第39話 勇者は愛銃の進化を目にする
俺の両手が握るのは、やはり二丁拳銃だった。
進化前は白と黒のリボルバーだったが、現在はよく分からない形状になっている。
銃口が上下に二つある。
下部の銃身はリボルバー特有の回転弾倉を備えていた。
上部にはそれが付いていない。
魔力の経路を見るに、グリップ内部に設けられた弾倉に繋がっているようだ。
細かい仕組みはまだ不明だが、この銃は二種類の弾倉に弾を装填して、対応する銃口から放てるらしい。
つまり進化したトゥワイスはリボルバー式でありセミオート式でもある。
どちらの長所も取った形だった。
俺は試しに構えながらトゥワイスに尋ねる。
「調子はどうだ」
「I'm fine,thank you」
中学校の英語みたいな答えが返ってきたが、どうやら問題ないらしい。
むしろ声がウキウキとしている。
絶好調のようだ。
(色々と検証したいが、まずは脱出しなくては)
俺は部屋に開いた穴から屋外へ出ると、そのまま身体強化を駆使して敷地の外に向かう。
気配を消して路地に潜み、追っ手がいないことを確かめてから息を吐く。
どういった事情であれ、俺は屋敷に乗り込んで領主を殺した犯罪者だ。
領主の弟を救い出すのが目的で、兄である領主が死んだ。
自ずと弟に権力が移るはずである。
そうならなければ再び乗り込むことになるが、きっと問題ないのではないか。
ネリアの人々は現状の理不尽な政策には懲りている。
独裁者がいなくなった現状で、馬鹿な真似はしないと思う。
しばらくそこで待っているとリリーがやってきた。
彼女は俺のそばに立ちながら報告してくる。
「領主の弟を解放し、屋敷内の信頼できる者に指示をしました。これで悪政が繰り返されることはないかと」
「さすがだ」
リリーはその道のプロだ。
懸念事項や不安材料を徹底的に潰して来てくれたらしい。
領主との戦闘に加われなかった分、裏方として活躍すべきだと思ったのだろう。
彼女の仕事ぶりには感心する他ない。
「今日はこのまま夜まで身を隠そう。ほとぼりが冷めてから鍛冶屋に向かう
「そうですね、分かりました」
俺達は路地を進みながら会話する。
不測の事態は起きたが、ひとまず問題は解決した。
しかし、すべてが終わったわけではない。
領主に種を送った者がいる。
どこまで癒着しているのか調べねばならない。
他の権力者も魔族と接触している可能性があった。
できるだけ洗い出して、始末していくいかない。




