表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔弾の双銃士 ~過去に戻った勇者はジョブチェンジで最強の力を手にする~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/85

第13話 勇者は呪縛を撃ち抜く

 黒衣の女は殺気を霧散させた。

 そして、諦めた様子で脱力する。


「とてつもない、強さですね」


「死ぬ気で鍛えたからな。まだ発展途上だが」


 全盛期に比べると弱すぎる。

 仮に上級魔族と戦えば重傷は避けられないだろう。


 絶対的に身体能力と魔力が足りない。

 技量では埋めがたい部分であった。

 もっと鍛練を重ねて強くならねばならない。


(それはそうと、先に処理しておくか)


 俺は女の仮面に触れた。

 銃口を突き付けたまま注視する。


「何を――」


「動かないでくれ。狙いがずれる」


 女の言葉を遮りながら、仮面に施された術式を解析していく。

 何らかの効果があるのは分かっていた。

 それを調べているのだ。


 俺は戦士タイプの勇者だが、魔術的な知識や技能も持ち合わせている。

 そうでなければ単独行動ができなかった。


 解析すること暫し。

 仮面の効果が判明した。

 俺は険しい顔で睨む。


(ふむ、そういうことか)


 銃口を仮面の額部分に動かした。

 そのまま引き金に力を込めていく。


「威力は控えめだ。頼むぞ」


「All right,master」


 拳銃がエネルギー弾を放ち、仮面を粉砕した。

 そして、黒衣の女の素顔が露わになる。

 満月のような瞳をした色白の美人だった。


 見惚れるような造形であるが、それに照れたりはしない。

 俺は一方の拳銃をホルスターに戻して手を差し伸べる。


「立てるか」


「こ、これは……」


「隷属の魔術を撃ち抜いた。破壊対策もされていたが、まとめて潰したから問題ない」


 仮面には、着用者を縛り付ける効果が施されていた。

 その性質は洗脳に近く、日常的に着けていると思考まで蝕んでいく。

 心身ともに術者の操り人形になってしまうのだ。


 黒衣の女は既に重篤な段階に陥っていた。

 本人も気付かない間に支配されていたのである。

 事実、今の女は我に返ったような顔で呆けていた。


 完全に戦意喪失した彼女は、尻餅をついた状態で問いかけてくる。


「私を殺さないのですか?」


「悪人には容赦しないが、操られた者まで始末するほど冷酷ではない」


 それは間違いなく俺の甘さであった。

 半端な善意とも言える。


 女を殺害することが最適解であるのは理解していた。

 王国と敵対することになるも、元はと言えば向こうの差し金だ。

 報復ついでに魔力を奪って肉体強化に努めればいい。

 勇者の所業ではないが、強くなる上では間違っていない手法だった。


 しかし、俺は黒衣の女を逃がそうとしている。

 捨て駒同然の扱いで刺客となった彼女を憐れんで救い出した。


 やはり甘い判断だと思う。

 ただ、これを切り捨てれば、きっと人間性を失うことになる。

 勇者としての一線は守り抜きたかった。


 俺は拳銃を女に向けながら忠告する。


「王国のためにまだ挑むつもりなら、好きにするといい。今度は頭を吹き飛ばす」


「……私の負けです。忠誠心はありますが、それで命を捨てるほど愚かではないです」


「そうか」


 答えを聞いた俺は踵を返した。

 そのまま歩きながら黒衣の女に告げる。


「もう自由の身だ。どこへでも行くといい。今から国外へ向かえば、追っ手も間に合わないだろう」


「待ってください」


「何だ」


 引き止められた俺は振り返る。

 視線の先では、黒衣の女が立ち上がるところだった。

 彼女は決意に満ちた表情で俺に懇願する。


「私をあなたの従者にしてくれませんか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >「私を殺さないのですか?」 >「悪人には容赦しないが、操られた者まで始末するほど冷酷ではない」 それでこそ勇者! [一言] 続きも楽しみにしています!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ