7話:婚約者から寝取れ!
「イヴィルとの婚約を……解消しろ、だと?」
「はい。それが、アナタの為になるんです」
俺が放った一言に衝撃を受けたのか、ガティはおもむろに立ち上がる。
そして、酷く取り乱した様子で……肩を震わせていた。
「何を、言い出すんだ。イヴィルは……私の幼馴染だぞ?」
「ええ。そうですね」
「それに、身寄りの無い私を引き取って欲しいと両親に頼み込み、私を家に住まわせてくれたのも彼だ。私は彼に、多大な恩がある」
「それも知っていますよ。だけど……」
「だけどではない! どうしてお前は……! 彼を悪く言うんだ!?」
涙を流しながら、ガティは叫ぶ。
さっきまでの、優しくも美しい彼女の微笑は……もうそこには存在しない。
「彼なら! 彼となら……! お前の事を、忘れられると……思っていたのに!」
「……俺も、あの人が本当に良い人なら応援しましたよ」
「え?」
「これから死んでいく俺よりも、素敵な人と結婚して幸せになって欲しい。俺だって、アナタへの想いを抑え込もうと必死なんですよ!」
ガンッと鉄格子を叩きながら、俺も叫び返す。
こんな俺の態度を見た事の無いガティは面食らった様子で、よろよろと後退する。
「だけど、あの人だけはダメだ。お願いですから、考え直してください」
「……何か、理由があるのか? お前が、イヴィルを認めない……理由が」
「それは言えません。言えば、アナタは傷付く事になる」
「聞かせてくれ。私はどんなに辛い現実でも受け入れる」
「でも……」
「言わないのなら、私はイヴィルと結婚する。それだけの話だ」
そう言い残し、踵を返そうとするガティ。
彼女は本気だ。だから、勝負を仕掛けるなら……今しかない。
「分かりました。明日の朝……ここに来て貰えませんか?」
「……明日、だと? なぜ、今ではダメなんだ?」
「それは明日、ハッキリする事です」
「……いいだろう。他の誰でもない、お前の頼みならな」
ガティは頷くと、そのままこちらを振り返る事なく階段を上がっていく。
これで種は撒いた。後は……
「ネートーレー!」
「わっ!? アイ!? いたのか!?」
いきなり天井からアイが落ちてきて、俺の体に抱きついてきた。
全然、存在に気付かなかった……流石は暗殺用スライムだ。
「いるなら、いるって……むぐっ!?」
「ちゅぅー! ちゅっ、ちゅっ、ちゅーっ!」
ガッチリと俺の頭を掴んだアイが、それはもう凄まじい勢いで俺の唇を貪る。
啄むようなキス。口内を犯し尽くすように蠢く柔らかな舌。
俺はもはや呼吸すらままならず、アイのなすがままにされていた。
「むむぅ……むぐぐ、ぷはぁっ!? どうしたんだ急に!?」
「だって、ネトレがあの女とキスしたから。本当は、あんな女とキスするのは嫌だったよね? 可哀想なネトレを、私が清めてあげたの!」
ニコニコと汚れなき笑顔で、そう答えるアイ。
ああ、そうか。アイは俺がガティを嫌々、寝取ろうとしていると思っているんだった。
「そ、それよりもアイ! 調査の方はどうだった?」
「うん! イヴィルの家に忍び込んで、色々と情報をゲットしてきたよ」
俺は今朝、ガティの婚約者であるイヴィルの調査をアイに頼んでおいた。
というのも、あの男に関して俺は……とある疑念を抱いていたからだ。
「……俺の予想通りだったか?」
「ううん。全然違ったよ」
「えっ? まさか、良い奴だったのか?」
だとしたら、寝取る計画は中止にすべきか?
本当に良い奴なら、あまり酷い目に遭わせたくはないからな。
「あっ、そうじゃなくて。ネトレの予想を遥かに越えて、クソ野郎だったってこと!」
「……俺の予想を?」
「うん! 調査中、何度も殺しちゃおーって思うくらい! 同じ人間なのに、ネトレとは大違いだよ!」
「やっぱりか」
俺の予想は当たっていた。
あの男はガティに相応しい男なんかじゃない。それだけ分かれば十分だ。
「なら、勝負は明日だな。ガティを明日、呼んであるから……それに合わせて」
「任せて! しっかり、計画通りにやるから」
「ああ。お前は本当に良い子だな」
俺はアイを抱き寄せ、その頬を撫でてやる。
すると、アイは惚け切った表情を浮かべ……甘えるように俺にしなだれかかってきた。
「ネトレ……今日も、いっぱぁい愛してくれるよね?」
「……勿論だ。だけど、あんまり激しくすると……」
「んふふふぅ……! てぇーいっ!」
「おわぁっ!?」
ベッドに勢いよく押し倒される俺。
そしてアイはそんな俺の上に馬乗りになると、ぺろりと舌なめずりをする。
「はぁっ、はぁっ……! ネトレ、可愛い……! 食べちゃいたいくらい」
「ちょっ……!? お前……!」
「お口とぉ、胸とぉ、お尻とぉ、アソコとぉ……んふっ、全部でイかせてあげるね?」
「あっ、ああ……あぁーっ!」
こうして俺は一晩中、アイに搾り取られてしまったのであった。
その全身。余すことなく、欲望を吐き出させる形で。