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魔弾の双銃士 ~過去に戻った勇者はジョブチェンジで最強の力を手にする~  作者: 結城 からく


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第61話 勇者は暗躍する

 くぐもった銃声が鳴って、商人がびくりと身体を跳ねさせた。


「うっ!?」


 商人が突き飛ばされたように倒れかける。

 俺はすぐさまその身体を引っ張って受け止めた。

 路地裏まで引っ張って、他人から見えないようにその場で寝かせる。


 俺は商人の身体を確認する。

 先ほどまであった歪みが消失していた

 トゥワイスの弾丸が上手く破壊したのだ。


 ゴーグルをずらして裸眼で確かめると、商人は気絶している。

 腹にはコインくらいの穴が開いて出血していた。

 弾が貫通した痕である。


 限界まで威力を落とし、臓器を避ける軌道で撃ったものの、このまま放っておくのは不味い。

 とりあえず俺は手持ちの回復薬をかけた。

 さらに傷口に布を詰め込んで出血を止めようとする。

 リリーも屋上から降りて応急処置を手伝ってくれた。


(かなり手荒になったが、こればかりはどうしようもないな)


 悠長にやっていると怪物になる恐れがあったのだから方法も選んでいられない。

 商人の傷を縫合し、ひとまず止血まで施したところで俺達は手を止めた。

 これで命に別状はないだろう。

 いずれ目を覚ますはずだ。


 いきなり撃った迷惑料として、商人の手に金を握らせておく。

 治療費に使ってもお釣りの方が多いくらいだ。

 後になって恨まれることはないだろうし、そもそも俺がやったと認識すらしていないだろう。


 露店に戻った俺は、そっと周りを覗き込む。

 誰もが行き交うばかりで、撃たれた商人に気付いた者はいない様子だった。


 俺はちょうど通りかかったモアナにアイコンタクトをして、撤退の合図を出す。

 それから俺達も慌てず騒がず路地の奥へと入り、そこから少し離れた場所でモアナと合流した。


「成功したね!」


「運が良かったな。特に問題を起こさずにクリアできた」


 練習無しの一発勝負で、さらに人命が関わっていた。

 緊張しないと言えば嘘になるが、そのプレッシャーに負けないだけの精神力は持っている。

 もちろん成功したことに安堵していた。


 逆行前から換算すると、勇者としての経歴はかなり長い。

 多くの人々を救ってきたが、その一方で救えなかった命も少なくない。

 華々しい英雄譚の裏には、数々の悲劇と挫折があるのだ。


 しかも最終的には魔王に敗北までしている。

 決して誇れるものではない。

 それを許容できなかったからこそ、俺は過去に舞い戻ってきた。

 今度こそ、一つでも多くの命を救いたいと考えている。


「もう少し都市内を巡りますか?」


「ああ、念のために確かめておくべきだろう」


 リリーの意見に賛成する。

 怪物化の種はまだ紛れているかもしれない。

 完璧な根絶は難しいだろうが、努力を怠るべきではなかった。

 一つでも減らすことで犠牲は抑えられるのだ。

 その後も俺達は、一帯を散策して種を飲んだ人間を処置していくのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >逆行前から換算すると、勇者としての経歴はかなり長い。 >多くの人々を救ってきたが、その一方で救えなかった命も少なくない。 >華々しい英雄譚の裏には、数々の悲劇と挫折があるのだ。 >しかも…
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