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LOST EARTH  作者: 古屋 零
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ⅩⅦ-崩壊と崩落-

目が覚めると病室のベッドの上で寝ていた零。

「なんでこんなところで……!」

自分が病院に居る理由を思い出すと辺りに顔を向けた。

「七田 号哭…………奴は一体……」

号哭の姿はなく、病室に一人。

騒音のない外の世界をじっと見つめた。


棚においてあったメガネを掛けベッドから出ると病室のドアに手を掛ける。

『本当に開けていいのか?』

不意に聞こえる声。

辺りを警戒するが誰もいない。

声に気にすることなくドアに掛けていた手に力を入れる。

『その挑戦……後悔するなよ?』

ドアの向こうに広がる世界。

構造のまったく違う廊下。

明らかにここは病院ではない。

まるで違う空間が取って付けられたかのように異様な雰囲気が漂う。

『一歩は足跡となり……』

先ほどから聞こえてくるこの声……幻聴ではないようだ。

『二歩は草木を芽吹く……』

魔法陣を左目に展開し、迎撃の準備を整える。

『じゃあ三歩は……?』

何かの気配を感じ天井に顔を向ける。

「散歩でもするのか?」

駄洒落で返すが返答はない。

それもそうだ、先ほどから周囲には誰もいやしないのだから。

「無視かよ……」

この瞬間までは……


零が顔を下ろした瞬間、上から何かが降ってきた。

「その身に刻め――」

声の主の強烈なキックが床をえぐる。

「この三歩は……城を建造する!」

えぐられた床から何かが芽を出すかのように石の塊が大きくなっていく。

天井を突き破り、大きな城が誕生した。

「招待状は持ってねぇぜ?」

零の心音は早くなっていた。

「持ってるよ……その力が、その目の魔法陣がその証……どれ程のものか見せしめてみせろ!」

謎の人物は空高くそびえる城の一番高い部屋へと城壁を飛び移りながら向かった。

「どうやらあいつを追わないと始末がつかないようだな……」


城の階段を駆け上がり、城門を開く。

建造されたばかりの城は細部まで事細かに作りこんであり、内部の構造はとにかく広い。

「どうやったら三歩でここまで出来るんだか……」

呆れながらも、油断は出来ない。

零の力を使いこの城の管理者権限を得ようとしたが何回やってもその申請が通らない。

強制力を持つ零の管理者権限に今まで応じなかったものは零と同等の力、或いはそれ以上の力のみ。

強敵と対面したときには役に立たない力。



「神は乗り越えられる試練しか与えないって言うけど、こいつはどうだ?」

城を建造した人物は頂上の部屋にて椅子に腰掛けて周囲の者に話した。

部屋は教室のように机と椅子が配置され、まばらに他の者も座っている。

「この城を攻略できるのも怪しい……”攻略確率80%のの道”を」

城を建造した人物は不敵な笑みを浮かべながら皆に発言するが誰も反応しようとしない。

「あっそ、そういう反応な訳ね……シクの紹介だから攻略確率楽めだけど……落としたっていいんだけど?」


といっても、そもそも其の道じゃなくて”攻略不可の随神かんながらの道”なんだけどね……!

これ以上人員は要らないんだよ、トイ――


「さぁここからはお楽しみタイム。奴が3時間以内にここにたどり着けなかったら、承知のとおり……ゲームオーバーっだ!」

そういって皆が見ていたモニターが一斉に消された。



零は玄関入り口ホールから正面に見える大扉を開いた。

ダンスホールの様な場所であり、上空に見える天井には大小様々なシャンデリアの数々。

中央ほどの場所まで移動したところで城に入城した際から発動していた魔法陣を解いた。

「一部屋一部屋の広さが馬鹿に何ねぇーよ……」

周囲を警戒しながら見渡す。

『さぁ、ようこそ我が城へ……何の説明もなく悪かったと思ってる』

声だけダンスホールに響いていた。

『だから一度だけ説明する。ルールは簡単、3時間以内に俺を見つけてくれ、たったそれだけの簡単な事だ』

部屋全体がガタガタと揺れ動きだす。

零は気づいていないが、シャンデリアがそれぞれ意思を持ったかのように、零の方向を向きだした。

全てのシャンデリアが狙いを定めたところで、一瞬の隙なく標的に向かって発射される。

シャンデリアが風をきる音に気づき、零は魔法陣を一瞬で発動させ地面をえぐるようにかきだすと地面の情報を書き換え鉄パイプの様な物に変えた。

それを手でしっかりと握るとシャンデリア一つ一つを弾き飛ばしていく。

その動きは既に人間の限界を超えている。

それ故に零の影は主の動きの後を追うように動いていた

「多すぎだっつぅのー!」

シャンデリアの管理者権限を得てもよかったが、圧倒的数の前に管理者権限でもスピードが間に合わない為、最善の策が現状となる。

鉄パイプの様な物を激しく回転させ、怒涛の攻撃ラッシュを最後まで何とか耐え忍んだ。


肩で息をしながら顎に垂れ下がった汗を拭う。

不意に目にゴミが入る。

上から大量の埃が落ちてきているようだ。

何とか目を開けられるようになり天井を見上げる。

「冗談はよしてくれよ……」

天井が至る所から埃をこぼしながら今にも崩れようとしている。

走って次の扉へと向かう。

間に合えと願いながら。

だが扉までが遠すぎる。

天井の崩落が始まった。


こうなったら――――


魔法陣を重ねて高次元の力を生み出す。

「――0の世界――」

天井の崩落が止まる。

っがそれは一部分にしか過ぎない。

力のムラがあるのか所々の時間が完全にとめ切れていない。


やはり零には形無キ物の管理者権限を有することは難しいらしい。

零のいるポイントから半径3m程の範囲の時間しか止め切れておらず天井の瓦礫が迫っていた。

零はすかさず手に持っていた鉄パイプの様な物を地面に突き刺し、まるで粘度の高い水をすくい上げるように床を持ち上げ上空を覆った。

瓦礫は零の上空に出来た壁に激突し、何とか身を守ることが出来た零。

「一部屋目でこれだろ? 後何部屋進めばいいんだよ……」

自分が置かれている状況に呆れながらも、新たに一歩を踏み始めた。


変革の時はいつだって必要だ。

毎分毎秒、人は成長しながら生きている。

だからこそ零の力も成長が必要なのだ。


ゆっくりと成長しながら、その身に刻んでいく。

人外の力を――神の力を――

17-Collapse and collapse― 終

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