表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔弾の双銃士 ~過去に戻った勇者はジョブチェンジで最強の力を手にする~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/85

第33話 勇者は立ち上がる

 翌朝、俺とリリーはモアナ親子のもとへと赴いた。

 僅かにアップグレードされたトゥワイスを受け取ると、今度は中央部の領主の屋敷へ向かう。


 目的は領主の身柄の拘束だ。

 屋敷から拉致して、その間に領主の弟と接触する予定だった。


 領主の弟は頭脳明晰な人格者だったらしい。

 リリーの調査によれば、現在は地下に監禁されているという。

 衰弱して今にも死にそうな状態だそうだ。


 先代領主の死後、彼は突如としてそのような扱いに陥れられた。

 兄である現領主が暴走したのだ。

 政治的に有能な弟を封じ込めて、自らが実権を握りたかったのだろう。


 俺としては、良き統治者となりそうな弟を解放して、新たな領主に据え置くつもりだった。

 それによってネリアの腐敗を解消する。

 多少なりとも混乱が生じるだろうが、今よりはマシになるはずだ。


 本当は領主の暗殺が最も手っ取り早い。

 わざわざ拉致する必要もないし、諸悪の根源を発つので後の憂いも無くなる。


 しかし、決して褒められたやり方ではなかった。

 別に罪を被ることに躊躇いはないが、なんでもかんでも殺害で解決するのは違う。


 俺は勇者だ。

 世界を救うために行動している。

 目的意識を失えば、たちまち殺人者になりかねない。

 その辺りを忘れないようにしなければ。


 今回の場合、悪政を働く領主を断罪し、街を守るという大義名分がある。

 住民だって現状に不満を抱いているだろう。

 領主が変わることに賛成する者は多いはずだ。

 だから印象にさえ気を付ければ、良い結末に導くことができる。


(己の立場に慢心せず、ただ最適解を考えるんだ。かつての失敗を活かせ)


 俺とリリーは移動中に喋ることはない。

 既に打ち合わせは済んでいる。

 余計なことは話さず、ただ迅速に移動することだけに専念していた。

 互いに意識を研ぎ澄ませて、どんな相手にも対処できるように集中している。


 やがて領主の屋敷に到着した。

 広い敷地の入口となる門には、見張りの兵士がいる。

 まだこちらに注目していないが、近付けば誰何を受けることになるだろう。


「ここは俺が行こう」


「お願いします」


 そう言いながらリリーの気配が薄くなる。

 気を抜くと居場所が分からなくなりそうだった。


 隠密と不意打ちは彼女の本領である。

 今回は俺を陽動に上手く立ち回るつもりらしい。


 リリーの意図を察した俺は、正面から堂々と屋敷に近付いていく。

 こちらに気付いた兵士達が露骨に警戒する。


 ところが、彼らはいきなり白目を剥いて気絶してしまった。

 泡を噴いて起き上がることはない。


 彼らの後ろにはリリーが立っていた。

 兵士達の隙を突いて奇襲したのだ。

 そして体術で意識を奪った。


 いくら不意打ちとはいえ、二人をほぼ同時に無力化するのは至難の業である。

 リリーの技量は達人の域にあった。


(一応、戦うつもりだったんだけどな)


 俺はさりげなく触れていたトゥワイスから手を離す。

 リリーの開けた門を抜けて、領主の私有地に侵入するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] (横レス御容赦) >ただし、殺害することでしか解決しない問題もある。 それもまた真理。 誰もが石を投げる事を躊躇う、真の意味での『勇者』あるいは『聖人』『君子』に成るつもりでなければ、…
[良い点] >俺は勇者だ。 >世界を救うために行動している。 >目的意識を失えば、たちまち殺人者になりかねない。 >その辺りを忘れないようにしなければ。 これこそ、真の意味での勇者か否かを峻別する行…
[一言] >なんでもかんでも殺害で解決するのは違う ただし、殺害することでしか解決しない問題もある。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ