第85話 勇者は使命を担い続ける
最終話です。
昨晩の更新分を未読の方はご注意ください。
着地した俺は、森の中央分へと進む。
そこは半径二十メートルほどの木々が枯れ果てていた。
大地がすり鉢状になり、真ん中には紫色の結晶が浮遊する。
それは夥しい質量の瘴気を発していた。
綻びかけた封印術は今にも弾けそうである。
これが魔王だった。
現在は封印されているが、先ほど倒した魔族達が力を注いで復活させようとしていたのだ。
もう少し発見が遅れていたら、本来の歴史通りに蘇っていただろう。
「とにかく、これで終わりだ」
俺は両手に持ったトゥワイスを回転させる。
進化を繰り返した二丁拳銃の相棒は、オートマチックとリボルバーが合体したような形状からさらに発展していた。
三種類の銃口は連射力と上げたり用途の異なる弾を撃ったりと自由自在だ。
さらに魔物を喰わせると一時的にパワーアップして、その魔物の特性を活かした銃撃ができるようになる。
日々、モアナが調整してくれており、性能は常に絶好調だった。
メンテナンスを受けるたびに強化されている節さえある。
射程や装弾数も劇的に伸びているため、どの間合いでも十全なスペックを発揮することができる。
もちろん双剣も健在なので近接戦闘も上々だ。
俺は進化で追加された機能である封印弾を使用する。
トゥワイスから放たれた数発の弾は、魔王の結晶の周りを拘束で回転し始めた。
その軌跡が魔力の鎖を形成し、結晶に食い込んで固定する。
漏出していた瘴気は、鎖に吸収されていった。
「よし」
これで封印は完了だ。
俺が死なない限りは解けることはない。
逆行してまで望んだリベンジが遠のくことになるが、それでいい。
何よりも平和が一番である。
(それに、再戦の可能性はあるしな)
俺が寿命で死んだ時に封印が解けても困る。
いつか魔王に勝てると確信した段階で、自発的に解除すると決めていた。
もはや双剣時代の全盛期を凌駕する実力にまで至ったが、まだ魔王に勝利できるか分からない。
ひとまず急を要する事態ではなくなったので、しっかりと鍛練して各地に潜む魔族を狩りながら、魔王を超える力を身に付けようと思う。
(冒険はまだ終わりじゃない。むしろここからなんだ)
リリーとモアナが駆け寄ってくる。
二人の後ろには勇者達もいた。
後方で戦ってくれていたのは知っていたが、彼らもますます頼もしくなっている。
着実に成長を重ねて、逆行前と違って死亡することなく活躍していた。
俺は彼らに片手を上げて応じながら考える。
魔王の封印は一区切りに過ぎない。
これからも冒険は続く。
いつか訪れる決戦の時まで、俺は勇者であり続けるのだ。
異世界の空を見上げて、俺は淡い微笑みを浮かべるのであった。
これにて完結です。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
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