第21話 勇者は王都を発つ
王城を出た俺達は来た道を戻っていく。
騎士達は追ってこない。
見失うはずがないので、国王が命じたのだろう。
ここで下手な真似をすれば、本当に命が危ういと察したらしい。
賢明な判断だ。
俺だってできれば王国を混乱させるようなことはしたくない。
しかし、魔王討伐を妨害されるなんて論外だ。
敵対的な為政者を葬れないほど甘い性格はしていなかった。
俺達は堂々と正門を抜けて王都を出た。
そこから街道に沿って歩いて移動していく。
リリーは追っ手を気にしながら俺に尋ねる。
「行き先は決まっているのですか?」
「ああ。もう計画している。魔王復活までの猶予も少ないからな」
魔王が蘇るのは、おそらく数年後だ。
長いように感じるものの、鍛錬の期間として考えるとごく僅かである。
当初からの指針は変わっていない。
まずは魔物を倒して肉体強化を進めていく。
体内の魔力も増やして、最低でも上級魔族には敵うようになりたい。
いくら逆行前の知識と経験があっても、根本の出力が違いすぎると太刀打ちできないのだ。
とにかく、ベースとなる実力を整えるのが最優先だった。
俺は懐を探ると、取り出した地図の一点を指す。
そこは王都から南下した先にある小さなエリアだった。
より正確には国境付近の街である。
「次に向かうのは、辺境都市のネリアだ」
「鍛冶師の街ですか」
「そうだ。トゥワイスをさらに改造する」
ネリアは工業全般が発達している。
鍛冶師の街という別名が付けられるほどで、特に武具の質の高さが顕著だった。
ネリア産の装備を使う冒険者は一目置かれるほどだ。
そこでトゥワイスの強化をしようと思っている。
選定した武器は、俺が魔物を倒すことで進化を促せる。
それに加えて外部からの改良も可能だった。
むしろ進化の機会は少ないので、積極的なアップグレードが必須である。
双剣を使っていた頃、俺は手入れと一緒に強化も行っていた。
加工した魔石をはめ込んで属性を付与したり、術式を刻んで魔力の浸透率を高めたりといった工夫を凝らしていた。
トゥワイスでも似たようなことをやるつもりだ。
現在のスペックは、この短期間での進化としては上出来であった。
ただし威力や精度、装弾数といった要素、いずれも魔王には届かない。
俺が望むのは、あの魔術の弾幕に対抗できる性能である。
(早く超えないとな……)
俺の決心を感じたのか、ホルスターのトゥワイスが振動する。
まだ召喚されて日も浅い。
悠長に構えてはいられないが、無闇に焦ることもないだろう。
目の前の目的を着実にこなしていく。
それが今の俺にできることだった。




