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LOST EARTH  作者: 古屋 零
15/28

ⅩⅤ-神より与えられし贈り物-

今までのあらすじ


近いようで遠い未来――西暦2300年。

次々と零に襲い掛かる逸脱した事象・人物・力。

その最中、百夜祭で己の力を上回る敵と相対する零。

苦戦を強いられていた際、不意に現れた新たな力の持ち主、号哭。

彼の力を借りて零は何とか危機を脱することが出来た。

だが戦いの鐘は止まない。

根源を根絶やしにしない限り……

「あぁ……っ」


彼は病室で横になっていた。

サヴァン症候群、彼はそれを持っていたために選ばれた。

この力は知的障害や自閉性障害を持つものの中からごく一部に開眼する力であり、特定の分野において常人とは一線を画す力を持ったモノの力を言う。

だが彼はまだ未熟であった。

完全に開眼することはなく中途半端に目覚めていたために、今まさに処分されようとしていたのだ。

知的障害のある彼に、今何が起こっているかなど判りはしない……

ただ判るのはまだ人の役に立てると思っていることぐらいだ。


「点滴に細工をしておいた……時期に死ぬが、コイツの身内には自然死だったと伝えておけ」

白衣を着た大人が彼を見下しながらカルテのような紙に何かを記入していく。

「こんな失敗作に大金をはたいてまで実験をした意味があったのか、甚だ疑問だよ――」


彼は大人達の言うことが理解できない。

難しい用語をペラペラと話されても理解するのに時間が掛かるためだ。

だが、彼の体の中では変化が起こっていた。

それはまるでルービックキューブが解かれるかのように、難解なパズルが簡単に紐解かれるような変化が。

「……っう!」

大人たちが彼の異変に気づく。

「ッフン! やっと薬が効き始めたか……さっさと死んでくれよ?」

彼は苦しみのあまり両手で服を引っ張り、どうにか苦しみを紛らわせようとした。

しかし薬の進行速度は速く、彼の心臓を掴むのにそう時間は掛からない。

「あぁあぁぁぁあ!」

大人たちに右手を伸ばし、助けを求めた。

「あぁ? 何時まで生きながらえる気だよ、お前?」

ベッドを蹴飛ばし、病室を後にしだす2人。

彼は必死に右手を伸ばし遠のいていく大人たちを凝視し続けた。

「相手してらん――――」

一人が突然隣から消え、目の前の壁に押し潰され、大量の血を壁に彩っていた。

「っは!?」

もう一人が理解できず、まさかと後ろを振り向く。

そこには頭を抱えながらも右手の甲に蒼い魔方陣を出現させている彼が。

「おいおい……冗談はやめ――――」

彼は左手を瞬時に男に向けて引き戻した。

それと同時に男がこちらに向かって飛んでくる。

男はそのまま窓ガラスを突き破り、4階から落下した。

「あぁ……あぁ……、大分楽になった……」

彼は美しい黒髪をもっていた。

だが薬の影響か彼の髪の毛は激しき紅に染まり、まるで血を流しているかのように見えた。

「感じる……俺は……俺は生きている!!」


サイレン音が響き渡る。

『――被検体055暴走! 覚醒状態にあると思われる! 非戦闘員は退避! 鎮圧部隊は速やかに4階、426号室へ向かえ!!』

院内放送で病院中に異変が知らされる。

「五月蝿い……」

病室前に武装した男達が現れる。

「死にたいのか?」

彼は鎮圧部隊に問いかける。

だが返事は返ってこない。

彼は苛立ち、力を使い次々に鎮圧部隊を殺していく。

「こんなもんかよ!」

しかし何かがおかしい。

悲鳴も上げずに死んでいく鎮圧部隊。

『やっと気づいたか? 被検体055……いや、七田 号哭』

どこからとも無く聞こえてくる声。

『君みたいな力在る者を創り出す為にあるこの機関が、何の対策もせずにただ無能に日々を過ごしていると思うかね?』

力を使い四方に攻撃を繰り出すが、病院には傷一つつかない。

「まさか!?」

『そう、そこは現実じゃない……仮想世界だ。どうやっても君じゃ――――!?』

号哭は最大フルパワーの力を出し、仮想世界に綻びを作った。

「何か言ったか?」

笑いながら綻びの中に入り込もうとし、動きを止めた。

「所で――お前、何か用か?」

睨みつけるような目で、見つめる先に零が立っていた。


(何!? 管理者権限を使い号哭の記憶領域に侵入したのに気付かれた!? ありえない……強制的に侵入したならまだしも、俺の管理者権限を使用したにも関わらず見つかったのか?)


溢れんばかりの殺気が風となって零を包んだ。


(このままじゃ何をされるか分からない……ここはひとまず――)


零は光となり、号哭の記憶領域を後にした。

いや、したかったのだが強制的に引き戻される。

号哭の左手、悪魔の地獄への誘いによって地面に叩き戻された。

「そんなのありかよ!?」

「さぁ見せてやろう、今まで俺を見下してきた全人類に、平凡な日常に飽きているお前らに、非日常を求めるお前らに、求めざられる運命を――!!」

号哭の両手に紅と蒼の魔方陣が灯っていく。

それぞれ魔方陣を一つ増やし二重魔方陣へと変化させ、コツを掴むとそこから一気に十四重魔方陣へと進化させる。

魔方陣は手から離れるにつれ小さくなり、それはまるで手の甲に生えた角のように見えた。

「お前は良いのか? 重ねなくてよぉ!」

右手を後方にやり、神の光放で一気に零との間合いを詰める。

すかさず零は地面データを書き換え、号哭との間に壁を作り出した。

だが号哭も負けてはいない。

左手を使い壁もろとも引っ張り、己の後方にある病院へと飛ばした。

しかし先ほどまでいた零の姿が無い。

まさかと思い上空を見上げると再び号哭の記憶領域から脱出しようとする零がいた。

「まだ味わってないだろ? 好き嫌いは良くないぜ?」

更に魔方陣を重ねて収束させ、増えすぎた魔方陣は手の甲へと沈んだ。

「開眼せし”神ノ子”等――その中でも異質な存在、天と地の陣を携える者を”禁断ノ子”」

号哭の手の甲に先ほどとは違う魔法陣が刺青のように描かれだした。

「子等は成長し、神使イとなる――神世界の一説……あいつ等に良く聞かされたよ!! 今の俺は禁断ノ子であり神使イにあたる……」

完全に手の甲に魔方陣が描かれ、空気がズシリと重くなる。

「神ノ子であるお前が、俺から逃げ切れるのか?」

号哭は挑発するかのごとく左手の指をクイクイと動かした。

あと少しで脱出出来掛けていた零は再び記憶領域内へと戻される。

ロケットのような速さで地面を目指し。

「形無キ存在は扱いが苦手なんだよ!!」

吐き捨てるように言うと左目に魔法陣を出現させる。

「 ――”零世界(ワールド0)”――」

世界は静まる。

ありとあらゆる生命が鼓動を止めた。

零はゆっくりと体制を立て直し、目前に迫っていた地面へと両足で立った。


(っく! やっぱり専門外は無理がある!!)


零は二重魔方陣を創り出し、すかさず三重魔方陣へとレベルを上げる。

「絶えろ……絶えてくれ……」

零世界を発動しつつ脱出しようと試みる。

だが脱出しつつも零世界を維持するのには無理があった。

「ここは一つ、もう一段階上に行かなきゃ行けないよな……?」

零は左目の三重の魔方陣を高速回転させる。

雄たけびを上げ、左目の魔方陣が煙を上げる。

徐々に回転が弱くなり、零の左目からは赤い涙が流れた。

「これで……」

零は四重魔方陣へと段階を上げ、脱出するかに見えた。

しかし、ゆっくり号哭へと近づく。

「ここで終わらしといた方が良いようだな?」

魔方陣を四重へと変え、ゆっくりと魔方陣を回転させる。

攻撃が最大の防御。

っが、専門外の事は上手くは行かないもの。

零世界が維持できず解かれた。

時間が戻り再び号哭に引かれだす零。

「おいおい、何時の間に魔方陣を重ねたんだ? 油断ならねぇ~な? 油断ならねぇーよ……」

零の首を右手で鷲掴みし地面に叩きつけ神の光放で地面に食い込ませていく。

「どうした? もっと重ねたって良いんだぜ!?」

「そうかい!」

号哭を睨みつける零。

「もうその必要は無い」

号哭の手が止まった。

「容量がでか過ぎる俺達をコントロールするのには時間が掛かるんだよ、理解できるか? 障害者」

それに反抗に出ようとする号哭。

その思いに応じてか、思い通りに動くはずのない体が少しずつ動き出す。

「もお楽になれよ!! もとはそうなる運命だろ、お前の!!」

傍に落ちていた木の枝を拾いデータを書き換えた。

真剣へと――

暴れだす前に、決着を付けようと零は日本刀を振りかざす。

だがその動きも途中で止まる。

いや止められたというべきなのか。

マッハの速度で天から降りてきたもう一人の号哭が仲裁に入った。


「どうだ記憶の旅行は?」

そういい、日本刀を弾き飛ばす。

「次やったら無事じゃ済まないぜ?」


天から舞い降りてきた号哭のお陰でやっと記憶領域の号哭から逃れる事ができた零。

2人は零のラボへと戻った。

「人が戦闘を終え油断している間に頭の中を覗くなんてな」

零は荒れているラボをシステムを使い片付け始めた。

「その力――ちょっと貸してくれよ? 帝王の魔眼もどき」


過酷な運命を辿る号哭。

そしてそれを目の当たりにした零。


2人が交わることにより、運命は新たなる可能性を導き出した。

15-The present which is given than God― 終


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