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第十九話 女性三人揃えば姦しい

「今日はホモ野郎夜会議を変更して女三人会議を実行したいと思います!」


 大犬座は陽炎が酒でべろべろに酔って寝息を立ててるのを確認してから、冠座と鳳凰座を呼び出した。

 陽炎への愛属性が強ければ強いほど、他の星座を呼び出したり、己も自ら夜は自由に出たり出来る。但し、具現化出来る限度は三人なので、大犬座は前もって水瓶座には落ち込んで出られないように精神的ダメージを負わせて、蟹座には制限時間ぎりぎりまで鳳凰座をし向けた。

 鴉座を一番どうしようかと思っていたが、鴉座は今日は眠るつもりなのか、それとも女三人衆の会話を盗み聞きするつもりなのか、何も行動には移さず大人しくしていたので、二人を呼び出した。

 冠座はあぐらを掻いて座っていて、鳳凰座は今の今まで蟹座を追いかけていたからか、あれ? と、急に景色が変わったことに戸惑っていた。



「あ、れ……あら、わんちゃんに、かんむりちゃん」

「あのね、今日はね、二人に話があるの」

「何? 陽炎寝てるんだしさ、早めに話し終えないと睡眠邪魔するんじゃない? 夜の会話って結構夢に出てくるみたいだし」

 冠座は近頃、夢の相談を受けているので、そう大犬座に告げると、首をこきりと鳴らして肩を労る。そして、ケーキは明日、今度こそ食べたいなぁと軽く思いつつ。


「寧ろ夢に出てくれた方が好都合だわ。その方が、陽炎ちゃんは警戒できるもの」

 大犬座は外見に似つかわしくなく落ち着き払った態度で、堂々と宣言した。

 自分には後ろめたいものがなく、寧ろ知って貰っておいた方が好都合、それが大犬座の姿勢だった。

「あのホモ変態三人は、プラネタリウムの仕組みをいいことに陽炎ちゃんを、プラネタリウムの依存性を強めて、人々からの接触を遠ざけて独占しようとしているの」

「……プラネタリウムの仕組み?」

「嗚呼、鳳凰は知らないのね。プラネタリウムはほら、痛み虫で星座が出来る。これは判るよね。それでさ、痛み虫が集まれば集まるほど人より遠い存在になるから、人々が化け物だーって煙たがるわけよ」

 鳳凰座は冠座に言われて、少し放心した後悲しげな顔をして寝息を立てている主人を見やる。


「じゃあ、陽炎様は、今煙たがられてるの?」

「鳳凰ちゃん、まだ間に合うの。まだ人と人外の間、にも見えるし、人からはちょっと強い人ってことで留まってるから。星座を集めるのも、まぁあたしは嫌だけど、陽炎ちゃんが望むのならしょうがないし、それで人から外れたってしょうがないわ。自己責任だもの」

 そう言う大犬座の顔は少し子供らしさに戻っていて、ため息をつく。

 大犬座の言葉には無条件に尊敬する鳳凰座は――何せ大犬座は鳳凰座の知らない沢山の単語を知っているから、凄いと思っているのだ――、ふぅんと頷く。

 そして人々から見ると、うっとりとみとれてしまうような仕草をしてから、鳳凰座は大犬座へそれで、と言葉を続けさせる。

 大犬座は将来の陽炎悩殺のためにその仕草を脳内に覚えつつ、返事をする。


「うん、それなんだけどね、陽炎ちゃんはさ、ただでさえ人を怖がってるじゃない。何せ王族に生まれながらも川に捨てられて、盗賊、その後は囚人、その後は奴隷。そんな暮らししてたんだし。人を恨んで、怖がって当然。そこを、その弱点を利用して、あの下衆三人は人じゃないあたしたちなら大丈夫と思いこませて、依存させようとしているのよ。意図的にね」

「……――嗚呼、そういうこと、最初の陽炎の夢。三人の会話って」

 確か、陽炎はこう言ってたか、と冠座は思い出して、他の二人に教える。


 ――とにかく私たちはお互い仲が悪いですし、むかつくし、顔も見たくない。だけど、願いが同じなのは判っているでしょう?

――痛み虫を集めさせて、誰もが人と認めない程の強靱にして人々に疎外させて、僕らだけに依存させる。

――そのために奪われない、奪わせられないように、こいつを守る。



「……ほらね、ほら、やっぱりそうでしょう、あたし当たってるじゃないの!」

「うん、わんちゃん、凄いわ……! 陽炎様、おかわいそうに……。プラネタリウムをあの方は作りたいのは、……ただ星座が見たいだけなのに」

「そうその星座を作り上げて夜空が見たい。夜空の中で現実を忘れたい。――確かにそういう願いは弱い人の願いだけど、純粋すぎて可愛いったらしょうがない」

 鳳凰座と大犬座の言葉に冠座は、そこまで弱い人かな、と陽炎を思い浮かべて首を傾げるが、まぁいいかと流した。


「今日だって、プラネタリウムを捨てさせるっていう人が現れたんだけど、捨てるか捨てないかなんて陽炎ちゃんの自由じゃない。あたしたちは恨まないわ。何で恨むのよ。作ってくれただけでも、百の痛み虫を集めてくれただけでも感謝すべきなのに。それなのに、あのサドDV野郎は、捨てたら恨むし、陽炎ちゃんが今まで接してきた他の冷たい人間と同じ行動だっていう意味合いの言葉を言って、捨て無くさせたのよ!」

 ――捨てる、捨てない、その自由があることを選択出来なくなってる、と大犬座は怒りをそのままに、その場にあった欠けたお椀を手にして、ぐっと握りしめる。

 そのお椀は昨日陽炎が飲んだ、己が初めて効力を知った水を入れていたもの。




 水瓶座に気をつけろと言っていた、柘榴。

 彼はきっと昨日のような内容を知っていて、それをされたことがある人物が身近に居たのだろう。

 それで水瓶座が何かまたしていて、蟹座があんなになっている異常さに気づいた。

 依存の強さも。人外ならば、と安心してしまう彼に、具現化した妖術に出会ったときが怖かった。依存の恐ろしさに、ぞくりと大犬座は鳥肌が立つ。

 ――柘榴、彼ならば選択できる自由を思い出させることが出来るのでは、と大犬座は提案した。


 その言葉に鳳凰座は思案し、冠座はうーんと唸る。


「とりあえずさ、私たちだけでも警戒しとく? あの三人。鳳凰はさ、あんまり蟹が表に出られないようにいつも側にいてさ、水瓶の水は極力飲ませないようにすればいいと思うんだけど……」

 冠座の提案に、二人は頷き、それぞれの役目を確認する。

「一番どうすればいいか判らないのは……カァーちゃんよね」

「……多分、鴉座っちは、この会話も聞いて、やってみろ、できるもんならっていう体勢だと思うの。自信のある証拠! そこまで、……依存性は強まって居るんだわ」

「じゃーどうすればいいのかなぁ」

「……極力、その人間や劉桜と接触させて、人と触れ合う楽しみを覚えさせたらどうかしら…?」

 鳳凰が提案した頃に、陽炎がくしゃみして、布団の中に蹲り、今度はイビキをかく。

 それに苦笑した大犬座は方針はこれで、と一同の意見を纏めた後、陽炎の耳元で囁く。



「陽炎ちゃん、貴方が何をしようともあたしたちは恨まない。人間だってそう怖いものじゃない。だから、あんまり人に怯え過ぎちゃ駄目。時によっては人外の方が恐ろしいんだから」


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