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私と最後の手紙

ついに最後の手紙になった。

「完成いたしました、確認していただけますか。」

「ありがとう。」

綺麗な字の中、朗らかな私が楽しそうに恥ずかしそうに微笑んでいる。光の中にいる彼女は幸せそうで、花嫁になることを待ち望んでいる。

希望に満ちた結婚式に心を躍らせている。

「…うん、相変わらず素敵な手紙だわ。これで貴方の仕事も終わりね。」

「ええ、お世話になりました。」

「…もう帰られるのですか。」

不安そうにリリが彼に声をかける。リリも彼に懐いていたから、彼がいなくなることが寂しいのだろう。リリが我儘を言うのは珍しい、それほど彼を信頼していたのだろう。

「リリ、我儘をいわないの。彼は半年もここにいたのよ、そろそろ解散してあげましょう。」

「でもお嬢様の結婚式は数日後なんですよ。せっかくなんですから見てほしいです。」

彼が深く考える様子をみせる、私は彼に帰ってほしいのだろうか、いてほしいのだろうか。

私は多分この後不安と不満でどんどん可笑しくなっていくだろう、彼にこれ以上私が醜くなるのを見てほしくない。

でも、彼が描いた様な子になって美しく着飾り、世界で一番幸せな様に振る舞う花嫁になる姿を見せたい。

「そんな考えなくても大丈夫よ、貴方は次の仕事もあるでしょう。」

「いえ、素敵な提案をしていただきありがたいです。国王様に確認をしてみます。」

「そんなことまでしなくても大丈夫ですよ。」

私は彼がお父様と話して嫌な思いをしないかが不安だった。

「僕がお嬢様の花嫁姿をみたいのです。では失礼します。」

ふわっと彼は微笑み部屋を出ていく。


「リリ、一体どうしたの」

「だってお嬢様、彼の事好きでしょう!!??」

リリが興奮して叫ぶ、部屋中に響く様にビリビリと感じる、私ははっと息をのむ。自分では自覚しない様にしてた気持ち。気がついたところでどうにもならない、だって私は数日後には隣国の王子と結婚する。どうにもならない。

「なんでそんなこというのよ。」

私はじっとリリを睨む。この苛立ちの全てをぶつけるように。リリは怯まない。

「どうにもならないことなんて、貴女だってわかっているでしょう。」

「でも、その気持ちを捨ててしまうことなんてないでしょう…。」

耐えきれないようにリリは泣きだした。静かにゆっくり落ちる涙は彼女の服を濡らし染みをつくる。

私はその姿をじっと見ることしかできない、なんで私は今こんな目にあっているのか…。

「なんなのよ。」

抑えきれない気持ちが言葉にでる、そこには苛立ちよりも動揺があった。

リリは涙で濡れた目で私を睨む。

「なんでお嬢様は自分を大切にして下さらないのですか…!!私はこの結婚で国が救われてもお嬢様が幸せじゃないと嫌です!!」

リリが私に抱きつく、リリから紅茶の匂いと涙の匂いがする。リリの涙で私の肩が濡れる。

「一緒に幸せだねって笑っていたいです。大切な気持ちまで殺すのはやめてください、お嬢様…。私これ以上お嬢様がすり減っていくのは嫌なんです。」

リリが言っていることはわかるでも、それは私がどう望んでもどうにもならないことだ。幸せになるのも、気持ちを押し殺すのも、私が私として存在するには必要なこと。

でも、リリが泣いている。私のことを思って、私よりも泣いてくれている。

「リリわかった、彼に気持ちを伝える。気持ちを伝えて、隣国の王子と幸せに結婚するわ。」

自分でも訳の分からないことをいっていることには気がついているがどうにもならない、こんな言葉がリリの心を慰めるかは分からない。

リリが顔を上げ、私と目をあわせる。その目は真剣で、嘘は許さないと語っている。

「お嬢様、本当ですね。約束ですよ。」

その真面目な顔に思わず笑ってしまった。

リリは始めは面食らって怒ろうとしたが、上手く怒れずに笑い始めしまった。

目が合うと2人とも堪えきれず笑い始めてしまった。

見てくださってありがとうございます!!

後少しお付き合いお願いします!!


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