第44話 勇者は新たな仲間の実力を見る
移動を始めて数時間。
俺は怪しげな魔力反応を感知した。
それは近くの林からこちらに接近している。
俺は足を止めると、リリーとモアナに警告した。
「魔物が来るぞ。注意しろ」
「任せて! あたしが倒すよっ!」
張り切るモアナが、一目散に林へと向かっていく。
どうやら彼女も感知できていたらしい。
おそらく殺気か何かを感じ取ったのだろう。
林から現れたのは三匹のゴブリンだった。
腰巻だけでなく、鎧や剣を所持している。
おそらく略奪に慣れているのだ。
「よーし、行くぞー!」
モアナは背中の荷物を置くと、肩を回しながら加速した。
ゴブリンに臆せず、勇ましい動きで接近していく。
それを見たリリーが心配する。
「大丈夫でしょうか……」
「きっと問題ない」
俺は彼女に応えながら戦いを見守る。
いざという時は助けに入れるように注意している。
ここはモアナの実力を確かめておこうと思う。
真正面から突っ込むモアナに対し、ゴブリンの一匹が棍棒で殴りかかった。
するとモアナはその場で立ち止まり、全身の魔力を循環させる。
彼女の肉体が仄かに発光していた。
モアナは交差させた腕で殴打をガードする。
棍棒が砕け散ると同時に、相手のゴブリンを殴り飛ばしてしまった。
派手に宙を舞ったゴブリンは地面に落ちて転がる。
手足が痙攣させたまま起き上がらない。
一撃で瀕死に陥ったようだ。
仲間の惨状を前に、残る二匹のゴブリンは怯えていた。
後ずさって撤退の動きを見せる。
そこにモアナが容赦なく突貫していった。
「まだまだ行くよッ!」
凄まじい勢いでタックルをかますと、ゴブリン達を豪快に弾き飛ばした。
残る二匹はやはり瀕死になる。
増援がやってくる気配もなく、戦闘はあっさりと終了した。
「うーん、物足りないなぁ……」
モアナはどこかで不満そうに戻ってくる。
相手が弱すぎて思ったような戦いができなかったようだ。
その姿に俺は頼もしさを覚える。
(この時期でも、パワフルな戦法は使えるようだな)
彼女は戦いの基礎を心得ている。
ドワーフ族特有の怪力に身体強化を乗せることで、驚異的な破壊力を生み出せるのだ。
ゴブリンどころか下級魔族とも渡り合えるパワーだった。
もっとも、俺の知るモアナより若く、経験も浅い。
まだ発展途上と言えよう。
それでも戦える鍛冶師という存在は貴重だった。
今後の活躍にも期待しようと思う。




