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LOST EARTH  作者: 古屋 零
22/28

ⅩⅩⅡ-邂逅-

獲物を囲いながら歩いていた獣たちが一斉に飛びかかってきた。

波音ハオン――!」

バクの周囲に波紋のようなものが広がっていく。

「耐えろよ?」

芝桜が零の肩に手を置き笑顔を見せた。

波紋に触れた瞬間世界が回る。

立つことがままならぬままその場に倒れる。

が、芝桜が零を支え完全には倒れずに済んだ。

「なんで……あんたは大丈夫なんだよ」

「チャンネル登録してるからだよ。新参者のお前はまだバクのリストに登録してなかったからな」

零は左目に魔法陣を宿し、迎撃態勢に入る。

周囲には三半規管を狂わせられ倒れこむはずだった獣たちが立っていた。

「……それだけ?……期待外れ……退屈……」

零は四方に目を向ける。

「あいつの力は何だ……?魔法陣すら浮かんでないぞ……?」

念のために魔法陣を二重に重ねる。

「死んだ獣たちを操っているがこの力、神具とは考えずらい」

芝桜は一心に炉南を見つめる。

「神具……?」

「後で教えてやる……だが彼女は俺たちと同じ神ノ子だ、魔法陣が見えないってことは、力の源は彼女の中に潜んでいるな」


痺れを切らした炉南が目を見開く。

「最後の会話……楽しんだ?……もう……未練ないよね……?」

周りにいた獣たちの数が増えている。

簡単に見積もっても100体以上は確実に。

「バク、俺がやろうか?」

「まさか!私がやる……!!って言いたいところだけど……零に譲るわ」

零の戦闘準備は完了していた。

それをみてバクは戦いを譲ったのだ。

待ってましたと言わんばかりに零は前に出る。

「こんな奴に手こずってたんじゃイルミナティも大したもんじゃないな」

「そりゃどうも」

獣たちが数を増やし再び襲い掛かってくる。

「…………死ね…………」

零の左目の魔法陣が回転を始める。

接続開始コネクト!」

無数の見えない光が神速で獣たちに接続される。

「心の準備はできてるか?」

「……あなたこそ……」

反抗期の子供のように歯向かう獣たちに肩を震わせながら甘い吐息を漏らす炉南。

幾百の獣たちは一つの山を作り主人を貪り始めた。

「念には念を……」

限界まで魔法陣を重ね魔法の言葉を唱える。

「地翔天落!!」

それが合図に天から空が、地から地面が主人と獣を押し潰した。

赤い血があたり一面に広がる。

「これだけの出血だ……確実に死んでる」

零は魔法陣を解き、芝桜にどうだといわんばかりにドヤ顔を披露した。

「おいおい、念のために最後の一撃をかましといて、最後の最後で確認を怠るのか?」

確かにと思い、芝桜から死体へと視線を変えた。

しかしそこは血の海。

だが先ほどとは光景が違う。

血の海の上で一人の少女が嬉しそうにこちらを覗いているのだ。


「……楽しいね……もっと……私を……」

血まみれの炉南が血の海に倒れこむ。

「……私に……痛みを……♪」

血の海の上に大きな魔法陣が出現する。


バクがチュパチャップスを噛み砕き零に尋ねる。

「お前には荷が重すぎる相手だったみたいだな?」

口に魔法陣を出現させ攻撃に転じる準備を整えた。

「勝手にしてろ」

しかし尚も芝桜は動こうとはしない。

あるいは仲間を信頼しているから動く必要がないのか。

炉南の魔法陣を中心に周囲の血が集められ炉南の中へと舞い戻っていく。

「不死身じゃねぇか……」

「神じゃあるまいし奴も神ノ子なら必ず倒す道はある……神ノ子なら……」


炉南が口笛を吹くとどこからともなく亡き者達が集まりだした。

獣から人の死体まで。

「……あと何回……私を殺してくれるかな……かな?……」

バクは口を大きく開き炉南のみに的を絞る。

TREBLEトレブル!!」

凄まじい高音の塊が炉南目がけバクの口から射出された。

しかし、炉南の近くにいた男の死体が間に入り身代わりとなった。

とはいっても威力が落ちただけで死体を貫通させ炉南にも命中する。

「……気持……いい……」

零もすかさず近くにあった小枝のデータを書き換え槍を錬成すると槍投げのように炉南の心臓を狙う。

「……駄目だよ……楽しみは……最後……だよ?……」

血の壁が槍の威力を殺した。

「……そろそろ……あなたたちも……気持よくして……あ・げ・る♪」

チーターの死体に乗った炉南は逃げきれない速度でこちらに向かってくる。

バクがTREBLEでチーターを吹き飛ばすが炉南が飛び降りてこちらに落下しようとしていた。

「お楽しみを今くれてやるよ!!」

零は地中深くにある大きな岩石の管理者権限を取得し、それらを鋭利な状態で地上に出現させ炉南の心臓目がけ貫かせた。

炉南は口から胸から大量の血を流す。

だが先ほどのように再び血を体内に戻し、復活の恐れもある。

だから徹底的に心臓を貫きまくる。

零は返り血を浴びながら何度も何度も貫き通した。

そして、満足したのか、零はバクの方を向き岩石の向きを同じ方向に向かせた。

「零よ……なんの冗談だ……?」

無表情でそれに答えようとしない零。

「あぁ!? 零!!」

勝利のチュパチャップスを再び噛み砕いたバクは戦闘態勢に入る。


思いがけない出会いは、運命の歯車を回す。

すこしずつゆっくりと、決められたレールを沿って。

22-encounter- 終

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