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寝取りの才能だけで勇者になれますか?~はい。堕とした美少女達が大活躍します~  作者: T-愛坂
第一章【呼び覚ませ。寝取りの才能】
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4話:堕としたスライムがチートすぎた件

「そろそろ朝か」


 陽の光の届かない地下牢ではあるが、上の階から人の声が漏れてくるようになる事でおおよその時間が分かる。

 もう少ししたら、職務を放棄していた見張り番も戻ってくる事だろう。


「アイ。見張りにお前の姿が見られるのはマズイから、どこかに隠れてくれないか?」


「んー……ネトレから離れたくない」


 ベッドから立ち上がり、衣服の乱れを直そうとする俺に、アイは背後から抱きついてくる。

 さらには柔らかい胸を背中に押し付けながら、俺の耳元で甘い吐息を漏らす。


「ねぇ……もっと、私を愛して」


「それはここでやるべき事を終えて、脱出してからだな」


 男として、この誘いを断るのには忍耐がいるが。

 俺は必死に自分の本能を抑え込み、アイの頬にキスをするだけにしておいた。。


「アイは良い子だから、言う事を聞けるだろ?」


「んふふ……分かった。じゃあ、隠れているね」


 そう答えたアイの全身が、いきなりドロリと溶けていき……大きなスライムの姿へと変わっていく。そしてそのまま彼女は、ぴょんと跳躍して天井へと張り付く。


「ここにいれば……バレずに、ネトレの顔を見ていられる」


「そ、そっか。じゃあ、そこにいてくれ」


 可愛らしい美少女の姿から、スライムの姿に変わる瞬間を見るのは少々心臓に悪い。

 というか俺、あのスライムと一晩中……いや、この話はよそう。


「……ん?」


 と、ちょうどその時。

 カツカツという足音が、上階へと繋がる階段から聞こえてくる。


「おい! ニセ勇者様よ、大人しくしていたか?」


「……ああ。おかげ様で」


 降りてきたのは、いつも俺の事をバカにして楽しんでいる見張り番の男だ。

 過去に一度、剣の試合をして負けた事を未だに根に持っているらしい。


「あん? 今日は珍しく、返事を返すじゃねぇか」


「たまには、お前と話すのもいいと思ってさ」


「気持ち悪い事を言うんじゃねぇよ。淫売の子供のくせに」


 そう吐き捨てながら、見張り番は鉄格子の前にパンを放り投げる。

 3日に一度だけ。まともに与えられる、俺の食事だ。


「どうも」


 俺はこれまで、このパンに手を付ける事はしなかった。

 しかし復讐という新たな目標を手にした今。たとえ泥水をすすってでも、俺は生き延びなきゃいけない。

 だから、床に落とされてホコリにまみれたパンでも、口にすべきだと思ったのだが……


「おぉっと!? 足が滑っちまったぜ!」

 

 俺がパンに手を伸ばした瞬間、目の前でパンがグシャリと踏み潰される。


「わりぃなぁ。でもよぉ、お前にはこんなパンで十分だろ?」


「食べ物を粗末にするなよ」


「ああ? てめぇに説教される筋合いなんかねぇよ。俺達の事を、これまで散々騙してきたゴミ野郎が」


「……」


「先代の勇者様には俺も世話になったよ。優しくて、強くて、いい人だった。なのに、お前とお前の母親は……そんな人を裏切った最低のクズ共だ」


 先代の勇者様、というのは……俺の父親だと思われていた人の事だ。

 母と結婚し、俺が生まれてすぐに旅立ち……そのまま消息不明となった。

 だから俺は、父親の顔すら覚えていない。


「てめぇなんか、生まれて来た価値もねぇんだ。なんなら、俺がこの場で殺して……」


 ヒートアップしてきた見張り番が、腰に差した剣に手をかけようとした瞬間。

 唐突に、それは起こった。


「……お前が死ね」


「ぐぺぇっ!? ごっ、がっ……!?」


「なっ!?」


 天井から伸びてきた氷柱のような形をした刃が、見張り番の喉を貫いたのだ。

 見張り番は血を吐き出しながら、苦しそうにもがいているが……


「聞くに堪えない。私のネトレを、悪く言うな……!」


 べちょっと、床に降りてきたアイが人の形へと変化していく。

 その右手の先端はなおも鋭く尖ったまま、見張り番を刺している。


「だ、だずげっ……!」


「死ね、死ね、死ね、死ねっ! ネトレをいじめる奴は、私が殺す!」


 何度も何度も、アイは鋭利に変化させた両腕を使って見張り番を切り刻む。

 俺はその凄惨な光景を、唖然と見つめていたが……少し経って、ようやく我に返った。


「アイ! もうやめろ!」


 俺が叫ぶと、アイはピタリと動きを止めてこちらを振り向く。


「うんっ。ネトレが言うなら、もうやめるね」


 見惚れるような満開の笑顔。

 しかし、その頬にはべっとりと返り血が付着しており、足元には見るも無残なミンチ肉が転がっている。

 その異様なアンバランスさに、俺は背筋が凍り付くのを感じていた。


「ネトレ、褒めて褒めて! ネトレをいじめる悪い奴は、私が殺したよ!」


「あ、ああ。ありがとう」


 そしてその返り血を拭う事もせず、アイは俺の傍に駆け寄ってくる。

 俺は極力、平静を装いながら……アイの頭を撫でる事にした。


「んふぅー……ネトレの手、あったかぁい」


「なぁ、アイ。俺の為に行動してくれたのは、その……とっても嬉しいんだが」


「んぅ?」


「この死体をどうにかしないと……それに、見張りが消えたら、城内で騒ぎが起こる」


 そうなると、俺の計画が台無しになってしまう。

 もはや、計画を中止して脱走を早めた方がいいかもしれない。


「それなら、大丈夫。私に……任せて」


「任せるって……え?」


 しかしアイは二つ返事で答えると、ミンチとなった見張りの死体へと歩み寄る。

 そして再び、その右腕の形を変形させる。


「本当はお前なんか食いたくないけど、ネトレの為だもんね」


 ぐぱぁっと、まるで獣の口のように変形するアイの右腕。

 そしてその右腕は、見張りの死体をパクリと一口で飲み込んでしまう。


「……ご馳走様」


「わぁお……」


 魔物が人間を捕食するのは常識ではある。

 しかしこうして、生で見るのは初めてだった。


「ネトレ、これでいい? 私、偉いからチューしてくれる?」


「いや、死体の処理はオーケーだけど、見張りがいなくなったのに変わりないからな」


「あ、そっか。それなら……この手でいける」


 すると再び、アイの体がぐにゃりと変形を始める。

 そうして、どんどん変わっていったアイの姿は――


「じゃーん」


「嘘だろ……?」


 さっき殺された筈の見張り番と、全く同じ姿へと変化していた。

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