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第百八十五話 試食


レストランと邸を行き来していて気がついた。

そう言えば、街がごった返していない、、、

「あれ?ムータンからはもう来ていないの?」

とユータがガンダに訊くと、


「ああ、こっちに来る者達は全員こっちに入った。最後の者達が少し落ち着いた頃だろう。」ガンダ

「なんかその割には居るようには思えないんだがなー、、、」ドーラ


「そうだな、でも新ムータン入りしているのは第二陣までで、最後の2万ぐらいかな?が、ダンジョン側で研修してて、残りが旅に出ている。」

「はい?」

「ほら、ドーラかユータが言ったろ?旅に出せばとっとと馴染むって」

あーあーあー、、、なんかそんなのあったなぁ、、


「で、ほんとに出したの?」

「本人達も望んでたぞ?新しい世界を見てみたいって」

ほんとかなぁ、、あのムータン人たちが?

のんびりした田舎の国の者達、というイメージがあるので、、そうアクティブだとは思えなかった。


「うちのザクなんか典型的だけど、ムータン人になんか雰囲気にているだろ?」ガンダ

「あ、、そうか、、わかった。日常と、そうじゃないとき、が別れているんだ」ドーラ

「おう、ムータン人の多くがそのようだ。逆にそうではない者のほうが、後々注意しておかなければならないかもな」

そうだな、、、


で、ガンダも言うこと自体忘れていたが、ドラゴニアの者が引率として付いていないグループも多くあった。

更に、半数近くは妻子持ち。また、親子で出ている者達もいた。

残されたばあさん、娘、孫は「じいちゃん、頑張ってこい」と。

娘の婿を送り出したじいさんは、娘に「生きて帰ってくればどんなになってたっていいんだよ」と。

大体そんな感じで諦められた。

旅立つ者達、見送る者達、双方の決心はかなりあると思えるものだった。


皆、ここではそうやってここの人間になろうとしなければならないんだ、と、感覚的に判ってるのだ。

ド田舎の国ムータンだからこそ、向こうの世界でも特にこっちの世界になんとなく近い状態だったからこそ、そういう生き物に必要な感覚はまだ備えられていたのだろう。


ーー


オーナーのレストランには毎日テイナとニヤも詰め、シェフとメニューを作った。今まで在るものから、シェフの経験や知識、テイナとニヤの経験と知識の魔法の技術、を絡め、新しいメニューを作っていく。

でも調理に魔法は使わない。魔法をそれほど使えない者が調理するかもしれないのだ。


なので、魔法は、保温プレート、保温ポット、保温バット、など道具に使う。

泡立て器の柄にちっさい陣を埋め込み、使う者が高速で泡をたてられる、とか。

粗い目の掬う網で、掬った物の水切り油切りをよくするように魔法が掛かった物とか。


中にいれるだけでよーく振るってくれて粉をこぼさない篩とか。

なんだかとてもこねやすいこね台とか。

そういう、普通の道具に「とても使いやすいように」魔法が掛かってる。


勿論大型冷蔵庫、冷凍庫は設置してあるし、ストレージを使った食材の劣化しない保管庫も作ってある。冷やし終えたもの、凍ったもの、などはストレージに移しておくと劣化しないのだ。


窯の上に配置してある煙突にも陣による魔法が掛かっており、風を起こさずに排気を良くする。

まな板は自己再生。傷が再生し、汚れがつきにくくなっている。

包丁はいじらないでいいと言われた。


それらを使ってみながら、シェフはドラゴニアの素材や調味料などをいろいろ試し、試作していく。

これには結構時間がかかった。

最低限の数のメニューができたのが、始めてから5日後。コースで3種類のみ。


それらでさえ、「まだ良くなる余地はあるな」とシェフは思っていたが、それは今後じっくり時間を掛けて少しづつよくしていく部分であった。


下ごしらえなどは、ここの厨房に入る厨房班の子たちが出来た。その慣れ具合、上手さにシェフはびっくりし、とても喜んだ。

「早いうちに幾つかの料理を任せられるようになりそうだ」と。


その翌日に開店することに決まった。

とりあえず店を開いてみないことには始まらないから。


テイナはとニヤは、まず各国離宮の方に声を掛けておく。

常駐している各国の王たちの側近達は、そのイスターニャの高級レストランの名を知っていて、驚いた。

「あそこの料理をここで食べられるのか?!」と。

でも、そのすぐその後に思い直す

「でも、ここドラゴニアの食事に慣れてしまっているので、どうだろう?」と、少しの危惧もあった。


ドラゴニアの料理(ユータの世界の料理がベース)は、異世界の料理で次元の違う美味さだ。

そこんとこどうなんだろう?と。


テイナは、そこらへんは食べに来てみてくださいと言っておく。

ニヤは「大丈夫ニャっつ!!」と言っている。

皆、余計そそられた。


しかも

「側近として、先に調査しなければ!」

という気持ちを各国の側近たちが持ったのは当然だろう。


ーー


「ユータ!レストラン行こうぜ!」ドーラ

「え?出来たの?開店??」

「いや、明日だかあさってだからしいが、試食させてくれるって」

「おーー!!」


午後の気持ちいい時間だ。むこうだったら3時ころ。

レストランに向かってダンジョン側の街の通りを歩いていると、ぞろぞろと満月銀月メンバー、各リーダー達が集まってくる。


レストランには席がきちんとできていた。

のりの効いたテーブルクロス。曇りなきスレンレスのフォークやナイフ(ユータの世界のもの)、ガラスのコップ(同)。


皆が席に付くと、執事のような服を着た厨房班の子たちが給仕をし始める。

知っている一部の者達を除けば、何が行われているのがよくわからない。こんな儀式めいた食事は初めてだから。


コップにガラスのボトルから水が注がれる。

目の前に置かれたからの皿に、切ってタレみたいので揉み込まれた野菜が盛られる。

ドーラとユータは給仕が次の席に行くと、それを食べ始めた。ホントは皆に盛られるのを待つんだろうけど、人数が多いからいいや、と。


ガンダ、ジオ、ザクは、あーあ、という顔をしながら、「ま、いいか」と食べ始める。


「・・・・・・・・」ドーラ、ユータ

すぐに食べ終えてしまった。


「こんなドレッシング食べたこと無いや、、野菜もこっちのだから美味しいんだけど、、」ユータ

「ああ、ダンマスもこれ食べたら喜ぶのに、、」ドーラ

「呼びました?」と、向こうのほうのテーブルから声

ダンマスも来ていた。


ドラゴニア始まって以来の、特別な日用レストランの第一皿だった。


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