第81話 勇者は死闘を制する
ガルナディアスは白目を剥いて硬直した。
胸に開いた風穴から血肉が垂れ落ちる。
その双眸が俺を睨み、口から血反吐を噴く。
「ゴァッ……」
ガルナディアスが前のめりに傾いて崩れる。
全身から魔力と瘴気が発散していった。
俺はそれらを取り込んでいく。
瘴気については濃度に気を付けながら吸収した。
魔族のエネルギーは強力である。
扱いには気を付けねばならないが、それさえ心得ておけば頼もしい武器になる。
倒れたガルナディアスを見たナズナは、息を切らしながら言葉を洩らす。
「はぁはぁ、倒せた……?」
「いや、まだ生きている」
俺はトゥワイスの銃口をガルナディアスの頭部に向けて連射する。
跳ね上がった獣の爪が攻撃を仕掛けようとしていたが、頭部が砕け散ったことで脱力した。
魔将軍ガルナディアスは今度こそ絶命したのだ。
痙攣しながらも、命の残滓を放出させていく。
俺は凍り付く三人の勇者達に説明する。
「魔族の生命力は高い。人間と同じ基準で考えると、不意を突かれて反撃される。必ず頭部と心臓を破壊するんだ」
「は、はい……」
勇者達は恐る恐る頷く。
まさか生きているとは思わなかったのだろう。
完全に虚を突かれていた。
もし俺が不在だったら、少なくともナズナは殺されていた。
ガルナディアスの道連れとなっていたに違いない。
一方、モアナは万歳をして歓喜していた。
「やった! 魔族討伐だね!」
「ああ、皆が協力してくれたおかげだ」
俺はそう応えながら仲間達の様子を確認する。
モアナは元気だ。
俺が処置したとは言え、瘴気の炎を食らったはずだというのに。
きっとドワーフ族のタフネスと、本人の精神力で耐えたのだろう。
ただ、戦闘直後で気分が高まり、疲労に鈍くなっているだけだと思うので、あとでしっかり休んでもらわないといけない。
対照的に静かなリリーは短剣を下ろして息を整えていた。
「大丈夫か?」
「ええ、問題ありません。少し魔力を消費しただけです」
リリーはそう言って回復薬を飲む。
彼女も大きな怪我はない。
無理な攻撃を仕掛けていないからだ。
中距離での氷魔術で、援護に徹してくれていた。
やはり戦い慣れている。
三人の勇者も魔力消費くらいで、大きな怪我はしていなかった。
序盤で多少の戦死者は出てしまったものの、このレベルの魔族が相手なら間違いなく少ない部類だろう。
もちろん誰も死なないのが一番だが、理想ばかり言っていても意味がない。
今はこの結果を噛み締めて、喜ぶべきだろう。




