第16話 勇者は行く手を阻まれる
新たな弾丸の出来栄えに満足していると、魔力感知が不審な気配を捉えた。
俺は笑みを消して意識を集中させる。
「ん……?」
気配を探っていると、リリーが俺の異変に気付いた。
彼女は不安げに尋ねる。
「どうかしましたか」
「無粋な連中がやって来たようだ」
この作業場に向かって大勢の人間が接近している。
だいたい三十人くらいで、彼らは敵意を持っていた。
到着するまで二分もかからないだろう。
魔力量からして、大したことのない奴ばかりだが、王都という街中で見かける規模ではない。
尚、正体については察しがついていた。
(早めに気付けて良かったな)
森での鍛練を経て、俺の魔力量は増大した。
その影響で感知範囲は拡大し、精密性も向上している。
察知能力に関しては、一般的な魔術師をも凌駕していることだろう。
怪訝そうだったリリーも、近付いてくる気配を把握したらしい。
険しい表情で臨戦態勢に移った。
「まさか……」
「俺達から会いに行こう。ここで接触すると迷惑になる」
彼らは俺達を狙っている。
移動すれば作業場の被害を防ぐことができる。
巻き込まれる形とは言え、恩を仇で返すような真似はしたくなかった。
俺の考えに気付いた店主がぶっきらぼうに言う。
「気にすんな。多少のことで文句は言わねぇぞ」
「そういうわけにもいかない」
俺は荷物をまとめて出発の準備を整えると、リリーを連れて作業場の出口へと向かった。
その際、店主に礼を言う。
「色々と世話になった。王都に来た時はまた使わせてほしい」
「ああ、大歓迎だ。待ってるぜ。また面白い武器を見せてくれ」
固い握手を交わしてから、俺達は街の通りに出る。
そこから王城の方角に向かって進んでいくと、進路上に騎士隊が現れた。
三十人の騎士――すなわち俺が捕捉した気配である。
中央に立つ大柄な騎士が、兜の隙間から低い声を発した。
「勇者だな」
「そうだ」
「陛下がお呼びだ。城まで付いてこい」
「断る」
俺が即答すれば、騎士達は殺気立つ。
命令一つですぐさま襲いかかってくるだろう。
周囲の無関係な住民達は、慌てて避難する。
ものの一分ほどで、辺りに静寂が訪れた。
(リリーの失敗を察して、第二陣を送り込んできたようだな)
王国はよほど俺を手駒にしたいらしい。
コントロールできない状態で放置する現状を嫌っているのだろう。
向こうの主張は分かるが、従うつもりはない。
王国の用意したレールの上を進むだけでは、魔王には絶対に敵わないからだ。
俺は俺の考えた方法で強さを手に入れる。
ここで邪魔されるわけにはいかなかった。




