微睡み
虐待表現あります。
人によっては胸糞に感じられるかもしれません。
大丈夫な方のみお進み下さい。
『拝啓、今を生きる昨日の僕ら』
連載中です、よろしければ其方もお願い致します。
目が覚めると真っ暗な空間に立っていた。
そこには音も匂いも光も何も無い。
僕しかいないその空間は永遠と闇が続いている。
キョロキョロと見回していると何処からか声が響いた。
「お前は誰だ?」
突然のことにさらに視線を巡らせるが、辺りには闇以外何も無い。
声が反響していない。
どうやら脳に直接響いているようだ。
「僕は……」
どうやら声は出せるようだ。
そして気が付いた。
「僕は……誰だ……??」
何も覚えていない。
僕の名前も歳も家族も職業も。
僕自身の容姿も住んでいた家も家族の顔も。
何もかも忘れてしまっていた。
「僕は、分からない……貴方は誰?」
僕の質問にその声は答えない。
その事にムッとする。
「…答えてくれないんだ。ねえ、ここは何処?」
沈黙のみが流れる。
さらに怒りが募る。
「なんなのさ!!僕を帰してよ!!ねえっ!!」
そう怒鳴ると声が答える。
「帰りたいのか?」
その答えに怒りが爆発する。
「ああ!!!帰えりたいさ!!!さっさとここから帰してよ!!!」
「……そうか」
声は悲しそうに響いて消えていった。
僕は意識を失う瞬間、何故か後悔していた。
ーーーーーー
頬が痛い、苦しい……
これは怒鳴り声?いや叫び声?金切り声が耳に響く。
うるさい、耳を塞ぎたくなる。
何かに圧迫されて胸が苦しい。
上手く息が吸えない。
霞む視界を何とか開く。
そして、全てを思い出した。
僕に馬乗りになって首を絞めて泣き叫ぶ母親。
何もかもに無関心で此方を一瞥する父親。
はたかれた頬が痛む。
肺も圧迫されて首もしめられて息ができない。
生理的な涙が止まらない。
掠れる声でごめんなさいと唱え続ける。
あの空間は、僕を守ってくれていたんだ。
クソみたいな現実から連れ出してくれたんだ。
声に酷い言い方しちゃったな。
このまま楽になれば、また会えるかな。
僕はそっと目を閉じた。
楽になる為にーーーー