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私とあなたとリリと

その夜、私は彼の話を思い返していた。

きっと彼のお父様のお葬式はとても素敵だったのだろう。黒い人が並ぶ中みんなが手紙をかかえている、周りにはきっと彼が好きな花がたくさん飾られている。温かい日の光の中、見送られた彼のお父様はきっと幸せだったはずだ。

私の結婚式もそうなるだろうか。

不安と不満が入り混じって納得なんて全然できていない。私は自分の結婚式で初めてそれを自覚するのだろうか。

彼は私と同じだった。彼は父親の死を受けて家業を受け入れた。

この状況を私はどう受け止めるのか、いつだって人生は解釈次第だ。

自分の運命を勝手に自分で決めつけているだけで受け取り方はいろいろあるのにそれを狭めているのは私自身なのかもしれない。

暗闇の中、月が輝いている。明日からは少し違う気がする、彼との時間が少し楽しみになっていた。


彼とは色々な話をした。紅茶はリリが淹れてくれるアールグレイが好きなこと、動物が好きだが触れ合う機会がなかったこと、ラブストーリーが好きなこと、ティータイムにはスコーンが欠かせないこと、リリとの話、自分の字には自信がないこと、外の世界をあまり知らないこと。あらゆる話を彼と話した。

彼は代理人であり、兄弟であり、友人として振る舞ってくれた。

城の中の人間関係しかない私にとってそれはとても心地の良いものだった。


程よく日が差し込み、そよ風がカーテンを揺らす、紅茶の香りが部屋を満たす。

そんな中、彼とリリと過ごす時間が気に入っていた。

彼が私の部屋から立ち去ってしまうのが惜しかった。


「お嬢様、最近とても楽しそうにされていますね。」

「そうかしら?だとしたら彼のおかげね。」

「素敵な方ですよね。お話も面白いですし。」

「ええ、彼はとても素敵よね。」

リリとの話はもっぱら彼との話しだった。

彼から聞いた、花や楽器、詩や歌、彼からきくものはなんでも新鮮で私たちの想像力を掻き立てた。

綺麗な花が咲く湖畔で彼とリリとピクニックをする、リリはバスケットにサンドイッチや紅茶のセットをいれている、彼は優しい詩を聞かせてくれる。ゆっくりとした水の音、芳しい花の匂い。そんな時間が過ごせることを夢見て過ごしていた。


彼の書く文が好きだったので手紙は必ず目を通していた。

手紙の中の私は朗らかで明るくよく笑う子だった。本当に私のことを書いているの疑うくらいに素敵な子が手紙の中にいた、どうか彼にはそんな子に見てもらえるように手紙通りの子になろうと務めた。彼の中だけでも私は愛らしい子でありたかった。

きっと、相手も手紙の相手に気持ちを揺さぶられるのだろう、だとしたらその相手は私ではない、この優秀な代理人だ。

見てくださってありがとうございました!!

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