【賢者編】 講義準備〜緊張緩和の呼吸法2つ〜エリーゼ回想〜印象形成〜自信が持てない #4-2
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◆はじめに──シルより
これはサイドストーリー、お母様目線のお話よッ。基本的にメインストーリーだけで完結するようになっているから、興味があれば読みなさいッ。
大きな進展はしないけれど、科学的な用語や解説、面白い発見のようなものがメインよッ。だから、少しだけ科学リテラシーが必要になるわッ。
あとは、アナタたちの世界に重きが置かれているものだから、ちょっとだけリッカ目線よりも理解しやすいかもしれないわねッ。
でもまぁ、作品をコンプリートしたい人と、心理学などを学びたい人以外はやめておきなさいッ。お金と時間のムダよッ!
◆本編
大学講師を強要されてしばらくすると、ノートPCのスケジュール管理アプリに予定が共有されていた。ざっくりいうと──『通信魔法を使い、ワシを紹介したのち、午前中いっぱい講義』とのことじゃった。さらに、『一言ないし、5分以内のスピーチ』を行うよいに、という旨であった。嫌じゃのぅ……。
見ての通り、ワシはか弱き乙女じゃからなぁ。──ん? 誰がロリババアじゃて? とかゆう、イマジナリーフレンドのボケにツッコミをいれるような歳でもないの[1]。
(シルがいないと、少し寂しいのぅ……)
──そう思いながら、重い腰を……軽々と腰を上げる。先日の一件から、この日のために、フォーマルな装いを仕立てに行ってきた(ネット越しに)。正直、ドレスとも迷ったが、カラーレスのジャケットが気に入ったためパンツスタイルに、オーダートレンチコートを合わせた。届いた《ジージルー》に袖を通すと、なんともいえない品があった。《ジージルーチェック》最高じゃ。
当然、ここだけ時間の流れが違うために出来た芸当だが、それはトップシークレットなのじゃ。このチーティングを知る者は、ワシの他にシルのみ。絶対にバレることはない! ギャハハハハハ──。
(さて、そろそろ準備をしようかの)
近ごろのトレンドは『クワイエットラグジュアリー』だと聞く、そのためバケットハットはブラックにしたが、オーセンティック感が増していい感じじゃわ。これならナメられる心配はないな。
◇ ◇ ◇
「なるほど。もう何人かに訊こうかの。
じゃあ、そのぬかるんだ態度の、ぬし──」
やべー! ぬかんるだ態度ってなんじゃー! ついうっかり口を衝いてしまった……。
──あれ? でも、意外と誰もなんとも思ってないんじゃね? ラッキー! よしよし、権威を示さねば……。
「えぇっと……、いろいろできる便利なものです……かね」
「うむ。それも良いじゃろう。
では、もうひとりくらい……ああ、そこのイラストの……ぬし──」
やべー! なんか精霊王さまの圧に負けて選んでしもうたー!
あっ──操作ミスったー! お、お、お、落ち着け、ワシ……。ヒーヒーフー、それラマーズ法じゃぁぁあああ‼︎
そうじゃ! あの呼吸法『ボックスブリージング』を試そう[2]。やり方は確か──4秒かけて息を吸って、4秒とめて、4秒かけて息を吐いて、4秒とめるのを3回繰り返して[3]──と、落ち着いてきたぁぁあああ!
「ぁ……h、はい。あの……魔法は、sすべての根源であり、sすべてを構築している可能性がある……といわれる事象を説明するための総称です……と思いまつ」
ワシは失敗を繰り返さないため、ここからは人生の聖書こと《Dr. Volition》を思い返しながら、次に続く言葉を考えることにした。こんなことなら、スピーチ原稿をしっかり作り込んでくるんだったのぅ……。
◇ ◇ ◇
なんとなくいい感じに喋れたんじゃないじゃろか。ただ、さっきから左上に固定してあったウィンドウに映る、立花の姿が……どれだけポジティブに考えても、飽きている。
(あからさまに、上の空じゃな……)
でもま、仕方ないじゃろ。まだ立花には少しだけ早い話じゃ。追い追いは、科学知識を身につけてもらわにゃいかんがの。
──88888888──
「賢者さま、感動しました」
「てぇてぇ……」
「エモすぎなんですけどぉ」
「賢者ちゃぁぁぁん」
おいおい、英里のやつ、自分の立場を忘れてるんじゃなかろうな。というかあれは、感極まっておるな……。
それはさておき、いつもなら誰もより先に褒めてくれる相棒が、今はそばにいない。洋服を試着した時もそうじゃが、リアクションがないのは少し寂しくて、心に小さな空虚を感じるものじゃな。
こうゆう時は、『片鼻呼吸法』じゃ[4]。えーと、まずは──
①右手の手のひらを自分の方へ向ける
②人差し指と中指を曲げる
③親指で右の鼻を押さえる
④左の鼻からゆっくり息を吸う
⑤薬指で左鼻を押さえて、1秒とめる
⑥右鼻から親指を離す
⑦右鼻から息をゆっくり吐く
⑧右鼻から息をゆっくり吸う
⑨親指で右鼻を押さえて、1秒とめる
⑩左鼻から薬指を離す
⑪繰り返す
──という感じで、フゥ。なんとか落ち着いたのう。
「──そうじゃな、せっかくじゃから、最後に話してくれたイラストっ子、よい着眼点じゃったから、なにかフィードバックがあれば教えてくれんかの?
仮名も教えてくれると嬉しいぞ」
◇ ◇ ◇
「それでは講義──といっても、厳密にディテールを語ってしまうと、まったく興味が持てないじゃろうから、フランクなものを、ぬしらと一緒に考えていこうと思う。今しがたの話も途中でダレてしまった者も多かったようじゃしの」
ぁっ……目にまつ毛が……痛いのぅ。ゴロゴロするのじゃぁ……。──よし、どっかいったぞ!
「──生徒らの多くは20歳前後じゃろうから、丁度バイタリティに溢れる時期じゃと思う。ゆえに、ワシが選んだテーマはこれじゃ!」
よしよし、掴みはバッチリじゃな!
このテーマに辿り着くまで、それはそれは遠い道のりじゃった──。まずもって夜は寝れず、朝になってから床に就き、平均してたったの10時間しか眠れておらん。美肌の敵じゃ。
(まぁ、たまたま一気見してた《やおや様は告られたい》で思いついただけじゃが。本当は、一晩も悩んでないんじゃが)
◇ ◇ ◇
はぁぁぁああああ、疲れたぁ。……これから、こんなことが続くんじゃよね。メランコリック……。
さてと、英里とミーティングせにゃならんし、とりあえず着替えるかの──。んー、まぁこの《無職の誓い》ロンTでよいか。あと下は見えないし、ワンマイルウェアの《crepe waffle》でよし、と。
──ピーピピピピッ、ピーピピピッ、ピピピッ──
(時間のようじゃの)
液晶魔法を使うと、余分に疲れるからPCに接続してあるわけじゃが、そこまで移動するのが難儀じゃの。まぁ、軽快な足取りで向かえるからよいのじゃが──。よっこいせと。
「お疲れちゃーん、賢者ちゃん」
「ぬしもお疲れさん。よっ‼︎」
グフフ──。早速、英里に対抗魔法を使ってやった……ぞ?
「ぬし、そんなだったか?」
「……え? ん? あ、あああぁぁ‼︎」
(あれ? 英里ってこんな顔してたっけ?)
「──って、うわぁ。最悪……。対抗魔法使ったでしょ?」
「うむ。使った!」
「はぁ……ずっと隠してきたのに……」
※ ※ ※
〈エリーゼ回想〉
これは僕がまだ学生だった頃、通魔大が通信魔法を主流としない時代、今の賢者ちゃんと同学年だった時──。
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◆参考文献
[1]Davis, P. E., Meins, E., & Fernyhough, C. (2014). Children with imaginary companions focus on mental characteristics when describing their real‐life friends. Infant and Child Development, 23(6), 622-633.
[2]Balban, M. Y., Neri, E., Kogon, M. M., Weed, L., Nouriani, B., Jo, B., ... & Huberman, A. D. (2023). Brief structured respiration practices enhance mood and reduce physiological arousal. Cell Reports Medicine, 4(1).
[3]Myerholtz, L. (2023). Take a Deep Breath. Family Medicine, 55(4), 284.
[4]Pal, G. K., Agarwal, A., Karthik, S., Pal, P., & Nanda, N. (2014). Slow yogic breathing through right and left nostril influences sympathovagal balance, heart rate variability, and cardiovascular risks in young adults. North American journal of medical sciences, 6(3), 145.