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魔弾の双銃士 ~過去に戻った勇者はジョブチェンジで最強の力を手にする~  作者: 結城 からく


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第24話 勇者は勘ぐられる

 俺達は街の通りを歩いていく。

 おそらく最も活気があるはずのエリアだが、通行人は疎らだった。

 閉じている店も多い。


 俺は訝しみながら進んでいく。


(やけに寂れているな)


 記憶の中のネリアはもっとにぎやかなはずだ。

 重税のせいで貧しい面もあったが、人の往来が活発だった印象がある。


 行き交う人間は商人の割合が大きい。

 武具を仕入れるのが目的だろう。

 逆に個人の冒険者が少ないのは、許可証による余計な出費を嫌うためか。

 この街には、他にも様々なルールが敷かれている。

 活動のしづらさは感じるのは当然だろう。


「許可証による徴収は失敗だな」


「そうですね。きっとすぐに制度を改めるでしょう」


 リリーは冷ややかに通りを観察しながら評する。

 彼女の言う通りだ。

 領主は金策に執心している。

 失敗したとなれば、すぐさま改定に踏み切るはずだ。


(俺がこの制度を知らないのも納得だ)


 年単位で持続できず、すぐに廃れた制度なのだろう。

 人の出入りが減少しては本末転倒である。

 経済的な打撃ばかりが残ってしまう。

 今後、許可証の反省を踏まえて新たな制度を発足していくに違いない。


 ネリアという街はその繰り返しで運営されているのだ。

 普通なら破綻しそうなものだが、地理的条件に恵まれたこの地が完全に潰れることはない。


(少なくとも、魔族襲来まではな)


 これから徐々に戦争が増えていく。

 人間同士の小競り合いが少なくなり、魔族との殺し合いに移行するのだ。

 魔王の復活を経てさらに激化し、いくつもの街や村、国が滅びる。


 そんな中、勇者は奔走する。

 世界の破壊を食い止めるために戦うのだ。


 移動中、リリーが俺に質問する。


「武器の強化はどこに任せるつもりですか? 鍛冶師ギルドに行けば、候補を絞るのも楽かと思いますが」


「実はもう決めてあるんだ。そう遠くないはずだ」


「……やけに詳しいですね。ネリアを行き先に選んだのもそうですが、この世界に召喚されたばかりとは思えません」


 足を止めたリリーが疑いの眼差しを向けてきた。

 彼女には逆行に関することは話していない。

 この口ぶりからして、俺の素性を怪しんでいるようだ。


(しまったな)


 似た世界を救った勇者だと説明していたが、信じ切ってはいなかったのだろう。

 俺は口を滑らせたことを自覚しつつ、それを顔には出さずに答える。


「王都で小耳に挟んだんだ。腕の良い鍛冶師がいるってな」


「なるほど、そうでしたか」


 リリーはあっさりと引き下がったが、その顔はまだ疑っている様子だった。

 いくら誤魔化しても無駄だろう。


(このまま流してはいけないな)


 そう考えた俺はリリーに告げる。


「俺の目的は魔王討伐だけだ。伝えられない事情はあるが、何も企んでないから安心してくれ」


「……そんな風に言われてしまうと、詮索もできませんね」


 リリーは苦笑する。

 少し緊張を解いた表情だった。

 彼女は前を向きながら言葉を続ける。


「あなたにはあなたの立場があるのでしょう。もし話せる状況になったら教えてください」


「そうさせてもらうよ」


 俺が素直に応じると、リリーは満足そうに頷いた。

 彼女は察しが良く、理解がある。

 秘密を抱えていることに気付きながらも、必要以上には踏み込んでこない。

 ひとえに俺への信頼だろう。


(いずれ打ち明けてもいいかもしれない)


 リリーは、勇者と運命を共にすると決意している。

 そのままどこかへ消える選択だってできたのに、魔王討伐の旅に同行していた。


 彼女は大切な仲間になりつつあった。

 俺だけが素性を隠し続けるのは不義理だろう。

 いつか逆行について話すことも検討しておこうと思う。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >彼女は大切な仲間になりつつあった。 >俺だけが素性を隠し続けるのは不義理だろう。 >いつか逆行について話すことも検討しておこうと思う。 おお、なんか良い方向に進みそうな予感。 [一言]…
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