第57話 勇者は新たな装備を手に入れる
婦人と協力関係を築いた俺は、ゴーグルを受け取って部屋を立ち去る。
相手はこの都市の支配者だ。
常に多忙で、本来なら俺との面会時間などないような人物である。
あまり無駄話に付き合わせるのも申し訳ないので、速やかに退室させてもらった。
行き道と同じく案内されたその先には、豪華な客室があった。
そこにはリリーとモアナが待っていた。
「おかえり。どうだった?」
「無事に手に入れたよ。こいつだ」
俺はゴーグルを見せる。
装飾に乏しい砂色の外観はかなり地味である。
そこらのガラクタと同じようなビジュアルだった。
しかし、実際は唯一無二に等しい性能を有する。
右目のレンズの側面にダイヤルのようなパーツが付いていた。
これで精度を調節することができる。
魔視のゴーグルは怪物化の種だけを探知できるわけではない。
ダイヤルごとに設定されている物体や成分を視認できるようになっていた。
使い方次第ではかなりの汎用性を誇る代物だ。
モアナはゴーグルをじっと確かめて感想を呟く。
「なんだか新品みたいに綺麗だね」
「古代の魔術で経年劣化を防いでいるんだ。見た目以上の耐久性がある」
これも現代では再現不可能な技術だ。
大昔の魔道具が残っているのはそのためであった。
どの時期に技術が途絶えたのかは不明らしい。
とにかく、世界規模の戦争で文明が大きく崩れたのだと聞いたことがある。
大変な出来事があったのだと思うが、決して他人事ではない。
現代では魔王が蘇ろうとしている。
勇者が敗北すれば、再び文明が途絶える可能性が高い。
だからこそ気を抜いていられなかった。
こうして魔視のゴーグルを入手したのだ。
怪物化の種を特定できるようになり、つまり魔族の陰謀を未然に防ぐことが可能になった。
加えて俺には未来の知識もある。
それらを駆使して、起こるはずだった惨劇を食い止めていくつもりだった。
「これは着けるだけで効果があるのですか?」
「ああ、それでいい。魔力消費がないのが地味に嬉しいな」
俺は二人の前でゴーグルを装着し、付属のベルトを締めて頭部に固定する。
側部のダイヤルをゆっくりと回しながら視界を調整してみた。
ゴーグル越しの世界はモノクロになっていた。
目の前の二人がシルエットのような形で見えるようになる。
彼女達の体内では白い光が輝いていた。
これは魂だ。
普通なら視認できない代物だが、ゴーグルならその常識を無視できる。
たとえば不死者なんかと戦うことになった時、このダイヤルを使うと便利だろう。
不死性の高い相手の魂をピンポイントで攻撃できるからだ。
セオリーである聖魔術を用いらずとも勝てる。
他にもゴーグルには様々なダイヤル機能があった。
その中の一つが、怪物化の種というわけだ。
問題なく動いているようなので、今後も役に立ってくれそうである。




