第51話 勇者は竜に対抗する
宝石竜が激昂した。
咆哮と同時に、レーザーのような極細のブレスを放ってくる。
威力を犠牲にして溜めによる隙を減らしたらしい。
それでも人間相手なら一撃必殺のパワーを誇るのだからさすがと言えよう。
(面白い工夫だが、俺には通用しない)
トゥワイスの魔弾を当ててブレスの軌道を捻じ曲げる。
威力ダウンの影響で先ほどよりもそらしやすかった。
俺は空中で姿勢を制御し、宝石竜の顔面に左右の銃口を押し当てて発砲する。
宝石竜の首が大きく仰け反った。
鮮血が迸るも、血走った片目は未だに俺を捉えていた。
額にめり込んだ弾は、貫通まで至らず頭部に陥没して止まっている。
(こっちも威力が足りなかったか)
舌打ちした直後、宝石竜が俺に噛み付いてきた。
上下の牙が挟み込んでくるのに対し、トゥワイスの双剣で対抗する。
紙一重で食い止めるも、そのまま岩壁に叩き付けられた。
「ぐ……ッ」
衝撃で吐血する。
しかし、気を抜いている暇はない。
宝石竜は今も眼前におり、俺を噛み殺そうとしていた。
竜の牙は凄まじい破壊力を持つ。
トゥワイスは選定した武器なので耐えているが、人体どころか魔術金属でも一瞬で噛み砕ける。
身体に食い付かれた時点で終わりだった。
俺は両腕に魔力を流し込み、迫る牙を押し留める。
それでも徐々に接近を許していた。
パワー比べで押し負けているのだ。
俺も身体強化には自信があるが、単純にスペックの差が大きすぎる。
膨大な魔力と強靭な肉体を持つ竜種は、それだけで天災に匹敵する力を発揮していた。
「ぐお、おおおおおおおっ!」
俺は懸命に力を込める。
竜の顔は、もうすぐそばにあった。
殺意に満ちた目は捕食を確信している。
綺麗に並んだ牙が俺に触れようとしたその瞬間、俺は笑みを湛えた。
「――騙されやがったな、クソトカゲ」
俺は双剣の握り方を変える。
宝石竜から加えられる力の向きを上にずらすと、噛み付き攻撃を受け流した。
その長い鼻先が岩壁に衝突するのを見つつ、俺は宝石竜の顎下に銃口を当てる。
さらにトゥワイスを瘴気モードに切り替えた。
「食らいやがれ」
そう告げると同時に発砲する。
漆黒の弾丸は宝石竜の顎下を貫くと、口内で拡散した。
暴走した瘴気のエネルギーは、竜の頭部を引き裂きながら黒い光を辺りに散らした。




