ⅩⅢ-不完全生命体-
真の仮面が全て剥がれ落ちた。
異変を察知した零は場所を変更する。
「どこでも結果は同じ、この世界は瞬く間に崩れ去る……」
畠山は勝利を予期していた。
場所は零のラボ。
誰も居らず、戦いの場としてはここしか残されていなかった。
「私は一先ず脱出させてもらうわ」
零が止める暇も無く、畠山は黒き影となって白き世界に残像を残して消え去った。
残像も徐々に消え始める。
「……ック! とにかく優先はこっちか!!」
真の顔は黒い煙が渦巻いていた。
いや真の体中を黒い煙が渦巻いており、口は大きく開かれ、目からは空虚な視線がこちらに注がれていた。
「…………ッ」
どうなっている?
動くのか、動かないのか?
理性はあるのか?
どうすればいい?
零の脳内では次に何をすべきか悩んでいた。
しかし真は着々と変化を続ける。
黒い煙が周囲に広がり、宙に煙の塊が現れたかと思うと、それが形を成して様々な表情を見せる仮面がいくつも突如現れた。
真は宙に浮いている仮面をおもむろに一つ手に取り、それを顔に装着させると何の躊躇いも無く、跳躍した。
零と真の距離は直線的に10メートル以上は離れていた。
歪曲直結を使った際に、3人同時に運んだ為容量オーバーとなり、結果的に制御が利かずに位置がばらばらになったからだ。
だが、なんということだろうか。
真はその10メートル以上の差を、たった一回のジャンプで間合いを詰めたのだ。
零の眼前に真の無表情な仮面の顔が大きく移り込む。
避けることは不可能と判断したため、地面データを0.5秒で書き換えて防御壁を作り、そこに衝突させた。
防御壁に大きなヒビが入る。
「武器が必要か!?」
零は急いで端末を使い武器保管庫を出現させた。
四方には武器を何段にも積まれた棚が大きなタワーの様にそびえる。
力が以前にも増している真に武器一つで倒せるかどうかわからなかった零は管理者権限を使い、全ての武器のリミッターを解除した。
それを無造作に宙に浮かべ、防御壁の向こうにいる真に一点集中させる。
攻撃は真が防御壁を超えてきたら開始となるよう設定して。
防御壁上部に真の黒い手が顔をのぞかせる。
続いて顔が見えたかと思うと、先程までの仮面と別のものに変わっていることが容易に気づけた。
しかしそれに気づいた所で何も無い。
ただただ攻撃あるのみ。
まずは銃火器が一斉に真に向けて発砲される。
続いて日本刀や西洋の槍や斧などが上空から降り注ぐ。
真はそれらの攻撃に驚くことも無く、再び零に向かって飛んできた。
その間、宙に浮いていた仮面が次々に真の顔に装着されては外れて行く行為が繰り返し行われて。
そして目当ての仮面になると、真の手には小さなリングが。
それを地面に投げつけるとリングが一瞬で大きくなる。
輪の中は黒く淀んでいたが真はその中に急降下した。
「逃げられたか!?」
零はリングの中に落ちていく銃弾と武器らを見つめ、相手が次にどう来るのか考えた。
全てが輪の中に吸収されて行く。
「――――ッ!」
不意に後ろから何かの気配を感じ取る。
振り向いた時には既に遅し。
真が零の肩を掴み、地面へと零を固定させる。
「抜けない!?」
真は新たに上空にリングを投げ、それが大きく広がる。
「嘘……だろ?」
輪の中から幾千の武器が飛び出してきた。
無慈悲にもそれらは零が先程仕掛けた武器。
息を呑む暇も無いまま辺りは足場の踏み場も無くなった。
無傷な真の仮面が剥がれ落ちていく。
戦いは零の自爆により終幕したかに見えた。
「安心したか?」
真の肩に肩車状態で乗っている零。
「お前の管理者権限を得るには何故か時間が掛かるが、武器の軌道やら地面の性質やらは簡単に変えられるんでね」
小型ナイフをデータ構成し、真の喉元に向け刃を降ろす。
「アッハァ~? ”帝王の魔眼”見っけぇ~!」
突然零のラボに見知らぬ人の声が響く。
「う~ん? 天倪が成長してるねぇ~?」
零が向けた刃は突如現れた真の仮面に突き刺さっていた。
真の顔に再び仮面がはめられる。
「キミィ~、早くしないと死ぬよ?」
真の周囲にある仮面が目にも止まらない速さで増殖していく。
「……ック!」
零は一旦真から距離をとる。
「アンタ何者だ!? 味方か?」
激しき紅に染まる髪。
胸に光り輝く鳳凰の紋章。
腰にぶら下がる装飾品の数々。
「オイかいぃ~? オイは、七田 号哭、ただの泣き虫さ」
この男、厳重警戒につき近づくべからず。
13-Incomplete living entity- 終