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代理人の思い出

父は代理人でした。母は私が幼い時に病気で亡くなりました。

父はいつも代理人としてあちこちに出ており家にいることはまれでした。

母がいなくなってからは会話もなく私を避けるように外にでる父に嫌悪感をいだいておりました、まれに父が出先から絵葉書を送ってくるのですが、それがまるで赦しをこうように感じて余計に嫌でした。

そんな父も歳をとりなかなか体が動かなくなってきましたが、私に助けを求めることなくずっと代理人としてつとめていました。


ある日、父が倒れたと手紙を受け取りました。

それは父からの手紙ではなく依頼主からのもので、受け取ってすぐに向かいました。

依頼主の家に伺うと父は真っ白な顔をして横たわっておりました。思わず息をしているか心配になり、駆け寄って父の髭がささやかに揺れるのをみて安心しました。

私は依頼主に礼をいい父をおぶって帰りました、父は言葉少なくぽつぽつと礼の言葉を言っていることが聞こえましたが、私はそれに返事をせず、父がこんなに軽く、白く、脆くなってしまったことに打ちひしがれていました。

父が病に侵されてからは父は私に取引先の全てを私に教えこみました。私は父にいい思いをさせたくていい息子のフリをして真面目に話を聞いていましたが、家業には興味がなかったので、父の死後には家業を畳み新たな商売をするつもりでいました。

父の病を知ると今までの依頼人の方々が次々と父を訪ねてきました。父から見せられた帳簿では知っていましたが、これほど依頼人がいるということを目の当たりにしました。

彼らは父に感謝の言葉をつげ、私に希望の言葉をつげました。

父の仕事がこれほどまでに人を支え、助けてきたとは知りませんでした。

父の葬式にはたくさんの方が訪れてくれました、皆さん父に手紙をくださり、無知な私でも分かる美しく、幸福な葬式でした。

帰路で父の友人から手紙を受け取りました、それは生前父が私に残したものでした。

手紙の父は生前の父とは結びつかないほどおしゃべりでした、死後の方がおしゃべりなんて面白くてくすっと笑いながらよんでいました。

父は父なりに私のことを考えてくれていたことがこの時になってやっとわかりました。

手紙には蔑ろにしたことへの詫び、代理人としての日々、代理人のやりがい、でも私に無理に継がなくてもいいと、新たな事業をやるためのお金があることが書いてありました。

父が私のことをよくみていたことがわかり少し申し訳なさと、大きな喜びを感じました。

この父の手紙以上に素敵な手紙を私は未だ読んだことがありません。


おこがましいですが、私はそんな父のようになりたくて代理人を勤めております。

少しでも素敵な思い出になりますよう尽力いたします。

お嬢様、どうか私を信じていただけませんか。


見てくださってありがとうございます!!

あなたに幸せがありますように!

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