第23話 勇者は搾取される
俺達はネリアに近付いていく。
門前には行列ができていた。
そのそばに長机が並んでおり、兵士達から何らかの説明を受けている者や、金銭のやり取りをしている様子が見える。
(何だ?)
見慣れない光景だったが、とりあえず行列に並ぶ。
俺達の順番はそれほど待たずにやってきた。
待ち構えていた兵士が厳めしい顔で話しかけてくる。
「止まれ。滞在許可証は持っているか」
「持っていない。何だそれは?」
俺が尋ねると、兵士が慣れた動きで数枚の用紙を取り出した。
それぞれ異なる色と刻印が為されている。
どうやらそれが許可証らしい。
「許可証には階級がある。階級ごとに街での行動範囲や利用できる店舗が決まっている。価格も異なるから自由に選べ」
「つまり許可証がなければ街へ入れないのか」
「無論だ。逆らうのなら、罪人として領主に引き渡すことになる」
周りの兵士がこちらを睨んでいた。
殺気と言えるほどではないが、かなり剣呑な感じだ。
武器も携帯している。
俺達の答え次第で容赦なく仕掛けてくるつもりらしい。
説明役の兵士が詰め寄ってくる。
「さあ、どうする」
「ちゃんと支払うさ。許可証の階級について教えてくれ」
「よかろう。付いてこい」
兵士が俺とリリーを長机に案内した。
そこで許可証の色ごとの違いについて説明を受ける。
さらにネリアに入る際の注意事項等も知らされた。
かなり詳細なルールがあり、旅人が自由に動き回れないようになっているようだ。
(俺の訪れた時期にはなかった制度だ)
逆行前にネリアを訪れたのは、確か召喚から二年後あたりだ。
その時に許可証なんて存在しなかった。
どこかで廃止されたようだが、現在はこうして定着しているらしい。
兵士が離れたのを見計らってリリーが横から囁いてくる。
「ネリアでは領主の主導で実験的な制度が実施されます。これもその一環でしょう」
許可証で街の収益を増やすのが目的だろう。
鍛冶師のレベルが高いネリアはそれでも来訪する者が絶えない。
地形的にも豊富な資源に恵まれている。
そういったアドバンテージを利用して、領主はどうにか懐を温めようとしているようだ。
横暴が過ぎると問題になりそうだが、おそらく収益の一部を国王へと献上することで逃れている。
他の貴族とも水面下で繋がっていると聞いたことがあった。
上手く立ち回っているに違いない。
典型的な悪党だが、やり口は狡猾だ。
貴族としては何ら間違っていないだろう。
(この街は駄目だ。さっさと出て行こう)
嫌な予感はさらに膨らんでいた。
この時代の領主はかなり強欲である。
魔族の襲来で破滅するまで、ひたすら権力を振りかざしていたはずだった。
言うなれば現在が最盛期である。
やはり関わるべきではない。
俺達は数種の許可証の中から中間くらいのグレードを購入した。
そして、数日の滞在権利を得て街に入るのであった。




