第10話 勇者は二丁拳銃を使いこなす
数時間後。
俺はまだ森の中にいた。
数メートル先からホブゴブリンが接近してくる。
間合いを詰めると、棍棒で殴りかかってきた。
横薙ぎの一撃だ。
身を屈めて躱した俺は、伸び上がりの動作で右肘を振り上げる。
カウンターは見事に直撃し、ホブゴブリンの顎を打ち砕いた。
よろめいたホブゴブリンに対して、俺は左右の拳銃を向ける。
「くたばりやがれ」
「ZAP! ZAP! ZAP!」
ノリノリの拳銃が独特の擬音を発した。
その瞬間、容赦ない銃撃がホブゴブリンを蜂の巣になる。
「楽勝だったな」
俺は手持ちの件で死体を解剖した。
その中から割れた魔石を採取し、拳銃の口にそれぞれ与えてみる。
「ほら、食いな」
「So tasty」
「Oh,yummy」
左右の拳銃は美味そうに咀嚼した。
まるで飴玉でも噛み砕いているかのようだ。
魔石がこいつらの主食である。
進化を促進しつつ、魔力のエネルギー弾を撃てるようになるため一石二鳥だった。
(扱いも慣れたな)
俺は拳銃達に鉛玉を呑ませながら考える。
正直、使いこなせるか不安だったが、なんだかんだで良好な関係を築けている気がする。
拳銃達はよく懐いていた。
何かとお喋りだが、にぎやかで楽しいとも言える。
単独行動が多かった俺にとって新鮮な時間であった。
(それにしても、荷物が多くなってきた)
俺は足元に置いた布袋を一瞥する。
森を探索しながら、次々と魔物を狩って素材や遺品、魔石などを奪ってきた。
さすがに多すぎるし重い。
そろそろ帰還すべきかもしれない。
成果としては上出来だろう。
あまり荷物が多くなると動きが制限されてしまう。
もう少しで日暮れが訪れる。
その前に街へと戻り、今後の計画を考えてもいいだろう。
俺は街の方角へ移動を始めた。
進路上の魔物だけを倒しながら進んでいく。
拳銃達はやはり絶好調だった。
感知能力を持っているのか、魔物が接近すると唸って教えてくれる。
さらに、射撃の狙いを調整してくれている節があった。
何気に戦闘のサポートもしてくれているようだ。
なんとも優秀な武器であった。
そこまで考えたところで、俺はふと気付く。
(拳銃呼びも変だな。名前でも付けるか?)
せっかく生きた武器に進化したのだ。
こうして仲良くやっているのに、ずっと拳銃と呼ぶのも寂しい気がする。
(とは言え、ペットなんて飼ったことがないからなぁ……)
俺は歩きながら悩む。
ネーミングセンスに自信がないのでこういう時に困る。
すぐに閃くようなら苦労はしないのだが。
(仕方ない。少し訊いてみるか)
自分で考えられないのなら、第三者に意見を求めるしかない。
俺はその場で立ち止まると、背後の樹木の裏に声をかけた。
「少し相談したいのだが。姿を見せてくれるか」
数秒の静寂。
樹木の裏で気配が揺らいだ。




