第82話 勇者は功績を譲る
俺はガルナディアスの死体に近付くと、手持ちの道具で着火した。
その死体を燃やしていく。
魔族の死体は悪用される恐れがあった。
余計なトラブルに繋がりかねないので、灰にしたら然るべき手順で処理しなければならない。
俺はその旨を三人の勇者に説明した。
その後、騒然とする城内の声を聞きながら皆に告げる。
「人々に状況を説明しよう。どこもパニックになっているはずだ」
王都内には魔族が出現したと知れ渡った頃だろう。
人々が避難している最中である。
しかし、危機はひとまず去った。
それを伝えなければいけない。
俺は続けて三人の勇者に依頼する。
「君達が代わりに言い広めてほしい。俺は国から信頼されていない。魔族討伐の手柄を奪っても構わない」
「そ、そんなことは……」
「俺としても好都合なんだ。三人の勇者はなるべく英雄視された方がいい。後々の展開できっと役に立つ」
今から俺がヒーローになるより、王国の方針に従う勇者の株が上がる方が良い。
彼らには公認の勇者として頑張ってもらいたい。
時にはその立場を利用して活躍してもらわねばならないのだ。
俺は召喚当初から自由に行動している。
おかげでハイペースで強くなったが、権力的な面は皆無であった。
別に名声は求めていないのでどうでもいいものの、状況によっては必要になってくる。
そういった場合に三人の勇者がいると助かる。
俺に足りない部分をカバーしてくれる役割になってもらうのだ。
打算ありきの功績譲りであることを説明すると、三人の勇者は納得してくれた。
ナズナ以外の二人はほとんど初対面だが、俺の強さを目の当たりにしたせいか、やけに尊敬の眼差しを向けてくる。
まあ、それはどうもでいい。
このまま俺が残っているとややこしい状況になるので、リリーとモアナを連れて城を脱出した。
兵士達に見つからないように移動し、人目に付かないエリアに潜伏する。
しばらくはここで生活して、王都の様子を見守るつもりだ。
城ではそれなりの損害が出たが、街はほぼ無傷である。
住民達の生活もすぐに落ち着くはずだろう。
そうなったら勇者達の予定を改めて確認して、国を出ようと思う。
今回の一件で、彼らは成長した。
俺が不在でも望ましい形に進んでいくだろう。
あまり干渉せず、自分のことに注力するつもりだ。
こうして魔族との死闘は勝利で終わったのであった。




