内気な彼女とクリスマス
書いててほのぼのしました。
会社からの帰宅路で吐いた息が白くて、俺はベージュ色のコートを深く着込んで歩くスピードを早めた。
街路樹に飾られたイルミネーションに見向きもせず俺は急ぐ。
今日は一年に一度のクリスマス。
帰宅した俺は鞄を下駄箱の上に置いて一息ついた。
「ただいま〜」
部屋の奥からはグツグツと何かを煮込む音が聞こえた。
「ち、ちょっと待ってねっ⁉︎」
靴を脱ごうとした俺に、そう声がかかった。
奥からはバタバタと物音が聞こえて、しばらくすると彼女の赤音が慌てて駆けてきた。
「お、お帰り…」
はずがしそうに頬を染めた赤音は俺から視線を逸らしながら言う。
「ただいま。その服買ったの?」
「…うん」
小さく頷いた赤音は赤色のサンタ帽を被って、赤い服の上に純白のエプロンを付けていた。右の脚線美にベルトをつけて、顔を真っ赤にしてモジモジとする。
「に、似合ってる?」
不安そうに綺麗な瞳を潤ませた赤音がそう聞く。
「うん。赤音に似合ってて可愛いよ」
「っ⁉︎……う、嬉しい…っ」
赤く沸騰した顔に手を当てた赤音が声音を弾ませて喜ぶ。
「台所の方からヤバそうな音聞こえるけど大丈夫?」
「え?はわぁぁぁぁあっ⁉︎大変っ」
パタパタとスリッパの音を鳴らした赤音が慌てて奥の部屋に駆けていく。
その背中を追って、靴を脱いで下駄箱に直した俺も鞄を持って奥の部屋に進んだ。
暖かい空気が充満した部屋の隅で、コンロと睨めっこしていた赤音がほっと胸を撫で下ろした。
ギリギリ間に合ったのだろう。
「何作ってるんだ?」
「シチューだよ。もうちょっとでできるから着替えて待ってて」
「楽しみにしてるよ」
俺は自室のクローゼットにコートをかけて、タンスから部屋着を取り出してそれに着替える。
リビングの方に戻ると、コタツが設置された机の上に豪華なディナーが並んでいた。
「全部手作り?」
「うん…。よ、喜んで欲しくて」
モジモジと指を顔の前で遊ばせる赤音が目を逸らして言う。
「……か、可愛いかよ」
俺は顔が赤くなる事を感じながら、赤音に抱き付いた。
「ふぇっ⁉︎」
「嬉しいよ。ありがとう」
「わ、私も喜んでもらえて嬉しい…っ」
赤音が細い腕を俺の背中に回してギュッと力を込めた。
クリスマスイブに彼女がサンタのコスプレをして帰りを待っててくれた。それに加えて豪華なディナーも用意してくれた。
グラスにシャンパンを注いで、そのグラスの淵を当てて二人は乾杯した。
「「メリークリスマス」」