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ダンジョンから愛をこめて  作者: 葉山 友貴
第一章 出会い
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第23話 帰還

ここまでお読みいただきありがとうございました。書き溜めはここで終わりです。暫くしたら投稿を再開します。

「ウンディーネ…!?」


「何を驚いておる? 其方が呼んだんじゃろうて」


「…どうやって? いや、分かるような、分からないような」


「何をぐちぐち言ってるのじゃ? 扉の向こうに其方の気配を感じたから来てみれば、こんな暑苦しいところに呼び出しおって。アイツが原因じゃな? 倒していいのかえ?」


 ウンディーネは不遜な態度でゴーレムを指差す。


「そうなんだけど、そんなに簡単に倒せるの?」



「ワタシを誰だと心得る! 水の精霊、ウンディーネじゃぞ!! 岩達磨(いわだるま)の一つや二つ、ちょちょいのちょい、じゃ!」


 小さな胸を張るウンディーネ。もう聞くのはよそう。


「水のない場所はしんどいのう。さっさと倒すから早く帰してくれ」



『ウォーターボール』


 ウンディーネの手から次々と水の球が飛んでいく。カインが開発した魔道具にそっくりなところを見るに、恐らくこれが原型(オリジナル)なんだろう。


「ゴオォ!? ゴオオオオオ」


 ゴーレムは鬼火を操り、水の球を相殺していく。一瞬で蒸発するあたり相当な高温の炎である。


「小癪な。 これはどうだ?」



『ダイダルウェーブ』



 何も起こらない? 耳をすませば波の音が聞こえる。ゆっくり振り向くと、信じられない光景が広がっていた。岩石地帯に不釣り合いな"大波"。進路上にある障害物を無尽蔵に飲み込み、一直線にゴーレムに向かっていく。


「ちょっと待って。ゴーレムに向かってるってことは、ゴーレムの目の前にいる僕は…巻き込まれる!?」


「細かいことを気にしたら負けじゃ。この技は細かい調整はできないのじゃ。…自分でなんとかせい!」


 刻一刻と迫るにつれて、猶予は無くなっていく。大津波が目の前までやってきた。近くから見上げると、小さくなる前のゴーレムですら軽く飲み込みそうな高さ。


「くっ!! カイン、ごめん! ーー時空魔法『ゲート』ッ!」


 黒っぽい無骨な扉が現れた。あらゆる武器、防具の彫刻があしらわれた扉。ロキはその扉を力一杯開け放った。そして、扉の後ろに回り込む。直後、津波がロキごとゴーレムを襲った。



 幸い扉の裏に回ったロキは無傷だった。扉の奥からは怒号と叫び声が聞こえてきた。ロキはそっと扉を閉める。


「ほれいっちょ上がりじゃ! さっさとあの便利扉を出さんか!」


 ウンディーネは自分の胸を拳で叩き、ウンウンと頷いている。納得のいく結果だったみたいだ。僕ごとゴーレムを水に流そうとしたのは些細なこととして、彼女の中で処理されたようだった。


「…うん。ありがとね… はい、『ゲート』」


 青い扉を潜り、ウンディーネは消えていった。嵐ならぬ大波が過ぎ去った後には、大きな爪痕が残されていた。ゴーレムを探すと、四肢はバラバラ、心臓部と辛うじて繋がっている頭部を見つけた。


「まだ生きている。ゴーレムに使う言葉かはわからないけど、すごい生命力だ」


「ーゴ、ゴォ。ゴ…ゴ」


「君を助けることは出来ないけど、僕は君を忘れない。強敵だった」


「…グギギ。 モッド、ダダガイ、ダカッタ…」


 ゴーレムの目から光が失われ、活動を停止した。しかし、心臓の炎は依然として燃え続けている。


「なんで消えないんだろう? うーん、持ち帰って、カインにあげようかな…許してくれるといいけど」


 赤い宝石ごと心臓部をくり抜いて布で包んだ。我慢出来ないほどではないが、熱くて素手では持ち運べない。


 ロキは何かに呼ばれた気がして最後に振り返った。すると、ゴーレムの残骸の山が崩れ、中から小さな物体が現れた。


「ゴ、ゴゴゴー!」


 大型犬くらいの大きさ。頭というか顔が面積のほとんどを占め、そこから短い手足が生えている。先ほどまでの洗練されたフォルムからかけ離れた体型。そんな面白ゴーレムがロキ達の後を着いてくる。


「仲間になりたいの?」


 観念してロキは訊ねた。無害そうだし。まぁ、いっかという軽い気持ちで聞いてみた。ブンブンと体全体を使って頷いている。


「ゴゴゴー♪」


 こうしてまたしても個性あふれる味方が増えたロキ一行であった。








 



「ロキ!! 死ぬかと思ったぞい!」


 拠点(ホーム)に帰ると、開口一番でカインから怒られた。ウンディーネが放った大津波の大魔法。その津波から逃れるために、僕は一か八かの賭けにでた。僕はとっさに『ゲート』の魔法でカインと扉で繋げたのだ。


 時空魔法『ゲート』は、自身にゆかりのある対象者を思い浮かべて発動することで、その対象と自分を扉で繋ぐ。そんな魔法だと認識している。どんなに距離があっても、扉で繋げば、ひとっ飛び。非常に強力な魔法だ。それだけに性能は細かく理解したい。


 帰りの道中、スコルとハティに協力してもらい、魔法の輪郭は捉えることができた。まず最初に試したのは、対象者以外が通れるか?


 答えはNO。あくまでも対象者のみが通れる。ハティの扉を発動させたところまでは良かったが、その扉をスコルが通ろうとすると、真っ黒い壁に阻まれた。顔面から壁にぶつかったような衝撃だったらしい。実験とは言え、かわいそうなことをした。


 では、無機物なら?


 結果は…成功。小石を放り投げてみたら無事通過。扉の向こうからイテッ、っと声が返ってきた。その後、鼻を赤くしたスコルから文句を言われたのは想像に難くない。


 あの津波が迫った時、カインと繋がった扉を開けたことで、扉の向こうでは大変だっただろう。直感的な行動だったけど、おかげで扉の裏に隠れた僕は無傷でやり過ごすことが出来た。この魔法は使い方次第で別の用途にも使える。これからも検証は続けていこう。



「ウンディーネ、あの時はありがとうね!津波が来たときは焦ったけど」


「お安い御用じゃ。ま、まぁ、ワタシも次からは配慮するようにしてやろう」


 ウンディーネにも後ろめたさはあったのだろう。


「ロキ!! いきなり扉が現れたと思ったら、そこから大量の水が流れ込んできて大変じゃったんだぞ!?」


「ごめん!!あの時は必死で…。とっさに頭に浮かんだカインを思い浮かべながら魔法を使ったんだ。ほ、ほらカインは頼りになるからさ!」


「ほう…あの扉が魔法…、ワシは頼りになるからな」


 満更でもない表情のカイン。先ほどまでの怒りはひとまず治った。


「お詫びと言っては何だけど…これ何かに使えるかな?マグマゴーレムの心臓部にあった宝石なんだけど、倒してからもずっと燃え続けているみたいに熱いんだ」



「ーー!! もっとよく見せてくれ!! …こいつは…!?」


 食い入るように宝石を覗き込む。光にかざしてみたり、軽く指で叩いてみたりと忙しない。


「ワシの見立てが正しければ、こいつは今最もワシが欲していた代物かもしれん。コウケイ、ウンディーネ!手伝ってくれ!忙しくなるぞー」


「そろそろ薬の研究したかったネ…」


「次はなんだ!? 全くお前たちといると、飽きないな!ワハハ」


「ゴ!ゴ!」


 ゴーレムが僕の後ろから顔を出した。


「なんだチビ助、お前も興味あるのか?」


「このゴーレムは、マグマゴーレムの残骸から突然現れたんだ。着いてきたそうだったから連れてきちゃった」


「おお、そうか。ならば、この宝石の扱いについて何か知ってるかもしれん。お前も来い! チビ助の名を何という?」



「名前は決まってはないんだけど…。ゴレ太郎、ゴレムス、ゴンザレス…」


「"タロス"ではどうじゃ?」


「ゴゴゴー!!」


 両手を上げて体全体で喜びを表現している。


「本人も気に入ったみたいじゃ。タロス、ほれいくぞ! …今後、ロキに名付けを任せるのは辞めておこう」


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