは当たっていた。

 当たっていたことに柘榴は、嬉しいような虚しいような何とも言えない感情を抱き、鴉座をまじまじと見る。己寄りかは背が高いだろうか、それとも同じくらいだろうか。

 鴉座は、これが、柘榴という人物か、と鴉座は昨日の女衆の会話を思い出しながら、愛想の笑みを相手に浮かべる。

 すると相手は愛想の笑みを受け取って、笑う。



「かげ君、こいつはどういう星座?」

「んー、主に情報収集」

「じゃあ別に許可は要らないよねー。許可なんて貰うつもりもなかったけどなぁ?」

 柘榴はけけっと意地悪そうに笑うと陽炎の手を掴み、鴉座にばいばいと手をひらひらとふった。

 「蟹座と違って、あんたは人間同士の親交を邪魔しないよな?」

 全てを分かり切った笑み、そう鴉座は感じながらも、自分もうわべだけの笑みを浮かべて頷いた。

 そう、自分はそういう位置でないと、陽炎からも警戒されてしまうのだ。

 なので自分はあくまで邪魔も束縛もしないという姿勢を保たなければならないことを、この男は一目で見抜き、容易く陽炎をかっ攫っていく。


 その場に残された鴉座は、ため息をつく。



「どうして、計画が進行し出すと貴方はもて始めてしまうのでしょう。こんなにも早く手に入れたいと切に願うのに。星座達の行動は、見抜きやすいのに――」



 陽炎は目の前の男に不信感を抱いていた。

 この男は賞金首でありハンターである自分とは敵だ。そして、椿という貴族に依頼されて自分を殺しに来たという。

 でもそれは昨日までの話、と言わんばかりに柘榴は陽炎をつい最近気があった友達のように気軽に接してきて、プラネタリウムを奪うと言ったのにプラネタリウムの話なんかしないで、ただ露店をからかったり、一緒に武器屋へ行って武器の口論をしたりした。

 それに混じらない自分を見ると笑いながら、反論しろよ店主に! と、口論に巻き込もうとしたりしていた。

 狙いは判っているのに、よく読めない。親しくなってから奪うつもりか、そう思えば思うほど陽炎は警戒心を強めていこうとするが、柘榴の嘘のない人間らしい笑みや、感情がはきはきと見えやすく判りやすいのを見ると、徐々にそれはほぐされかける。

 だがそう簡単に警戒心をとかないから、一部の星座は安心する。

 昔受けた人々からの仕打ちは陽炎に、根強く残っているのだ。

 奴隷生活では虫けらのように扱われ、囚人時代のような仲間などなくて、お互いがお互いこの生活から抜け出そうと、蜘蛛の糸のように我先に我先にと裏切る者たちを見てきていた。

 肉奴隷にされかける前日、プラネタリウムを拾い、そこから昔から受けていた痛み虫による星座が生まれて、鴉座と出会い、奴隷生活から逃げ出した。



(助けられたのは、俺なんだよ、鴉座――)

 


 ぼんやりと思い出す夜空に、苦笑を浮かべる。今頃は、あの闇鳥は情報の何を集めているだろうか?


「かげ君?」

 今はちょっと広場の色々な店通りの中央にある噴水で休憩していた。

 陽炎は、遠い昔をふりかえっていた自分に気づき、柘榴へ何でもない、と苦笑を浮かべた。


「かげ君はさ、友達はおるのかね?」

「あーっとね、一人親友がいるんだ。賞金首の劉桜ってんだ。赤鬼金棒って言えば分かるか?」

 唯一自慢できる友達話、だからか陽炎は嬉しそうに劉桜を語る。

 知っていたら嬉しい。もし怖いイメージで知ってたら、もっと怖いんだぞとからかってやろうかと思ったが、劉桜の額では無理だろうと残念だった。

 その笑みを見て、柘榴は少し安堵したような顔をしたが、愛嬌のある表情に戻る。

「嗚呼、赤鬼君か。前からちょっと金棒見せて貰いたかったんだ、丁度良い、紹介してくンね?」


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