第75話 勇者は攻め立てる
真上に放った魔弾が、降り注ぐ瘴気の雨と衝突する。
互いの力が干渉して破裂音が鳴り響いて霧散した。
散り散りになった力の残滓を俺は吸収していく。
体内に魔力と瘴気が充填した。
これでもう少し戦闘時間を長引かせることができる。
瘴気の雨をそのまま取り込むのは有害だが、銃撃で破壊した分は薄まっている。
注意すれば取り込むことも可能だった。
逆行前の双剣使いだった頃は難しかった。
剣の間合いだと、どうしても薄める前に瘴気に蝕まれるためだ。
安全に取り込むことができるのは、銃という遠距離攻撃ができるからである。
(ガルナディアスは魔術師だ。近距離で戦いながら、止めに銃撃を食らわせてやる)
そう決めた俺は、尖塔に立つガルナディアスへと迫る。
飛来する魔術を躱し、或いは撃ち落としながら有利な間合いを求めた。
「くそ、厄介な勇者だ」
ガルナディアスが悪態を洩らす。
奴にとって俺は相性が良くない。
いくらスペックで優勢とは言え、真っ向から戦うのは不味いと理解している。
ガルナディアスは高位の魔族だ。
残忍で狡猾な性格で、己の力量も正しく把握している。
同時に俺の能力も理解しつつあった。
スペック勝負では負けていないと確信しながらも、こちらのペースに乗せられると死ぬと察している。
そう、互いに紙一重での戦いなのだ。
優勢な部分を持ち合いながらも、些細なミスで死に至る。
俺達はそういう状況に身を置いていた。
(形勢が不利になって逃げられると面倒だ。ここで一気に片を付ける)
俺は空中を蹴り進む。
瘴気の雷撃を受け流しながらガルナディアスの羽を切断した。
反撃の術を弾丸で凌ぎながら距離を取り、そこから再び突進していく。
再生し始めた右の羽を根元から突き刺し、そのまま抉り取った。
「グオオ、アアアアアアッ!?」
これにはさすがのガルナディアスも悶絶する。
しかし、奴の動きが止まることはない。
力任せに叩き付けられた剛腕を避けて、俺はさらに銃撃を加えた。
これは防御魔術に阻まれたが、事前に予測していたことだ。
俺は連続での銃撃で魔術を穿つ。
その僅かな隙間に片腕を突き込み、双剣の切っ先でガルナディアスの片目を捉えたのであった。




