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LOST EARTH  作者: 古屋 零
14/28

ⅩⅣ-その涙をヌグウ者-

腰にぶら下がる計10個の指輪に全ての指を滑り通らせる。

まるで銃を腰のホルダーに収めるが如く。

「見てらんねぇ~、お前の戦い」

右手の甲と左手の甲に模様の違う魔方陣が浮かび上がる。

右手には蒼き魔方陣、左手には紅き魔方陣が。

「さぁ……”禁断の力”の解放だぁ~!!」

増殖した仮面から塊が放出され、幾千の戦うだけの人形が生まれる。

それらが零と号哭目掛けて飛び込んできた。


零は拷問部屋を呼び出し、人形たちを鎖で止めるのに精一杯であった。

しかし号哭は、何もしていなかった。

人形は号哭に向かうことなくまるで逃げるかのように離れていく。


――いや逃げているのではない、全て吹き飛ばされているのだ。

「つまんねぇい、つまんねぇい……強い力の反応に気づき来てみたものの、まだまだこんなものかぃ~?」

号哭は胸ポケットから生徒手帳を取り出すとパラパラとページをめくり何か書き込みだした。


(何なんだあいつは……手が空いてるならこっちも倒してくれよ――!!)


本体の真が零に向かって再び間合いを詰める。

「チョイチョイチョイ! マエの相手はコッチ――!」

真の顔に右斜め45度の角度から蹴りを入れる。

「――っだ!!」

さらに、空いていた反対の足で地面に蹴り落とし、号哭は着地したと同時にサッカーボールを蹴るが如く遠くへと真を蹴り飛ばした。

「ホンッとにマエらは話を聞く耳がないなぁ……なぁ?」

号哭はこちらに問いかけてきた。

「じゃあちょっくら力を見せてあげるよぉ~? 帝王の魔眼君」

号哭は右手の掌を真に向ける。

「いや、君は唯の神の子、か……」

寂しげな表情を浮かべながら、右手に浮かんでいた蒼い魔方陣の上に大小様々な同じような魔方陣が出現する。

それが狙いを定めるかのように、はたまた威力を一点に集中するか如く、魔方陣は徐々に小さくなり、それぞれの距離を離していく。

ニヤリと笑う号哭。

掌空波ショウクウハ!!」

全ての魔方陣が一気に右手の甲へ向かって飛んだ。

それと比例して右手の掌から放たれた空気の塊が大砲のような威力を持ちながら真めがけ飛んでいく。

同じくして左手の甲には紅い魔方陣が現れており、その手を引くことにより真がこちらに向かって強制的に引き寄せられた。

右手から射出された空気の塊と左手により引きずられた真が衝突しあう。


「グッナイ……」

号哭は魔方陣を消した。

「どうだい? ”神の光放”を持つ右手と、”悪魔の地獄への誘い”をもつ左手は……そそるかぃ~?」

戦いは終幕した。

号哭の最後の一撃で。

「俺も殺すのか?」

「あ~~、ちょっと待ってくれるかぃ~?」

号哭はそういうと再び両手の甲に魔方陣を出現させ、自身の頭の上で指を細かく動かし始めた。


ものの数秒であった。

垂れ目がちだった号哭の目はキリッとした目つきに変わっていた。

「っはぁ~……スッキリした」

号哭独特の癖のある喋りが、標準のなまりのない話し方に変わる。

「っん? あぁ気づいちゃった? 最近力の使いすぎでここがイカレてくるんだよね~」

号哭は頭をつんつんと突きながら爽やかな笑顔を見せた。

「さぁ、何か聞きたいことはあるだろうけど、第2幕を始めますか?」


(こいつとやりあうってことか? 冗談じゃない!)


「俺は帰らせてもらう」

号哭はものすごい握力で零の肩を掴んだ。

「終わってないぜ? まだ色々とな……」


何かの気配に気づいた零は空を見上げた。

「あいつは……なんで……死んだはずだろ?」

宙に彼女は浮いていた。

ボロボロの仮面をつけて。

目は虚ろいでおり、屍のようにしか見えなかった。

そしてその向かい側には先ほど号哭が倒したはずだった真がいた。

「あぁあぁぁああぁ、水――今起してあげる……」

手に黒い塊を作ると、それを水に向かって飛ばした。

水の腹部に黒い塊が当たると、まるでそれは吸収されるかのように、身体の中に飲み込まれていく。

「もぉすぐ俺もそっちに行くから、最後の共同作業を……一緒に……」

水の目に薄らと光が灯った。

そして手には神々しく光煌く大剣が。

そして真も同じように禍々しい闇に堕ちた大剣を手にしていた。


「構えろよ? 帰るのは全てが終わってからだ」

号哭は戦闘の準備をせず、お手並み拝見といった様子だ。

「帰るさ、必ず……あいつ等を楽にしてからな!」

零は魔方陣を出現させると今度はこっちの番だといわんばかりに一気に三重魔方陣を作り出した。


(これが今の俺の限界……だが!!)


地翔天落チショウテンラク!!」

零の瞳が水と真を捉える。

それが合図に天から空が、地から地面が2人を挟んだ。


「ッ――――――!!」


粉骨砕身。

聞くにも耐えかねる骨の砕け散る音。

赤く染まった鮮やかな血が流れ落ちる。

号哭が最初に与えていたダメージのおかげで零は勝つことができた。

それがなければこうも簡単にいくことはないだろう。

しかし号哭の与えたダメージが不十分であった場合、零が相手の生命力を全て削れていなかった場合、それはまだ勝利とは言えない――


零は流れ落ちた血を確認すると魔方陣を消し、帰る準備をしだした。

「良いのか? これで」

「……」

零は無言で立ち去ろうとした。

とにかくこれ以上号哭と名乗る男と関わりを持ったら今以上に大変なことに巻き込まれそうだったから。

しかし号哭の一言で足を止めた。

「まだ終わっちゃいねぇーよ?」

振り返ればそこには空を押し上げる真の姿が。

仮面の目の部分からは赤き涙が滴り落ちていた。

「本当にこいつら倒せんのか!?」

「うん? それを俺に聞く?」

地翔天落によって真と水の大剣は大破していた。

2人はそれを破棄すると、己が血から新たに大剣を作り出した。

さらに真は禍々しき深怨なる闇を。

そして水は神々しき後光を放つ光を剣へと変化させた。

2人は地翔天落を完全に退けると同じスピードで零と号哭の元へと走り出した。

「”淵源の創まり”と”神ニ従エシ聖者”あいつ等とんでもない物作り出したぜ? お前なら確実に死ぬぞ」


号哭が言うことには納得せざるおえなかった。

真と水の後ろには見たことのない巨大な闇、そして光が迫ってきていたからだ。

徐々に真と水も闇と光と同化して後は対象者を滅するのみとなった。

「一旦落ちるぞ!!」

号哭は逃げる零の腕を掴んだ?

「もう一度言うぞ? 良いのか? それで……逸脱した存在のあいつらがいるこの世界……このデータ世界が何も影響を受けてないと思うか?」

号哭は掴んでいた手を離した。

「ログアウトした次の瞬間、お前の意識はぶっ飛ぶかも知んないだぜ?」

振り返ると号哭がこちらに手のひらを向けていた。

「そうなるぐらいなら……俺がお前を――”喰らう”――」

嫌というほどに殺気を感じる。

確実に号哭は殺す気でいた。


確かに号哭が言うことにも一理ある。

西島 沙耶といい、目の前の真と水といい、まだまだ未知の部分が多い。

得体の知れない領域に無知で近づくことほど愚かな事はない。

「分かった分かった! だからその手をこっちに向けないでくれ」


その時だ。

ことの始末をつける準備ができた真と水が走りながら互いに剣を交える。

「2回も使うとハ思わなかったヨ……意識が飛ぶんで気づいたときには死体が転がるんだけどな!!」

舌を出し興奮を抑えられない真。

「あらあら、薬のやり過ぎで頭まで犯されたか?」

さすがにこの状況では魔方陣を展開する号哭。

「最初も餓鬼が2人歯向かってきて、男と女を殺してやったよ!! お前らも……」

交わった剣は火花を上げ空間を切り裂いた。

「……頼むから邪魔はしないでくれヨ?」

2人の目の光が消えた。

「……おい、なんかおかしくないか?」

零は号哭に尋ねる。

「ぼやぼやしてんじゃねぇ!!」

すかさず号哭が零の目の前に立ち、空間をも切り裂く斬撃を凌いだ。

「……――!」

すかさず後方に突如現れた真らが再び剣を交えた。

「ヒカリトヤミ……ドチラニメサレタイ?」

水が問うが、その答えを答えさせてくれる暇などない。

同じく空間を切り裂く斬撃が放たれた。

「掌空波!!」

目には目を、攻撃には攻撃を繰り出す号哭。

しかしその攻撃は空間を切り裂かれて現れた別の空間へと消えていった。

「おい帝王の魔眼モドキ!! なにもしないつもりか?」

零は必死に魔方陣を展開して真らの管理者権限を得ようとしていた。

しかし、一向に管理者権限を取得できる兆しがない。

それに苛立ちを覚えていた。

「やってるさ!! ここまで強いと思わなかったんだよ!!!!」

西島 沙耶の件では第三者の力があった為どうにかできたものの、今回はあまり手を出すつもりのない号哭のお陰で戦局は困難を極めていた。

実際、前回の一件は自分の力のみでもどうにかできると過信していたため、今回は自ずから戦場へと向かったのだ。

自分の力は絶対だと過信して。

だが一人で戦うともなるとこうも無力と感じるとは思ってもいなかった。

自分の力は規格外の、逸脱したものには通用しないと痛感することに悔しさがこみ上げていた。

それを見かねた号哭はついに戦いに参戦しようとしていた。

先ほどまでの遊びではない、本気の殺し合いの戦いに。

「こっからは本気だ……魔眼モドキ、よく見ておけよ? お前が強くなるために……俺達の力となるために――!!」

真たちは斬撃をいくつか放つと不意に上空に現れ、零と号哭に気づかれぬまま交えた剣を斬り降ろし、そのまま光と闇となって2人を脳天からぶった切った。

「終わった……ノか」

真らの目に光が戻った。

だがすぐに異変に気づく。

「水……? どこにイるんだ? 水?」


「探しているのはこのゴミか?」

号哭は息の根が止まった水をごみの様につまんでいた。

「お前らの攻撃はいいと思うよ、うん。あのいくつもの斬撃、そしてそれによってできた上空への死角。利用できるものは利用しないとだめだよな?」

真は剣をきつく握り締めた。

「なぜお前らは生きていル? 何故水は死んでいル?」

号哭は笑って返答した。

「何故? あぁわからなかったのかよ……簡単だろ? お前らが弱すぎたんだよ」

ゆっくりと手のひらを真に向ける。

そして真は我を忘れて号哭に立ち向かった。


全ては決着する。


号哭は体中に血を流していた。

目からは赤い涙が流れている。

「あぁ~、また泣き虫って言われるジャン……」

そして目の前には息の根が止まった真が。


ともに戦うものが味方とは限らない。

ともに戦うものが善だとは限らない。

それでも受け入れなければない結果。


これが現実――

これこそが――虚実であると。

14-The person who wipes the tears- 終





キャラ紹介[第11話~第14話]


七田 号哭(18)-高校3年生-

ニックネーム:号哭・泣き虫


零の通う高校とは別の私立の学校に通っている。

激しき紅に染まる髪。

胸に光り輝く鳳凰の紋章。

腰にぶら下がる装飾品の数々。

両手に浮かびあがる紅と蒼の魔方陣。

そして零の事を魔眼の帝王と呼び、何かと勘違いしていた。


仮面の者・真


天然の天倪により覚醒した適合者。

淵源の創まりという深怨の闇に染まる暗黒剣を作り出した。

数々の武器の中でも上位ランクのものであり、一度斬られれば、絶望を味わいながら地獄へも天国へも行かされず死の直前を味わい続ける。

仮面を入れ替えることにより、その仮面にあった能力が使用可能となる。


仮面の者・水


畠山が放った人工的に作られた天倪により感染した資格有る者。

神ニ従エシ聖者という後光を放つ聖剣を作り出した。

人工的に生まれたため、又本人の生命力が低かったため、全快にて戦うことはできなかった。

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