第9話 勇者は進化した武器を調べる
洞窟を出た俺は必要な素材だけを回収し、再び森を徘徊していた。
進化した二丁拳銃の性能をチェックすることにしたのである。
「Hey! Come on!」
二丁拳銃が甲高い声で挑発し、引き金の動きに合わせて銃撃する。
少し先にいた魔物は、頭部が砕け散って即死した。
俺は死体を漁って魔石を抉り出す。
その際、拳銃を褒めてやった。
「さすがだな。大した威力だ」
「Thanks,my master」
拳銃は嬉しそうに応じて、鼻歌まで奏で始めた。
かなり上機嫌らしい。
(ペットでも飼っているような気分だ)
進化した二丁拳銃は、何もかもが変貌していた。
特に喋れるようになったのが最たる特徴だ。
まるで生きているかのように会話できるし、もちろん受け答えも可能だった。
二種の拳銃で一つの人格を有しているという。
なぜ英語なのかは不明だ。
この世界に召喚された時点で、勇者はあらゆる言語が自動翻訳されるし、自在に喋れるようになっている。
だから拳銃の言葉がネイティブな英語に聞こえるのは謎だった。
(そういった特性なのか?)
判然としないが、幸いにも内容は伝わるので問題はない。
ちょっとした個性だと思っている。
(まさか意志疎通が取れる武器になるとはな……)
俺は二丁拳銃を見ながら考える。
逆行前は双剣を選定し、何段階も進化させた。
しかし、こんな変化はしなかった。
最初期の時期に、大量の魔物を倒し続けたのが影響しているのかもしれない。
本来ならまだ王城にいて、修行どころかこの世界について学んでいる頃だ。
(生きている武具があるのは知っていたが、まさかその使い手になるとは……)
俺は見つけた魔物を射殺しながら思う。
拳銃は絶好調だった。
ほとんど一撃必殺で葬っている。
喋る機能に注目しがちだが、進化した二丁拳銃のスペックは高い。
まず根本の構造が変更されている。
単発式からリボルバー式になったことで、六連射まで可能になったのだ。
ただし、フレームが固定されており、弾倉を振り出すことはできない。
喋る口に一発ずつ食わせて装填する方式だ。
基本的にはこれで撃てるし、火薬草を食わせると威力が向上することが判明していた。
拳銃も美味そうに齧っていた。
さらに魔石を食べさせると、性能が強化される。
その残滓で一時的にエネルギー弾を撃てるようになる。
全体的な性能向上が著しかった。
まさか一度の進化でここまで強くなるとは予想外だ。
(今の状態なら、熊なんて瞬殺だろうな)
銃はやはり選定するだけの価値があった。
これまでは無理やり使っていたが、今後は真っ当な武器として活躍してくれるだろう。
いずれ双剣使いだった俺をも凌駕してくれるはずだ。
俺は拳銃を撫でる。
「これからよろしくな」
「「Yes Sir!」」
左右の拳銃は、声を揃えて応じるのであった。