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LOST EARTH  作者: 古屋 零
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Ⅵ-始まり-

世界保護機関が打ち出した政策――人類保護計画。

通称――匣舟計画(NOAH PROJECT)。


それは不定期的に実体験型ゲームに全国民が参加する事。

意味が深くないように思われるが、このゲームには重大な意味がある。

この実体験型ゲームで課せられるノルマを達成することが出来なければ、それは死に繋がる。

ノルマを達成できない場合は基本的に力が不足しているか、ゲームの参加に間に合わなかったかの2つしかない。

前者の力が不足しているは言わずもがな言葉通りの意味だが、後者は時間的な問題である。

まず実体験型ゲームに参加するには現実世界の各所に設置してある端末に触れるか、それ専用の部屋にいなければゲームのステージとなる電脳世界に肉体と精神が移動することは無い。

なので当然端末にアクセスしなければいけないのだが、アクセスできるのはゲームが始まる前まで。

警告としてのサイレン音を無視し、1秒でも遅れれば端末はロックされ、その時点で現実世界に肉体のある者は、何らかの方法で処される。

つまり、このゲームは増えすぎた国民を篩いに掛ける為の苦肉の策である。

国民が多ければ多いほど、食糧危機や環境を汚すことにつながり、地球から他の星に移住しなければならないことを真剣に考えなければならなくなる。

だから、優秀な種を後世に残すためにもノルマを達せられないものは赤子ですら死を突きつけられるのだ……



***



腹部に大きな穴が開いた沙耶は動きを見せず、戦いは終幕するかに見えた。

だが、事態は一気に急変する。

「なぁ、このままじゃ委員長やばいんじゃねぇか?」

クラスメイト達がざわめく。

「そうじゃん! このまま起きなかったら委員長はノルマが達せられない……」

零はその話を聞いて、秦菜の元へ歩み寄った。

「ここは俺に任せろ……俺がこいつを助けてやるよ」

不安そうな表情をした秦菜の親友、チユが言う。

「どうやって?」

そんな野暮な事聞くなよといった表情で、零は答える。

「イカサマで」

近くで様子を伺っていた教師が声を荒げた。

「イカサマだと~? それがこの世界で通用すると思っているのか!?」

「思ってるよ」

自身ありげに答えるが教師はその答えに気に入らず、感情的になって拳を振り上げた。

「こんな時に冗談を言うな!!」

教師が零の頬を目掛け拳を振り下ろす。

「あんたこそ冗談はよせよ」

教師の拳は零の頬寸前で止められていた。

「何……だ、これは!? どうして、動かないんだ――!?」

零の左目には青い魔方陣が浮かんでいた。

「おいおい、あんたが生徒に体罰をしようとしていたのを止めたんだから、感謝しろよ?」

質問の答えになってないその返事に教師は納得するはずなどない。

「何をやったんだときいてるだろう!?」

「あんたの管理者権限を俺が持ってるからだよ」

周囲にいたものは何が起こったのかは分からなかった。

だが、今の光景を見れば、委員長をどうにかできるのではと思うものは数多くいた。

「という訳で委員長は俺が預か――!?」


委員長の姿が無い。

先程まですぐ近くの地面で横たわっていたというのに。

周囲を見渡す。

「ココダヨココ、先輩」

沙耶が秦菜を捕まえていた。

「まだそんな元気があったのかよ?」

「ナイヨ……ナイカラコノコトイッショニシヌノ!!」

零は腕をおもむろに上げ、秦菜に危害を加えようとする沙耶に、手の平を向けた。

「サンプルはもぉ要らない――!!」

左目に魔方陣が浮かび上がり、エンジン全開で回りだす。

「サヨナラ……先輩――――!!!!」

「消えるのはお前だけだ――」

魔方陣の前方に少し大きな2つ目の魔方陣が現れる。

「そして……ありがとう――」

零が開いていた手の平を強く握り締めたと同時に、沙耶の身体は、骨が砕かれる音と共にどす黒い液状の球体となった。

その塊を冷酷に、感情も無くデータ世界の深層へと消し去った。


彼女が最後に言い放ったありがとう。

零は聞き逃すことはなかった。

だがそのありがとうが今までの人間だった頃のことに関してなのか、化け物になった私を殺してくれてありがとうなのか、今となっては判らない。

ただ零はやるべきことをやったのみ。

心の奥に何かが引っかかる様な気持ち悪さを残して。



しかしこれがイベントであったらどうなっていたのだろうか。

ここにいた生徒たちはいつものゲームの様に、ただ始まり、やっと終わったと思う。

しかし今回は違う。

全員が死ぬ恐れがあった予期せぬ事態。

零がいなかったら彼らの運命は決まっていた。


これが現実であり、これが別世界。


これが真実であり――


これが、この零の持つ力が――



崩壊へと導かれている世界を救う唯一の希望であった。



挿絵(By みてみん)

LOST EARTH ―――― 開 幕




左目に謎の魔方陣を宿す青年、遠山 零、17歳。

その力により万物の管理者権限、つまりこの世に存在するもの全ての支配権を持つことが出来る。

その力は絶対的権力。

この力に拒むことは不可能なり。

これを凌駕するためにはそれと同等、又はそれ以上の力を有さなくてはならない。


遠山家は6人家族で姉、兄、妹を持ち、零は次男のポジションにあたる。

姉は現在WPOの中枢にある人類保護技術局で、二十歳という若さでトップに上りつめている。

中々家に帰ることもなく、毎日毎日仕事に追われていた。


兄は零が高校入学時に忽然と姿を消し、現在は行方不明となっている。


妹はまだ小学6年生で人見知りな性格な為、姉兄がいないと何も出来ない。


そして零を含め4人の息子・娘を持つ父は某有名企業に就いているのだが、防衛省絡みの仕事が多い為、防秘事項が多く素性については謎が多い。


そして父を支えているのが、小さな病院の院長を務める母である。


この家族、零の兄の失踪以外を除けば裕福な家族に見えるが、真に迫ればいろんな意味で問題あり。

逸脱した家族、逸脱した世界、逸脱した常識。

何が何を生み、何を失うのか。

何が光で何が闇か、裏表の感覚が麻痺した世界、西暦2300年、地球。

その世界で人々は、今が幸福だと錯覚し生きている――――



「なぁ、あの化け物はもぉいないんだよな?」

「あんなの見たこと無い、魔法?」

「ホントに、ホントのホントに委員長が救えるんじゃねぇ!?」

皆の気持ちが、委員長を救いたいという気持ちが完全に零に向けられた。


本来ならばありえない力を見せ付けられたとき、人は畏怖するはずなのだが、状況が状況なだけに零は支持される形となった。

しかし、畏怖されようが支持されようが零には関係ない。

周りに影響されず進んでいくのが零のやり方なのだから。


「お前しかいないんだ、供華は頼んだぞ……」

先程殴ろうとしていた教師も少なからず零に希望を見出していた。

「言われなくても最初から助けるって言ってるじゃん」

委員長の供華 秦菜を抱きかかえた零は、再び左目に魔法陣を出現させ、ゆっくりと回転させた。

すると二人は、足元から徐々に光の屑となり、消えた――


「ほらお前等はさっさとノルマを達成して来い! そして、無事に生きて帰って来いよ!!」

力強く言い放たれたその言葉が、いつも以上に皆の胸に響いた。



***


「資格有ル者を適合者に変える実験は初期段階としては上手く行きました」

畠山は携帯で、誰かに報告を行っているようだった。

『――そうですか、ならば次の段階に進みましょう』

「現在の状況のクオリティーアップと、天倪アマガツの培養・強化ですね?」

世界保護機関、DB問題処理担当課の技術スタッフ、瀬川によって体内に入れられた赤黒い血の様な物はすでに畠山の全身の血になじんでいた。

『――えぇ、あと我々のバイブルとも言うべき古代書”神世界シンセカイ”の複製本もお送りしたので必ず目を通して置いてくださいね』

電話が切れたと同時に、畠山の気配が変わった。

「あれ……私、誰に電話していたの? それにここ数時間何をしていたのか思い出せない……」


新たな段階に進もうとしている謎の組織。

組織の聖書とされている古代書――神世界。

そして天倪という何か。


それぞれの歩みがこの世界の歴史となる。

零や彼等の行動がこの世界の未来となる。

今までに無かった新たな世界が創られるのか、世界の崩壊か。


行く果てに待つ世界、何を求め何を生むのか、全ては神のみぞ知る。

6-The start- 終





キャラ紹介[第6話]


遠山 零(17)-高校生-

ニックネーム:レイ


6人家族の次男。

左目に宿す謎の魔方陣の力により万物の管理者権限、つまりこの世に存在するもの全ての支配権を持つことが出来る。

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