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LOST EARTH  作者: 古屋 零
11/28

ⅩⅠ-暗闇に灯る光-

闇があるから光が生まれたのか。

光があるから闇が生まれたのか。

唯一これだけは言えるのだ……人はどちらも手にしようとする貪欲な生物なのだと。



***


「なぁ? そんなのありか……よ――」

進藤は真の禍々しき闇に染まった大剣により息絶えた。


「何が足りないって言う……の――?」

三味は水の神々しき光に染まった大剣により息絶えた。


彼等は弱すぎたのだ。

神の子にすらなれない哀れな子供たち。

だがその代わりに手に入れた力、”神具”。

使用時に呼応するが如く小さな半透明の正方形型の箱が出現し、それを握ると神具としての本体が現れる。

だがその神具の力でさえ、人為的に作られた資格有る者、そして適合者の足元には及ばなかった。




「こんな時に、新手が出てくるなんてな!!」

体育館上空、2年6組の教室前の廊下の窓から飛び出した誰かが体育館へと向けて落下していた。


天気は快晴、風も吹いておらず落下時の風は心地よきものであった。

すなわち絶好の落下日和。


彼は長い棒状のものを持ち、鋭利な先端を下にして体育館天井を突き破った。


体育館に大きな光が差し込み、落下してきた誰かは真に向けて棒状のものを投げ、落下スピードを和らげて地面に降り立った。

突然外界の強烈な光が差し込んだ為、体育館内にいた者たちは誰が来たのか視認はできない。

だが投げられた棒状の物が真の頭を貫通する所は、体育館にて生存する者達の目には映りこんだ。

「お前等、白夜祭を邪魔すんなよ?」

そういった誰かはしまっていた瑠璃紺色の眼鏡を掛け、髪を掻き揚げた。

「匂ウ……匂ウゾ? 我々”天倪ノ芽”ガ!!」

水が興奮している後ろで、先程の攻撃の衝撃で倒れていた真は起き上がる。

「あぁ、もぉ痛みさヱ感じない……これが力か――」

突き刺さった棒を勢いよく抜き、それを眼鏡の男へ向かって投げ返した。

「絶望ヲ味わうのはもうゐい!! これからは俺と水以外が味わう番だ」

「ならこれ以上俺の邪魔をするな!!」

攻撃を避けるために後ろへと飛ぶ眼鏡の男。

全員の目が徐々に光に慣れ、遂に眼鏡の男の姿が判明することとなった。


言うまでもない、この状況を砕く唯一の希望、遠山 零。

零は左目に青白い魔方陣を出現させると、管理者権限を使い飛んできた棒の動きを変えた。

「進むべき方向はこっちじゃない!」

棒は水目掛けスピードを上げた。

「仲間同士で潰し合え!!」

「水!!!」

真のスピードでは確実に間に合わない。

だが攻撃はギリギリの所で水の体をかすめただけで済んだ。

だがそれは避けようとしてそうなったのではない。

零の狙いがずれてそうなったのでもない。

余命が短い水は天倪の力によって大幅に体力を削られ、体が耐えられなくなりその場に倒れ込んだのだ。

その時に偶然零の攻撃をかすめる程度で済んだだけのこと。

真は水に飛びついた。

それと同時に、水の体に入り込んでいた天倪が抜け出し、空気と同化して消えた。

それが原因なのか無理をしていた水の体の中で、蓄積されているダメージが命を急激に削る。

「きゃぁぁあぁああああああああああああ!!!」

長い時間悲鳴がこだましていた。

しかし徐々に悲鳴は小さくなり、彼女は真と会話をすることなく息絶えた。


「宿主に問題があると、シンクロ率が悪いようね」

畠山はノートパソコンに採取した結果を入力していた。

「後は天然物を観察するのみ……何を魅せてくれるのかしら?」


「ありヱない……水はまだ後何日かは生きラれたんだ……」

ほのかに温もりが残る彼女を抱き寄せ涙を流す。

「僕が守る為に手に入レた力はどうすれば良イ? こノ力は何に向ケれば良い!?」

真は零に向かって叫んだ。


水の悲鳴で冷静になった零は真にチャンスを与えようとする。

それが真に対する答えだからだ。

「お前は人間だ、だから自分の頭で考えろ。まだ人間でいたいなら」

「自分の頭で――」


***


俺と水が出会ったのは1年ほど前だった。

サークルの仲間に連れられて行った海で俺は、泳ごうともせず朝から夕方までただひたすら水平線を眺めるばかりの彼女と出会った。

「ずっとここで、何してるの?」

彼女は虚ろな目で俺の質問に答えた。

「今生きている証を刻んでいるの……心に」

このときはまだ何を言っているのかなんて理解できなかった。

だが俺はこの不思議な雰囲気を醸し出す彼女に惹きつけられてしまっていた。


それからすぐに同じ大学の1個下の子だと友達の話で知ることになる。

そこからいろんな手段を使い付き合うことに成功したのは言うまでも無い。

だが付き合うのと同時に彼女の余命も知った。


彼女はまだ生きられたんだ。

残りの余命の間に彼女を治せる技術が生まれていたかもしれない。

だがそれを奪ったのは誰だ?

それは――――



畠山は銃を両手に1丁ずつ手にし、2人に銃口を向けた。

「動きが無いなら、観察の意味が無い……」


「あぁ、考えてわかった……過去を振り返ればいつでも彼女は俺の傍に居た……けれど今は居ない……」

思考を巡らせる真。

「過去を変えてやろうか? それとも未来を変えてやろうか?」

望みを叶えられるとでも言いたげに両手を広げる零。


その様子を伺っていた畠山は引き金に手を掛ける。

「変えるのは現在イマなのよ? お二人さん」

引き金を引くと同時に銃弾が一直線に突き進む。


「彼女を奪ったのはお前等人間だ!!」

真も動き出す。

「人としての存在を捨てたか――」

零は目をつぶり後ろへ飛んだ。


「俺は天陣の神使イ、遠山 零――お前に恨みは無いが、2人共々狩らせてもらう……!!」

零の目は見開かれ、左目に青白い魔方陣が灯された。

11-Light to burn in darkness- 終

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