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後編第三話 世直し愛国魔法少女ラスフちゃん!その3 国家間及び民族間の信頼関係を破壊するならず者!月山 明博(げつさん あきらひろし 78歳)に天誅のチュー!

 ●







 夜の公園ではアベックを十数人の人影が取り囲んでいた。


 「兄ちゃん持ち金あるだけ出せや?彼女の前でええカッコしようとすんなよ?タバコで目え焼いたろかい?」


 「こっちのお嬢ちゃんのほうはかなりの上玉じゃねえか?たっぷり可愛がってやるぜ?抵抗すんなよ?タバコで目え焼いたろかい?」


 在日チョン星人グループ「タバコで目え焼いたろ会」のアベック狩りである。


 普通は大人でもこの人数に囲まれれば動揺するものだが、この少年少女はやけに落ち着いていた。


 少年はやれやれといった表情で連れの少女のほうに顔を向け、呆れた様に一言こぼした、ナ?言った通りダロ?と。


 少女は瞬間唇をきつく結んでから、それでもわたしは―――と寂しげにつぶやいたのだった。







 ―――同日 朝 鳳凰学園――――




 ここは鳳凰学園初等部第4学年1組教室、この物語の主人公である旭日 旗子の在籍するクラスだ。


 「チョン星人の強制連行なんてまったくの大嘘じゃん!」「嘘吐きチョン星人さん!ハイ!ド論破ァ!」


 「なんだとチョッパリ!差別だ!ヘイトスピーチだ!謝罪と賠償を、このポルジャンモリジャップ猿どもに要求する!」


 朝も早くから香ばしい罵り合いが、教室の空気を限界まで悪くしていたが、当然、当人たちにそれを気にする様子は微塵も無かった。


 「ちょっとあんた達!やるなら教室の外でやんなさいよ!」「そーだそーだ」


 クラスメイトである双子の根斗 右与太郎&右与次郎(ねと うよたろう&うよじろう)と在日チョン星人のはく 信愚しんぐたちの言い争いの間に旗子が割って入り、朝のホームルーム開始を待つ周囲の友人たちがそれに同意の声をあげる。


 「なんだよ旭日ィ!嘘吐きの差別主義者を退治して何が悪いんだよ!」「日本の敵を吊し上げるのは正義!ハイ!ド論破ァ!」


 「チッ、メス猿が!女のくせに生意気だぞ!そういえばお前のアボジは人殺しの自衛隊だったな!戦犯国が生意気に軍隊持ってんじゃねーよ!レーザー照射すんぞ!」




 ―――チヨニ!ヤ!チヨニーッ!―――




 「(ほう、旗子のやつ、衆目のなかで変身しよったわ!肝が据わっとるのう!)やばっ!ムカついた勢いでつい変身しちゃった!(考えも覚悟も無かったンかい!)こつんてへぺろ!」


 「旗子ちゃん!ボクが旗子ちゃんに変身するからそれでやり過ごソuyp…!」「(おお!はやぶさ殿!機転が利くのう!)ナイスだよ!大好き!はやぶさくん!」「ッ!!カレシなんだしこれぐらい当然デsy…!」告ってもいないのに彼氏アピールだけはこまめに入れる、ちょっとウザいはやぶさくんであった。


 突如、最近噂の魔法少女ラスフちゃんが教室に登場して、騒然とするクラスメイトたち、どうやら間一髪で旗子がラスフの正体だとばれていないようだ。


 旗子が魔法少女に変身したように見えたが、ラスフとは別にそこには旗子がいたので問題無しッ!…この旗子、多少昭和を感じさせるロボットチックではあったが…「ミンナ ナカヨク シマセウyp…!」…問題無しッ!からの―――




 「ネットウヨクに天誅のチュー!」




 魔法少女は双子の根斗兄弟それぞれに必殺技天誅のチュー!で日本の心を口移しにチュー入した!


 「君たちのやっているのは愛国行動なんかじゃないっ!日本国に対する愛国心や天皇陛下に対する忠誠心といった大義を掲げて、自己の暴走行為を正当化しているだけの未成熟な自己顕示でしかないんだよっ!」


 「(わらわにも言わせてくれんか?)いいよ!んんっ!猿に日の丸の旗を振らせるのは簡単じゃが、その意味を解らせるのは難しいからのう!若い時分に麻疹にかかるのは構わんが、手遅れになる前に自ら決着をつけよ、そなたらも自分自身と日本国の恥を晒しているだけと薄々気づいておるんじゃろう?」


 「…日本人ってだけで俺自身が何か成し得た訳じゃないのに偉そうに…今までやってきたこと、日本人の美学に反する、とか、男としてカッコ悪い、と思います…」「匿名で他人を攻撃するの、恥ずかしい事だって、薄々思ってました…ハイ…ド論破されたァ…」


 兄弟の独白にクラスは優しい雰囲気に変わってゆく。クラスメイトの少なくない人数が双子兄弟に同情し、そしてどこか感謝の気持ちを感じていた。自分たちが踏み外したかもしれない道とその落着地点をこの双子が先んじて見せてくれたのを直感的に理解したからだ。


 そんな温かい空気の中でラスフがシメに入る。


 「よしっ!じゃあ根斗君たちも反省したみたいだし!」邪魔するような、空気を読めない者はいるはずが―――


 「今日一日を気持ち良く始めy「負けをォ!負けを認めたなチョッパリィーッ!」―――いたーッ!!


 「反省してるなら今すぐ!戦犯チョッパリのお前らのジジババの墓を暴いて!そこに小便してこい!クソしてこい!チョッパリーッ!」「クワッ!ヘンナ、ドクデンパ、ジュシンシチャっts…!」これにはダミー旗子もドン引きである。


 勿論クラスメイトは一人残らず息をするのも忘れてドン引いていた、重過ぎる沈黙に分け入るように始業チャイムが響き渡る、気のせいだろうか、チャイムの音色がいつもより低く濁って聞こえる。




 「はーい、おはよーさーん!ってどうしたみんなー?」担任の桜井 斗地治(さくらい とちじ 31歳 男)が舞台に登場する、嵐のホームルームが始まる予感がする。


 ロボ旗子と入替るタイミングを逃したラスフも何食わぬ顔をして朝のホームルームに参加していた。かなりシュールな光景だが、教師も、生徒も、誰もそこにはツッコまなかった、否、ツッコめなかったのだ。


 「さてー、何が起こったか、誰か教えてくれないかー?」教師の問いかけに生徒たちは目線を教室の後ろの壁に向けることで答えた、そこには


 Z 3 7 5 6 4


 と黒い塗料で大きく書き殴られていた。それは異様な雰囲気を醸し出し続けている、明確な悪意のある落書きであった。


 「あー、その落書きかあー、最近ネットだけでなく街でもよく見かける落書きだなー」ガタン!バン!立上り、机を叩き絶叫する生徒がひとり。「先生はッ!先生はその Z 3 7 5 6 4 の意味を知っているにも関わらず!なんでそんなに呑気なんですかッ!」


 白 信愚だ。桜井の言葉をぶった切るように割って入る。クラスメイトは皆うんざりといったムードで、それを聞き流すことにした。朝からこんなにもイヤな感じに疲れてしまった、という苛立ちすら、そこには無かった。


 「Zは在日、 3 7 5 6 4 は皆殺し、そんな凶悪な意味なんですよォ!」大袈裟な身振り手振りで白のワンマンカラオケ大会が始まった。「犯人は根斗たちに決まってる!こいつらを退学にしてください!」


 「先生」根斗兄が挙手し、桜井が発言を促す。「その落書きをしたのは僕たちではありません、けど彼にそう決めつけられて、お前の自作自演だろって言い返しちゃって…」


 根斗弟が続ける。「それでケンカになって騒ぎになってしまいました、騒ぎの発端を作ったこと、反省しています、みんな」「「ごめんなさい」」同時に立上りクラスメイトに頭を下げるふたり、流石は双子、息がぴったり合っている。


 「んー根斗ー、なんかお前たち少しだけ大人になった感じがするなー、先生ちょっと感動したぞー」桜井はメガネの奥の細い目を更に細めて嬉しそうだ、受けて根斗兄弟は照れくさそうにしている、この辺はまだ小学4年生だ。


 「アアアアアァ!先生ッ!差別を!ヘイトスピーチを!放置するんですか!それでも教育者なんですかッ!」またコイツかよと誰かが吐き捨てるようにつぶやいたのが聞こえた。誰かの舌打ちも聞こえる。


 「先生はな、この日本国では、如何なる差別も絶対に、絶対に許したくないんだ―――」怒気を含んだ厳しい表情になった教壇の男は静かに語った。この瞬間は彼が顧問をつとめる「日本大好きクラブ」の部活動中の表情になっていたのを数人の生徒は認識した。


 「―――だから、みんなで、落書きを消そう!」笑顔に変わった桜井につられるように皆笑顔になる、ちょうどその時、HR終了のチャイムが鳴った。ラスフは教室の後方で浮かびながら桜井の見事なシメに思わず拍手をしていた。




 「 FU! ZA! KE! RU! NA! 」ワンマンカラオケ大会セルフアンコール公演開幕である。「アイゴー!なんで被害者の俺まで突き合わされなきゃなんねーんだよ!加害者のチョッパリだけで、俺の為に!在日の為に!この目障りな落書きを反省しながら消すべきだろ!」


 「ちょっといいかのう?」発言を求めるラスフ、どーぞと促す桜井。「わらわの神様パワーでこの落書きの犯人見つけることが出来るぞよ?」「んー、みんなー、この提案に賛成なら手を挙げてー?」ひとりを除いてクラス全員の手が挙がる。


 「ではー、よろしくお願いしますー」「まかせておけ、ふん!」ペカーと教室の後ろの壁が発光し落書きが消えて、クラスメイトたちのホログラムが教室に現れた。「昨日の放課後はまだ落書きされていないようじゃのう」


 「あっ!わたしがいる!これって昨日着てた服だ!」女子はこの現象をすぐに受入て楽しんでいた。「へーわたしって後ろから見るとこんな感じなんだーおもしろーい!」「これこれ、わらわの神様パワーをオシャレ研究に使うでない」ラスフ苦笑いである。


 「おっ!おれじゃん!なあ神様、おれこれで自分のピッチングフォームの確認したいんだけど、ダメ?」「ダメに決まっておろう!」このやりとりにクラスメイトたちは本題を忘れて大爆笑である。「夜の間は早送りするかのう」場面は朝になった。


 「ッよし!わかったーッ!被害者の俺が許す!ここでおしまい!いいな?おい、早くこれ止めろ!止めロッテ!」白が絶叫したそのタイミングで今と同じ服装の白のホログラムが、まだ誰のホログラムもいない教室に、キョロキョロと辺りをうかがいながら入ってきた。


 白のホログラムは鞄から黒い塗料缶を取り出し、刷毛を使って教室の後ろの壁に落書きを始めた、 Z 3 7 5 6 4 と。


 「ギィエエエエエエ!捏造ッ!これは捏造だーッ!」盛大にファビョる白、暴れている最中に机の横にかけてあったランドセルを蹴り、中から塗料缶と使用済みの刷毛が転がり出てきた、お約束過ぎるドベタ展開である。


 「キサマらぁ!チョッパリの分際で!よくも絶対的被害者の在日チョン星人様にィ!恥をかかせたなぁあああ!恨!恨!恨ッ!ハンッ!ッアイゴー!アイゴー!」白が教室を飛び出していったと同時に一限目開始のチャイムが鳴った。教室をまるごと脱力感が包み込む。


 「あー、なんだか騒がせてしまったのう、お詫びにこの落書きはわらわが消しておくぞよ?」「神様、ありがとうございました、みんな御礼しよう、ハイ!」クラス一同「ありがとうございましたー!」元気で無邪気な御礼の言葉がラスフに降り注ぐ。


 「そうじゃ、これからはラスフちゃんと気軽に呼んでくれんかの、神様と呼ばれるのはちと恥ずかしゅうての」照れくさそうなラスフにクラスのみんなは笑顔だ。男子だけでなく女子の一部からも熱い視線が投げかけられていた。ラスフちゃん、人気者の自分にまんざらでもなさそうだ。


 「で、ラスフさん、もし出来たらでいいのですがー、落書きに関してはー、ゴニョゴニョ…」「ほう!いいぞよ!承った!チヨニ!ヤ!チヨニーッ!」


 教室の後ろの壁に書きなぐられていた凶悪な文字が消えて、新しくピンクの可愛らしいサインが浮かび上がる。


 三 七 七 四 九 R S F


 歓声がわきと拍手がはじける教室。「ミンナナカヨク ラスフ ダネ?イイネコレ ボクモ 8 8 2 3 ッテ カイテイイかna…!」「これ!今しばらく旗子の身代わりを大人しく務めんか!」魔法少女の戦いは続く。







 旗子のクラスは、ウヨ曲折はあったものの、いい感じに一日のスタートを切った、その頃、


 「もしもし!俺だよ!聞いてくれよ酷いんだよ!クラスのチョッパリどもが寄ってたかって俺を差別して…そう!だから『タバコで目え焼いたろ会』のみんな招集して、今日の放課後…」


 白はなにやら不穏なコンタクトをとっていたのだった…







 ●







 例えば日本人の俺がアメリカに移住したとする。


 そうしたら普通に帰化して普通にその国に忠誠を誓うよな?そしてもし日本人による敵対行為がアメリカ国内外で起こったら、すぐさま非難声明を出すだろうよ。


 別に公的機関に公的文書を送るとか、そういった堅苦しい面倒臭いもんじゃなくていいんだよ。イスラム原理主義テロリストのやらかした日本人拉致事件の時に、日本国内のイスラム教徒が出してた非難声明みたいなあんなのでいいんだ。


 バカッターでもフェイクブックでも、ナロー小説でも、今はアピール発信手段はなんでもあるよね?


 そんなあたりまえのことを俺達、在日チョン星人はやってこなかったんだよ。




 だけど行動するのに遅過ぎるってことはないんだ、だから俺は日本国籍を取得して日本人とチョン星人の「真の」友好関係を構築する為に生きたい。


 これは日本に住み、日本を愛する、ひとりの「人間」としての判断なのだと思ってくれていい。




 チョン星系日本人にしか出来ないことって、あると思うんだ。日本人の怒りを正しくチョン星人たちに伝えるっていうのも、そのひとつなんだと思う。


 現在の両国両民族間の関係悪化の根底にはこの、日本人の怒りの伝わってなさ、があると俺は考えている。日本で生活をしていれば誰もが肌で感じる事の出来る、この日本人の怒りがね。


 多くの日本人は怒りを相手に伝えようとしないし、多くのチョン星人は相手の怒りを知ろうとしない、ならば誰かが間に立って正しく橋渡しをした方がいいと思わないか?


 だからまず俺は、これまでチョン星人が行ってきた一切の反日活動及び反日教育がすべて間違いであった事をチョン星人に認めさせて、それを世界に対してチョン星人自らが徹底的に広報することを要求したいと思う。


 最低限これぐらいは今すぐにでもやっておかないと、戦後アメリカが構築した日本弱体化計画における「憎まれ役のチョン星人」は、日本人に見殺しにされる、という未来しかなくなるだろう。







 白 善要(はく ぜんよう 15歳 男)は、流石は鳳凰学園中等部生徒会長であるといった、カリスマ性を感じさせる語り口で、彼の心からの思いを弟の白 信愚に真摯に伝えた。







 ―――同日 放課後 鳳凰学園 正門――――




 悪臭すら感じる、醜悪な光景だった。


 鳳凰学園正門前の道路を挟んだ正面一帯では、一見して破落戸とわかる男たちが暴力をちらつかせながら勝ち誇ったように薄笑いを浮かべている。今朝、白弟が助けを求め招集した在日チョン星人不良グループ「タバコで目え焼いたろ会」だ。


 初等部の下校時刻だというのに生徒たちは、恐怖から正門を出ることが出来ないため、学園敷地内に人だかりをつくっていた。恐怖から泣き出した女子が数人いるようで、鼻をすする音が散発して聞こえていた。


 「あいつら俺ら狙い」「だろうな」「じゃあ俺らが出てくしか」「ないよな」根斗兄弟が正門から歩を踏み出すと不良グループも同調するかのように一斉に動き出した、その光景、ゴミ虫が一斉に蠢いたかのような光景に、子供らの中から短い悲鳴が上がる。


 「キミがあ、ネトウヨ君かなーあ?俺らの仲間の白 信愚、って知ってるよねえ?あー、恥かかせてくれたんだってねえ?ちょっと、付き合ってもらうよーお?」「「嫌です」」「はぁ?はーあッ!?いいからコイってンだよボケェ!タバコで目え焼いたろかい!」


 「オォイッ!俺の生徒からァ!手ェ!はなせェッ!」桜井 斗地治!この先生はこんなにも大きな声を出せたのか、正門に集った子供たちは、走って現場に駆け付けた、根斗兄弟の担任教師を驚きの目で見つめながら思った。


 「はあ?俺たちトモダチ、なんですけどッお?なあ?ネトウヨちゃん?」破落戸が根斗兄の肩にまわそうとした手を、叩き落すように払いのける桜井。「根斗!お前らは向うへいっていろ!ここは先生にまかせるんだ!」桜井のメガネの奥の熱く燃えている細い目を見返しながら、ふたり同時に力強くうなずき、ふたり同時に正門周辺の人だかりへと走って戻っていった。


 「なぁーにカッコつけちゃってんのよお、センコーがよお?」破落戸はくわえていたタバコをつまむと、煙を大袈裟に吹きかけながらまるで勝ち誇ったかのように、大声で腐った威嚇をする。




 「ッタバッコで目え!焼いたろかいぃぃぃ!!!るおおおぉぉぉ!!!???」




 桜井はメガネを外し、不思議とよくとおる声で、静かに告げた。




 「やってみろ」




 沈黙と硬直は十秒ほど続いたと思う。タバコで目え焼いたろ会のメンバーたちの劣等感と敗北感、生徒たちの憤怒と悲嘆が沸点に達する。双方の感情が決壊したのはほぼ同時であった。




 「上等だコラァ!やったろうあああぁぁぁ!!!」振りかぶる破落戸「やめろぉー!」駆け寄る生徒たち「先生を守れーッ!」「せんせぇー!」「うわーん!うわーん!」「止めてくださーい!」男子も女子も上級生も下級生も初等部の生徒たちが桜井をかばうように取囲んだ。


 「オラあ!ガキだろうとお!容赦すんなやあ!やンぞおおお!」破落戸全員「汚汚汚おおおぅ!」残虐暴力ショー開幕の合図であるかのように、火のついたタバコが、桜井に向かって指で弾かれた。


 しかし、それは軌道を外れ、桜井をかばう女子小学生の顔に向かった!今まさに!真っ赤なタバコの火が彼女の頬に一生残るであろうヤケド痕を付けんとした、その時!




 ―――チヨニ!ヤ!チヨニーッ!―――




 魔法少女ラスフが閃光のごとく登場!女子生徒の目の前で、弾かれたタバコを指先キャッチした!


 「タバコで目を焼くってのはねえ―――」ラスフはうつむいた姿勢から顔をあげ相手を睨みつけながら、怒気のこもった低い声を絞り出すように言った「―――こういうのを言うんだよッ!」


 「キャー!」女子生徒たちの悲鳴がジュッという眼球が焦げる鈍い音をかき消す。ラスフは火のついたタバコを自らの右目に押し付けていた!「どう?あンたらもやってみる?」


 「ヒッ!ヒィィィ!すっ!すみましぇんでじだぁぁぁ!」繁華街のゴミ置き場のゴキブリのように一斉に散開逃避する破落戸たち「逃がさないよ!」投げキッスを振りかぶるラスフ。




 「暴力で恐怖政治を行う圧力団体に天誅のチュー!」「「「「ミギャー!!!」」」」




 次々と倒れる破落戸たち、同じタイミングで学園から通報を受けた警察がやっとで到着した。日狂組系の教師が揉め事は話合いで解決すべきだと主張し、通報を遅れさせていたのが警察がなかなか到着しなかった原因と後日判明する。内ゲバばかりの彼らだが、この連携プレー、まるで「消去法で選ばれた自覚の無い利権政治屋集団・痔民党」と「疫病火事場泥棒で中抜きしか出来ない無能集団売国代理店・電痛」の連携プレーようにゲロ見事だ。


 「あのひとたち、改心するかな(わからんのう、天誅のチュー!が連中の心に届いておればよいが…)」警察に連行される破落戸たちを見ながら、魔法を使い、潰れた右目を元通りにしているラスフに、笑顔の桜井が近づく。


 「生徒たちを助けて頂きありがとうございました、しかし」表情を引締め、自身の右目に手を近づける動作をしながら続ける「こういった行為は教育上NGです、今後注意して頂きたい」「ゴメンちゃーい!こつんてへぺろ!」舌をチョロっと出しておどけるラスフであった。




 「先生…先生は、怖くなかったのですか?」桜井を取囲む生徒たちの中の高学年女子が問いかける。低学年は男子女子共に桜井にまとわりついていた、そのまわりで6年生、特に男子、は自らの無力さに対する悔しさからだろう、皆こぶしを固く握りしめ、うつむいて涙を流していた。


 その中から場違いな明るい声が通る「みんなー怖かったかー?怖かったよなー?先生もすごーく怖かったぞー?」笑顔の桜井だった。


 「けどなー?ああいったヤツらはそうやってひとを怖がらせて、無理矢理言うことを聞かせるような、卑劣なヤツらなんだー、だからなー?」


 その細い目を大きく見開き、優しい気持ちをたっぷりと込め、子供たちの中に残っている恐怖を欠片も残さず打ち消さんばかりに、彼の全身全霊をかけて、持てる力を残さずすべて託した言霊を愛する生徒たちに発する。


 「怖くても―――」   願いよ、届け!   「―――絶対に怖がっちゃダメなんだ!」




 生徒たち全員が力強くうなずく、泣き止んだ瞳には桜井と同じ、勇気の灯がともっていた。涙のあともそのままに、一生懸命に笑顔を作ろうとしている生徒たちを見て、教師桜井、感動の涙をこらえるのに必死である。ちなみにはやぶさくんもその輪の中で、涙のあともそのままに、一生懸命に笑顔を作ろうとしていた。


 桜井はまわりの下級生ひとりひとりの頭を撫でながら続ける「怖がったらヤツらの思う壺だけど、みんなに暴力を振るわれるのは避けなきゃいけないからなー、だからさっきみたいな場合はみんなは逃げてくれよー、先生みたいな大人が捨て石になるからなー」


 「(どうやらまとまったようじゃのう)だね、サクちゃん先生、やるときゃやるね!」騒動に決着がついたと誰もが思った、その時―――


 「ここにいたぞーッ!」数人の男子生徒が駐車場の門の陰からこの騒動の発端である白 信愚を引きずり出しているのが見えた。どうやら遠巻きにこちらの様子をうかがっていたようだ。


 その時、不意にチャイムが鳴り響き始めた。その断罪の鐘はなかなか鳴り止まず、いつもより長いく響き続けたように感じられた。







 ―――同日 放課後 鳳凰学園 食堂――――




 学園自慢の大食堂のメインホールは、主に初等部高学年と中等部の生徒であふれかえっていた。


 その人だかりの中心では、憮然とした表情で、ふんぞり返るように腕と足を組んで座っている白 信愚が、そしてその正面の椅子に背筋を伸ばし静かに目を閉じて座っている、彼の実の兄であり中等部生徒会会長の白 善要が、聴衆の注目を浴びていた。


 先ほど、白弟を取囲んでいた生徒たちに対して、騒動を聞きつけ駆けつけた白兄が土下座謝罪した後に提案した、弟の性根を入替えるための兄からの公開お説教タイムが始まろうとしている。そしてチャイムが、まるで試合開始のゴングのように鳴り響いた。


 「お前が思っていることを全部ここで話してみろ、俺が誠意をもって、お前が納得するまで、その話に付き合うから」白兄の悲痛の叫びのような趣旨説明が行われた。白弟が自信ありといった風に火ぶたを切る。


 白弟の主張:

 「在日チョン星人は強制連行で日本に拉致されてきた被害者である、加害者である日本人は在日チョン星人に対して申し訳ないという気持ちを常に持ち、在日チョン星人の言うことを何でも聞き入れなくてはいけない、俺はそうアボジたちに教わってきた、違うのか?」


 白兄は生徒会長に選挙で選ばれていることが示すように、学園では人望のある人気者である。その白兄の顔を立てる為だけに参加している聴衆は、この白弟の開幕ドヤ顔見当違いKY発言に早速疲労感MAXになる。白兄の反論を待つ。


 白兄の説得:

 「それは違う。インターネットの時代に強制連行されて日本に来たという嘘を吐き通すことはもはや出来ない。最大の問題は、いまだにその嘘にすがっている在日チョン星人たちが、嘘がばれた時に何が起こるか想像する力が欠如している点にあると思う」白兄が静かに語りかける。


 「お前にはまず、チョン星人が当たり前だと考えている『こうあるべきを前提にした声闘』では日本人だけでなく世界中の人たちは誰も納得しないことを理解して欲しいんだ」


 「お前も『こうあるべきを前提にした声闘』の為に、嘘に嘘を重ねている自覚はあるだろう。それがチョン星人にとって良い結果をもたらすか悪い結果をもたらすか、日本で育ったお前なら理解出来るはずだ、どうだ?」


 白弟のファビョ:

 「じゃあヒョンは!アボジたちが!嘘を吐いてるっていうのか!肉親を嘘吐き呼ばわりするのか!」


 白兄の説得:

 「誰かが意識的に嘘を吐いていることを指摘したい訳じゃないんだ、この強制連行の神話は戦後なんとなく広まって、なんとなく定着した穏やかな嘘なんだ、そして今、多くの日本人は長らく騙されていたことに対して憤っているんだよ、お前も嘘を吐かれて騙されたら怒るだろう?同じなんだよ、同じ人間なんだから」


 「それに考えてみて欲しい、もし昔に仮に強制連行や強制占領があったとしても、なぜ今日を生きる日本の若者たちが、チョン星人に対して申し訳ないという気持ちを持ち、言うことを何でも聞き入れなくてはいけないのか?」


 「またもし戦争時期の悲劇について語るならば、チョン星からの日本人引き揚げ者に対してチョン星人が行った犯罪行為、竹林はるか遠くって本ならお前も読んだだろ?それとか在日チョン星人が戦後混乱期に日本でおこした犯罪についても同様に語るべきだ、そう思わないか?」


 白弟のファビョ:

 「竹林はるか遠くや二日市保養所の記録!チョン星進駐軍の役所襲撃!全部チョッパリの大嘘だ!それにチョッパリどもはもっと酷いことをチョン星人にしてきたんだ!」


 白兄の説得:

 「記録を基にした事実について語ることはもうしないが、考えて欲しい、今のお前の状態、それがまさに『こうあるべきを前提にした声闘』の為に、嘘に嘘を重ねている状態だということを、そしてそんなお前を見て日本人がどう感じているかを」


 そこで黙り込む白弟、白兄の説得がかなり効いたようだ。白弟の声のトーンが落着いたものに変わる。ヒョン、もうひとつだけいいか?との問いかけに、どこまでも付き合うよ、家族だからな、と応える白兄。




 白弟の主張:

 「在日チョン星人は被害者という道徳的優位を持ち、かつ戦勝星人という民族的優位を持つ立場から日本国と日本人を支配しているんじゃないのか?」


 白兄の説得:

 「それは強制連行と並ぶもうひとつの在日チョン星人の神話だよ。実際は、戦後アメリカが構築した日本弱体化計画における憎まれ役として、在日チョン星人が踊らされていただけなんだよ」


 新キャラクターの乱入:

 「OH!まるでUSAがチョン星人を操り人形にしていたみたいな言い方、NO!NO!ネ!」怪しげな日本語が割り込んできた!


 「キッカケはMEたちかも知れないけど、ノリノリで踊り狂ってたのはYOUたちの意志ネ!自己責任OK?」アメリカ人留学生、サミエル・ヒューストン(中3 14歳 男)の登場である。


 アイルランド系の透き通るような白い肌に柔らかな長めの金髪、そしてメガネの奥には眼光鋭い青い瞳、背は低い方、なかなかのハンサムボーイかつどこかキュートなその容姿や、洗練されたその立ち振る舞いで、学園では人気が高い生徒のひとりだ。


 「白人の国はどこも、有色人種の国に対して同じようなことやってるネ、管理対象民族の不満が間接統治に利用した民族に向かうように仕向けてMEたちへのイライラリリース!、けど日本じゃヨソみたいにブゥードゥーや焼き討ち無かったネ!日本人は民度高過ぎネ!」


 白弟の絶望:

 「じゃあ…俺が今まで信じてきたものって…いったいなんだったんだよ!俺は!在日チョン星人は!これからどうしたらいいんだよおッ!」


 サミーのアドバイス:

 「ヒントあげるネ!キーワードはソフトランディング!YOUのブラザーのホワイティはこのあたりよく考えてるネ!勉強しなよ!グッラック!」


 白兄の結論:

 「まずここに集まってくれたみんな、付き合ってくれてありがとう、そして今回は騒ぎを起こしてしまい申し訳ない」


 「OH!すぐ謝るところ、まるで日本人ネ!」サミーの入れるおちょくりに、緊張し続けていた聴衆は少しだけ和む。


 「ああ、光栄だね、俺は日本人さ」白兄が宣言する「生まれも育ちも日本だし、生活基盤も日本にある、喋れる言葉も日本語だけ」立ち上がり白弟の肩に手をかけつつ聴衆に告げる「俺はチョン星系日本人さ」


 「これが俺の出した結論だ、弟よ」「ヒョ…兄さん、帰化するってのか?帰化はダメって、在日チョン星人のアイデンティティを持てって、父さんが…」「弟よ、もう俺達には選択の余地は無いんだよ」そこでまるで大正解といわんばかりに「OH!YES!」と言いながら拍手し始めるサミー、ちょっと、いや、かなりイラッとくるリアクションだが、多くの日本人は基本的に白人に弱いのでここではスルーされる。


 「在日チョン星人は近い将来、帰国か帰化の二択を迫られるだろう、しかしそうなったらもうその時点で手遅れだ、即ちハードランディング状態でしかなくなる」ハードランディングという不穏な言葉に聴衆は息をのむ。


 「例えば日本人の俺がアメリカに移住したとする―――」白兄はサミーの方に顔を向け、再度弟に向き直ってから語り始めた。


 「そうしたら普通に帰化して普通にその国に忠誠を誓うよな?―――」白兄は毎月の生徒総会で行う、たった5分間の演説のための準備に2週間かけるという。


 「―――そんなあたりまえのことを俺達、在日チョン星人はやってこなかったんだよ」この演説の準備には、いったいどれだけの時間をかけたのだろうか?


 「だけど行動するのに遅過ぎるってことはないんだ、だから俺は日本国籍を取得して日本人とチョン星人の「真の」友好関係を構築する為に生きたい。これは日本に住み、日本を愛する、ひとりの「人間」としての判断なのだと思ってくれていい」聴衆は段々と白兄の演説に合いの手を入れるようになり、拍手やYAEH!といった掛け声で場が盛り上がりはじめた。


 「チョン星系日本人にしか出来ないことって、あると思うんだ―――誰かが間に立って正しく橋渡しをした方がいいと思わないか?」感動的な演説も終わりが近づく、聴衆の盛り上りも最高潮に達する。


 「俺はこの問題のソフトランディングを目指す、日本人とチョン星人の「真の」架け橋になるんだ!」拍手喝采で白兄のパートはシメられた。サミーがホワイティグッジョブ!連呼していてうるさい、このへんは実にステレオタイプ的アメリカ人である。


 受けて弟の応えを聴衆は待つ。顔を上げた白弟の眼差しを見て、皆確信する。ソフトランディングだ!




 「まずは皆に、これまでの俺の間違った言動で不快にしてきたことを謝罪したいです、ごめんなさい」頭を下げる白弟は、それでも堂々としていた、聴衆は、おおっ!とか、やったな!と好意的にざわめく。


 「そして結果的に何もなくて良かったとしか言いようがないけど…暴力を使って身勝手な言い分を通そうとした、そんな卑劣な行為をとったこと、許してもらえないかもしれないけど、謝罪します、ごめんなさい」彼の頬を後悔の涙がつたう。


 「「俺は!もう許した!」」すかさず根斗兄弟が目をうるませながら応える。「心からの謝罪だって解る!」「ならばそれを受け入れて許すのが日本人ってもんだよ!」主に4年1組の生徒たちがそれに続く。


 白弟は嗚咽交じりの感謝を皆に伝えている、根斗兄がその背中をさすっているのが見える。「俺も!兄さんみたいになりたい!努力することで改心の証にしたい!」拍手喝采だ。そこで満足そうに、白兄は人だかりをそっと離れた、中等部の生徒が拍手で送り出す、握手を求めているものもいた。


 「なんか感動しちゃったよー(そうじゃのう、本当の自由な心とは「認める」ということである、とはよく言ったもんじゃ)白先輩のお説教ってさ、なんかわたしたちの天誅のチュー!みたいだね!(まったくじゃ!)」ラスフも人だかりを離れ、変身を解き旗子に戻った。







 ―――同日 放課後 鳳凰学園 学園通り――――




 旗子が嬉しそうに、まるでランドセルに振り回されているかのようにクルクルと回りながら学園通りを歩いている「アカルくんと一緒に下校するのって久しぶりだよね!」先ほどの騒動を受けて、学園は大事を取り、初等部の生徒は、保護者のお迎えもしくは中高等部生徒含む三人以上での下校を推奨していた。


 旗子とその親友の竹島貴子は中等部の小見川耀先輩に守られながら下校していた。アカルが初等部の頃は、しばしば登下校を共にしていた、家が近所の三人である。「小見川先輩、わたし、おじゃま虫じゃありませんか?ごめんなさいね、ウフフ」一応といった感じのかたちだけの謝罪の言葉で貴子がふたりをからかう。


 「キャッ!でも、タカちゃんを家まで送ったあとは、わたし、アカルくんとふたりきりなんだよね!」「ヤダッ!じゃあじゃあ!―――以前までは妹のような存在でしかなかったのに…なぜだろう今はそれと別の感情がオレの中に―――ヤダーッ!もうこれ以上ムリーッ!」「「キャピー!キャピー!」」「ヘンなナレーション入れンなよ…」


 げんなり対応するアカル、いつものアグレッシブなキレが無い、というのも現在彼は考えなくてはいけないことが多過ぎるのだ。いきなりキスしてきたラスフへの恋心、ラスフかもしれない旗子が頬にしてきたキスの意味、もし俺が旗子を好きになったら俺はロリコンなのか、旗子のお父さんのジェラシーアタックとどう付き合っていくか、そして今後おじゃまジョーカーくんとして如何に立ち振る舞うか。どれも考えが上手くまとまらず苛立ちだけがつのる。


 「あれ?そいえばハタちゃん、はやぶさくんは?」貴子が小声でたずねる「根斗兄弟や白弟と意気投合してみんなで一緒にドロケーしながら帰ってる、男子ってホント、ガキよねー」それはやぶさくんの希望でもあったが、白弟の護衛をまかせることで、アカルとの時間をおだやかにすごせると内心喜ぶ旗子だった。




 貴子の両親が営む喫茶店「日本海」は商店街の中ほど、自宅の一階にあった。「「「いただきます!」」」旗子は自家製チーズケーキを、アカルは特性カレーピラフ大盛をご馳走になっていた。学園の制服を私服に着替えた貴子と三人で楽しい放課後をすごす。「美味しい!」「ウマいっス!うめ!うめ!」


 わりとどうでもいいことだが、カレーピラフをガツガツ一心不乱に食べるアカルの姿を注視しながら固まっていた旗子が、何かイケナイ想像をしたのか突如真っ赤に染まった両頬を両手でおさえながらくねくねと身悶えはじめた。明らかに人生開花早過ぎ&人生謳歌し過ぎのおませな小学4年生女子である。


 「小見川先輩って彼女とかいるんですか?」「いない、けど好きな女の子はいる」貴子の問いかけに、アカルは旗子を真顔で見つめながら即答する「俺は魔法少女ラスフが好きだ」「ッ!」驚きの表情で貴子は旗子に目で語り掛ける(先輩はハタちゃんがラスフの正体って知らないの!?)(わかんない、けど多分知ってるんじゃないかな…)(くっ!よしッ!ならば!)


 「ハタちゃんは好きなしと、だ、誰かいる?」貴子噛む、貴子どもる「うん、いるよ?」旗子はアカルを見つめ返し真剣な表情で告白する「わたしはおじゃまジョーカーくんのことが好き、大好き」


 ゴォッ!!!その瞬間!旗子とアカルの間で見えない何かが激しく衝突した!そして衝突し続けた!ライク日本海の荒波!店の壁に見る油絵の!猛りどよめく大海の!潮よここにあふれ出せ!かかる激しき混沌と!共に君らを飲み込まん!「やめてーッ!パパとママのお店が潰れちゃう!」波間の貴子の絶叫も届かない!ふたりの作り出すラヴバトル空間は爆発寸前だ!ああーっ!ヤバいーっ!




 その時!




 カランカラン♪「こんにち うわっ!」「OH! NO! SU GO I プレッシャー!」来客だ!白兄とサミーだ!グッジョブ!アカルと旗子の間に、一呼吸分の「」が入り店はギリギリで助かったのだ!店内の圧が急速に下がる、これでふたりはいったんは落ち着くだろう「い、いらっしゃいませえぇぇぇ!白兄ぃありがとおぉぉぉ!」貴子、安堵から涙のウェルカムスマイルだ。


 「白先輩、ちわっス!」立ち上がって礼をするアカル。白兄とアカルはラグビー部の先輩後輩の関係だ。旗子と貴子も挨拶する。ちなみに先のプレッシャー合戦が原因で失神していた、店内の他のお客様がたはこのタイミングで意識を取戻し始めていた、被害者たちのお代は無料になり、後日アカルがそのお代分、店の皿洗いすることで落着いた、よかったにゃー。


 「白にぃ…白先輩たちもこっちに来ますか?」帰り方面が同じなので親しくしている近所のお兄さんに貴子がお誘いをかける「こいつも一緒なんだけど、いいかな?」「ハロー!ホワイティのフレンドのサミエル・ヒューストン、サミーとよんでくれるとウレシーYO!」「そのキャラ付け用のヘンテコな喋り方ここでは必要ないぞ?」「あ、そう?じゃあ、まあ、普通に喋るわ、みんなよろしくね」やっぱり普通に喋れるんじゃんと三人は思いつつ挨拶を返した。


 「なんか殺気までここ、凄いプレッシャーが渦巻いてたけど、ケンカしてたわけじゃないよね?」「してないっス!」「OK、ならご一緒させてもらおうかな、サミー、こちらがこのお店の看板娘、竹島貴子ちゃんだよ、タカちゃん、俺コーヒーね」「よろしく竹島さん、俺もコーヒーで、ホワイティのおごりネ!」冗談に場が和む、ヤンキー、グッジョブである。


 「日本海の竹島さんかあ」ちらりと白兄を見るサミー「日本海は国際的に確立された唯一の名称だし、島根県竹島は日本固有の領土だよ」意を察して応えるホワイティ「これなんか在日外国人が日本国への忠誠心をアピールするための良いトピックだと思うんだけどね」その言葉にサミーが続く「だね、欧州なんかじゃこういうのに頑張ってるのって在住外国人や帰化移民が多いよね」




 「ところで三人は、なんの話してたの?」「恋バナだよ、白兄」「わたしがおじゃまジョーカーくんが好きって言ったら、アカル先輩が嫉妬しちゃったんですよー」「してねーよ!」


 「で、アカルは誰が好きって?もしかして旭日さん?」「先輩、悪い冗談っスよ、それじゃ自分、ロリコンじゃないっスか」その自らの発言に、何故か胸に痛みを感じて、それを誤魔化すようにカレーピラフをガツガツ喰うアカルであった。そしてその時、胸に痛みを感じていたのはアカルだけではなかった。


 「ご、ごちそーさまでした!じゃ、じゃあさ、タカちゃんは誰が好きなの?」胸の痛みを誤魔化すかのように親友に助けを求める旗子。「わたしはー、そーだなー、じゃあ白兄!なーんちゃって!」あっ、これ本気で好きなやつだ、貴子以外の全員が思った。


 「ありがとう、タカちゃん」優しい微笑みの白兄「俺もタカちゃんのことが好きだよ、勿論、ひとりの女の子として」「え?えーっ!?ヤダ嬉しい!チョー嬉しいよー!」「やったね!タカちゃん!」


 「アカル、俺はロリコンか?」「…いえ、違うと思うっス」「ま、あんまり深く考え過ぎんなよ、そういうのアカルらしくないぜ?」「…ウス、ごちそうさまでした」凄く先輩後輩の会話っぽい!と貴子がはしゃぐ、うれし泣きしそうな、こみ上がり溢れそうな感情を抑えつけるかのように。




 それから5人でとりとめのない会話を楽しんだ。主にゲストであるサミーに四人共通の想い出話を披露する流れで進み、そしてお開きの時間になった。楽しい時間ってあっという間だよね、皆が口々に言う、またこのメンバーで集まりたいね、と。


 その時、ほんの一瞬だけ白兄の表情が寂しげに曇った。気づいたのは恐らく貴子だけ、なんだか嫌な予感がしたが、それ故に気のせいということにして片付けた。


 店の前で皆に手を振る貴子―――振り返って夕日を背に愛おしそうに貴子に微笑む白兄―――それが彼女が見た、彼の最後の姿だった。







 「魔法少女ラスフの正体、ハタコ、だったんだな」初めての呼び捨てに、なんだか気恥ずかしさを感じる、並んで歩くふたり「おじゃまジョーカーくんの正体がアカルく…アカルだって知った時はビックリしたよー」ふたりの視線が交差し同時に思った、相手の顔は真っ赤だが、自分はもっと真っ赤なんだろうなと。


 「でも、もっとビックリしたのはね―――」立ち止まる旗子「―――わたしが、旗子が、アカルのこと好きなんだって、気付いた時なんだよ!」旗子はその右手を、三歩進んだところで振り向いているアカルに向かって伸ばす。


 「俺は、ハタコのことが好きだ」アカルはそう告げると、差し出された旗子の華奢な右手を、大切に包み込むように握り返す「ジョーカーとしてでなく俺として、ラスフでなくハタコのことを―――」そしてお互いの息が感じられるぐらいまで近づき、中腰になり旗子の目を真っすぐに見つめながら気持ちを込めてこう言った「―――愛している」


 アカルは右手で握り込んだ旗子の右手の柔らかさに驚きつつ、お互いの手のひらが汗でヌルりとヌメる感触に、脳の中で火花を散らした。左手の人差し指をすぐそこにある旗子のあごに、下からそっとそえて、自分に顔を向けるようにうながす、親指は真っ赤になっている頬に触れていた。旗子はそっと目を閉じた。


 ふたりの本当のファーストキスを紅蓮に燃える夕日が祝福してくれているようだった。ふたりの甘く優しいキスは、ほんの少しだけカレーピラフ風味だった。







 ―――チヨニ!ヤ!チヨニーッ!―――   ―――ジョーカーで浄化!―――




 「というわけで変身しましたラスフちゃんです、それではヒューストン先輩からのメッセージについて話合いましょう」「しっかし、アイツが俺達ふたりを調査しに来たCIA諜報員だったとは驚きだったねえ、しかも直属の上司がタレントのデーブ・スペクターってマジかよ」


 「それどころか先輩は地球人ですらなかったじゃん、まあ火星出身でもアメリカの市民権は持ってるみたいだからさ、アメリカ人ってとこだけだよ、嘘じゃなかったの、アメリカ人嘘吐き多過ぎ、プンプン」「という訳で旭日旗の神様とインターネットの神様にも会議に参加して頂き助言をお願いしたいと思います」


 「おお、なんだか最近流行りの、てれわーく会議、みたいな進行じゃのう!」


 「了解だヨ!手短にいこうナ!タイムリミットまであと1時間切ったゼ!」




 「チョン星の大統領の暴走を止めないと白先輩が自殺する、これがCIAの宇宙人からのメッセージです」


 「今の大統領って元在日チョン星人で白先輩が尊敬崇拝してる人なんだよな、確かに裏切られたら死ぬほどショック受けるだろうなあ」


 「下落し続ける支持率を反日ブーストで上げるためとはいえのう、竹島に上陸して天皇陛下に謝罪を要求する計画とは、狂気の沙汰としか思えん」


 「あの白って若造は日本人よりも日本人であろうとするトコあるからナ、切腹ぐらいしそうだゾ!」




 「この情報が本当で、もし私たちが阻止出来なかったら、国家間及び民族間の信頼関係は完全に破壊されちゃうね、白先輩の想い描いている未来への道が途絶えちゃうよ」


 「日本人がチョン星人をマネージ出来ていないって醜態を世界に晒すことにもなるんだよなあ、今回のこれ許したら、いろんな国から舐められ外交かまされるだろうな、害務省の無能どもに外交って仕事は期待出来ねえしなあ」


 「アカル殿、いやムコ殿「やめてよ!」ではアカル殿、そなたが積極的にチョン星に関わるとは、ちと意外じゃのう、てっきり『助けない、教えない、関わらない』系かと思ったぞよ?」


 「アカルはサ、『日本はアジアだけでなく有色人種のリーダーでなくてはならない、だからチョン星人問題ごときに手を焼いているなんて日本の先輩たちに申し訳ない』って考えなのヨ!」




 「わたしはこの愚行を阻止しにチョン星に行きたい!阻止して日本人がチョン星人みんなとなかよく生きる未来の可能性を残したい!」


 「俺もこのテロ行為を阻止しにチョン星に行きたい、日本の為に日本人として生きてゆく英断をした、白先輩みたいな人たちを絶望させたらいけないと思うんだ」


 「チョン星の大統領が竹島に到着する前に、天誅のチュー!が決まれば、わらわたちの勝ち、そういうことじゃの!」


 「退路の確保はオイラにまかしとけヨ!最悪CIAの仕掛けた罠だったとしても、絶対安全な抜け道用意しとくヨ!」




 「遅れてごめんなさーい!え?チョン星へ行く?了解!はやぶさ戦闘機モードでチョン星までひとっ飛びダyp…!」「よし!では出発進行じゃ!」「オイ!オレも乗るんだヨ!振り落とそうとスンナって!」魔法少女の戦いは続く。







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 ―――同日 日本海上空 戦闘機はやぶさ機内――――


 「今日の白兄のさ、白弟に言ってた『こうあるべきを前提にして嘘に嘘を重ねている状態』って言葉あったけど、これってよく考えると誰でもみんな多かれ少なかれやってることなんじゃないかなって思うんだけど?」


 どう思う?とラスフに問いかけられたジョーカーくんは、確かにそうかもなと思った。例えば自己アピール、自分はこうあるべきと設定して意識的無意識的にプロフィールを多少大袈裟に外聞良く相手に伝える行為などは、見方を変えればただの嘘と言えるのではないか。


 「確かにそうかも知れない、だからポイントはその嘘が社会やまわりの人たちに悪影響を及ぼすか否かにあると俺は考えるよ」この回答に彼女はあまり納得していないようで、まだ何かを考えていた。


 「いいかの?今わらわたちが生活しておるこの現代社会は大量生産大量消費主義を維持するため嘘に嘘を重ねて成り立っておる状態じゃ、そこに住まう構成員もまた自然と嘘に嘘を重ねる生活をおくることになるのじゃろ、例えば地球環境破壊に加担している自分を悪くないと誤魔化すための嘘とかの、わらわはそう思うぞよ?」


 「ウソツキチキンランなんだヨ!ナンでも限界を超えれば崩壊するダロ?積重ねたウソも同じサ、崩壊する前にウマくまとめるか、最悪崩壊してもソフトランディング出来ればイーンじゃね?っとチョン星が見えてきたゼ!?取りあえず目の前の仕事に集中しようナ?」


 ジョーカーくんはアカルの顔になり、旗子の顔になっているラスフを見つめている。旗子は前方のチョン星を見つめながらつぶやいた。




 「なにかに『なろう』という努力もせずなにかになった気になっているひとたちが、自分はこうあるべきだという自己暗示的な嘘を重ね続ける、それがこの世界(なろう小説の世界)の本質なのかもしれない」







 ―――同時刻 日本――――




 白 善要は遺書を書く手をしばしば止めては思い出していた、チョン星の大統領になる前の月山先輩と語り合った夢を。


 どこで歯車が狂ったのだろうか?もしくは状況を楽観視しするという嘘を、自分自身に吐いてきたことがここにきて破綻したのだろうか?


 月山先輩と語り合ってまとめた考えが、白兄の夢「在日チョン星人が日本人とチョン星人の真の架け橋になる」の基礎部分を構成していた。




 『まずはチョン星内外の慰安婦詐欺の像を全部自発的に引っこ抜かせよう!そして次に世界中に慰安婦詐欺を吹聴したことの謝罪をさせよう!』


 『さらに世界中に慰安婦詐欺がチョン星引き揚げ日本人に対して行ったチョン星人の非道を覆い隠すためのプロパガンダだと周知してまわらせよう!』


 『最後に竹島に武力侵攻した際の蛮行を謝罪させ、チョン星人の働きかけでリアンクール岩礁という名称を取り下げさせ、竹島を日本固有の領土として国際的に確立された唯一の名称にしよう!』




 しかし自称CIA諜報員のサミエル・ヒューストンから伝え聞いた情報では月山先輩はチョン星の大統領として「竹島に上陸」して「天皇陛下に謝罪を要求」するという。


 急落した支持率を反日で巻き返すためとはいえ、他にやりようは無かったのか?今回のこれは確実に一線を超えている。そしてチョン星生まれのチョン星人がこれを行うのと、元在日チョン星人がこれを行うのとでは意味合いが大きく違う。


 もしこの凶行が実現したら、チョン星人の未来も自身の未来も閉ざされる、そう白兄は確信していた。またこれまで月山先輩を民族間関係改善の希望であると公言し周囲に支持を募ってきた自分の立場は確実に瓦解する、何が起こるか想像するだけで正気を失いそうだった。




 白兄は必要な分の遺書をすべて書き終えた、一通を除いて。白兄の小さな恋人、竹島貴子宛の分で手が止まり動かなくなっていた。まるで死までをも感じさせるその生気の無い硬直に、白兄が如何に無念かを強く感じることが出来た。







 ―――同日 チョン星――――




 戦闘機モードのはやぶさを駆ってチョン星に到着したラスフとジョーカーくんを出迎えたのは、反日工作員集団「低他意狂」の指示で動くプロ市民団体「酔妖怪」のメンバーたち、そして、


 「なんて…禍々しい光景なの…(醜いのう…)」今、まさに立ち上がらんとする巨大少女像型ロボットだった。像の足元で熱狂する酔妖怪のメンバーを蹴散らしながらほどなく直立し、両手を真上に伸ばして雄叫びを上げた「マ ン セェェェー!!!」


 「なんだよアレ、20メートルはあるゼ!?」「はやぶさくん、あの人型ロボット、振り切れそう!?」「やってみる…っと、敵の援軍を確認、追加の巨大少女像型ロボット多数接近中デsu…!」はやぶさくんの機関砲による攻撃は酔妖怪のメンバーに当たる可能性があるので使えない、ラスフの判断だ。


 巨大少女像型ロボットは次々と集結してくる、気が付けばラスフたちは数十体に取囲まれていた、どんだけおっ立てたんだよ、という話である。「上昇して上空に逃げようゼ!?」「ダメッ!頭を抑えられてる!」緑色の戦闘機を上昇させまいと黄色の蝶型ドローンの大群が上空で不気味な羽音をうならせながら身構えているのが見える。


 「(まずいのう、さらなる敵の増援じゃ)えっ!?あれって!巨大徴用工像型ロボット!」「(アカル、もう選択の余地ネーヨ!)…旗子、使うぞ?」「(アカル殿!頼んだ!)ッ!!…アカル、うん」




 ―――ジョーカーで浄化!―――




 おじゃまジョーカーくんは誕生して以来、これまでも多数この「悪人同士を争わせる術」を使ってきた、しかし―――


 「(ナンだよコレ!本物の地獄が地上に出現したンじゃネーカ!?)全員が全員、争ってやがる…クソッ!」―――ここまでの悲惨な効果が出たことは無かったし、出るとは想像も出来なかった。


 一発の術でチョン星全土が一瞬にして地獄になった、まるで限界まで嘘で膨れ上がった風船が針の一刺しで破裂したかのようだった。資本主義のショールームがゲテモノ見世物小屋に、ちょっとした切っ掛けでシフトしたのはある意味、必然だったのかも知れないが。


 巨大少女像型ロボットの大群は無慈悲な襲撃と私刑を、少数の巨大徴用工像型ロボットに対して行い、その後巨大少女像型ロボット同士で大乱闘を始めた。その足元では「低他意狂」の詐欺師たちと自称元性奴隷の詐欺師たちが取っ組み合い殴り合っていた。


 俯瞰して見わたせば星中のチョン星人同士が血まみれ糞まみれの死闘を繰り広げていた。老いと若きが、男と女が、保守と進歩が、金匙と土匙が、カンナムスタイルとガンギエイが、チョン星人と在日チョン星人が、考えられるありとあらゆる対立属性が「ウリ」と「ナム」に別れて地獄を練り上げていた。




 「ッ!ここは俺が足止めしておくから!旗子は早く月山を止めに行くんだ!(もうすぐ月山が竹島行きのヘリに乗込むゾ!)」「くっ!わかったよ!わたし、いくね!(アカル殿!ジョーカー殿!頼んだぞよ!)」「旗子ちゃん!はやぶさジェット戦闘機モードでトばしていクyp…!」




 ―――その時!―――「独島は我が領土!」




 「独島は我が領土!」星中の街頭スピーカーから大統領の声がひりだされた、この大音量なんらかの術を使っているのかもしれない。「繰り返す!独島は我が領土!」そのひと声にこれまで繰り広げられていた地獄のうねりの喧騒は、瞬く間に静まり返る。


 「私は大統領の月山だ!これから独島防衛に向かう!そして日王に心からの謝罪を要求する!」騒めきだすチョン星人たち「だからこの星すべてのウリたちよ!反日の下にウリ団結せよ!独島は我が領土!独島は我が領土!」そしてその演説に呼応するかのように絶叫を始めるチョン星人たち。


 「独島は我が領土!」チョン星人は皆「独島は我が領土!」恍惚とした表情「独島は我が領土!」それはまるで「独島は我が領土!」禁断症状で苦しむ麻薬中毒患者が「独島は我が領土!」麻薬を強奪し喰らった直後のような「独島は我が領土!」破滅の歓喜であった「独島は我が領土!」「独島は我が領土!」「独島は我が領土!」「独島は我が領土!」「「独島は!」」「「独島は!」」「「「「我が領土!」」」」




 「日本のせいだ…勿論アメリカの責任も大きいけど…こんな化け物を育て上げたのは日本のせいなんだ!」熱狂する群衆を見つめるラスフの頬をつたう涙は同情のものか、それとも無念のものか「いこう!はやぶさくん!一刻も早く月山を止めよう!」「おk…!」


 ジョーカーくんに背中をまかせて一路、月山に向かうラスフとはやぶさくんであったが、しばらくして…「やっぱりッ!ダメッ!わたし、やっぱり助けに行かなきゃ!」急旋回するイオンジェット戦闘機はやぶさ「日本人を、困ってる人たちを見捨てることなんて出来ない!」


 ラスフの神様EYEを通じてチョン星を見渡せば、各都市部でチョン星人暴徒の日本人狩りと親日派狩りの悲惨な様子が見て取れた。アカルからのテレパシーが届く「旗子!聞こえるか!こっちは出来る範囲でジョーカーくんの分身の術で対応する、だから旗子は月山を―――」


 「それじゃダメ!わたしが各都市をはやぶさくんと巡ってチョン星人たちに天誅のチュー!をして暴動を止め…(ァァァア喝!心意気は立派じゃが!魔力切れで死ぬぞおぬし!)」「旗子!月山を止めに行ってくれ!破滅を食い止められるのは旗子だけなんだ!(タイムリミット超えたゾ!)」


 JAP18とシャッターに大きく落書きされた店が燃えている、718(チルイルパル=親日派)と落書きされた銅像が打倒されている、墓石が破壊され墓があばかれている、旗子は自分の無力さに叫び出したかった、どうしたらいいのかまったくわからず気が狂いそうだった。




 ―――その時!―――




 「日本人の皆さん・安心してください・こちらは自衛隊です・皆さんを救助します・指示に従ってください…」スピーカーから大音量の心強い日本語、通信団超常通信隊 旭日一尉の駆るヤマタノオロチがその背に自衛隊邦人救出特別班を乗せて先陣を切ってチョン星に飛来した!他の都市の在チョン星日本人も全員もれなく救出すべく、オスプレイに搭乗した救出特別班がチョン星各地に展開しているのが見える!


 「助けを求める自国民を助けられないでなんの自衛隊か!」旭日昇は吠える!「お父さんカッコイイ!(いい面構えじゃのう!いけめんと言うのじゃろ?)」


 「痔民のひりだした糞政策が喰らう莫大な予算のほとんどを電痛がごっそり中抜きしやがった!銀行の手数料だけで17億円かかる?その予算は国民の血税だぞ!その金をコロナで困ってる人たちに使えってんだよボケェ!」旭日昇はまたも吠える!「どさくさ紛れに政治屋への愚痴を叫ぶお父さんなんて見たくなかったよっ!(大人はいろいろあるんじゃ)」


 「ラスフちゃん、いや、旗子、よく頑張ったなッ!」「おと、うさん、知ってたんだね!」「ここは自衛隊と小見川君にまかせておけ、旗子には、旗子にしか出来ない務めがあるだろう?」「わかった!いってくる!」「義父うさん、はじめまして、旗子ちゃんのカレシのはやぶさデsj…!」「ほら!いくよ!はやぶさくん!」




 「あっそうだ!お父さん!チョン星のうんと、うーんと北の方からも日本人が助けてって言ってるのが聞こえたよ!」「ほう?」眼光鋭くニヤリと微笑む自衛隊員「詳しい場所はアカ…ジョーカーくんが知ってるから一緒にいって、全員助けてあげて!じゃっ!」戦闘機は音を残して目的地に急行した。


 「ハハーン、日本人が助けてと言っているんじゃあ、助けに行かない訳にはいかないなあ、フフフ」テレパシーを通信団本部に飛ばす旭日一尉「引続きチョン星北部の日本人救出任務にあたります」「了解した、思う存分やってみろ」「髭野防衛大臣殿、政治屋になってナマクラになったかと心配しておりましたが、安心しました!」「旭日、拉致被害者救出、頼んだぞ!」その言葉にワッと歓声が上がる市ヶ谷のB塔であった。


 「よっしゃ!そんじゃあ!一丁気合い入れていきますか!乗ったか小見川君!」ヤマタノオロチの背に乗るアカル「はい!乗りま「よし出発!」うわあ!ふっ、振り落とされるーッ!(ツーかこれ、振り落としにきてんダロ!今日はこんなンばっかダヨ!)旗子のおじさん!この高さから落ちたら自分死んじゃいます!コレ洒落にならないっスゥゥゥ!ギョワァアアア!!!」


 「ああん?小見川ぁ、てめえこのあいだ俺のプリンセスちゃんと、手えつないで下校したんだってなあああ?くっ!ならばここで昇天しても、悔いは無えよなあああ?ああん?」「大アリ!大アリっスよ!」「『ボク、旗子ちゃんと結婚したあと、この義父さんと上手くやっていけるのかなあ…』とか考えてんだろてめえ!オラッ!オラッ!」「考えてないっス!痛いっス!痛いっス!(落ちる!マジで落チちゃうヨ!)」


 しかしやるときゃやるのがノボルとアカルの共通ポリシーである、旗子LOVEの合言葉のもとでふたりは絶妙のコンビネーションを発揮し、拉致被害者とその関係者を漏れなく救出、全員引連れて日本国に無事帰国することになる。




 一方その頃、竹島に向かっていた日本海上空のラスフとはやぶさくんは「(どうやら間に合わなかったようじゃの、これから月山の演説が始まるぞよ?)…いや!まだ間に合うよ!出来ること、まだある!はやぶさくん!(ほう、白兄のもとに向かうのか!)超特急で!」「しっかりボクにつかまってテne…!」行先を日本に変更していた!白兄の早まった断行を阻止するべく!間に合え!ラスフちゃん!







 ―――同日 チョン星TV 19時のニュース 独島より大統領緊急発表生中継――――




 生放送開始、映し出された月山は作業着のような服を着て支持率回復急上昇を確信している嫌なにやけ面をしていた。その後ろには軍の護衛が見える、つまり他国の領土に軍隊を侵攻させるという侵略行為・宣戦布告を行ったのである。月山は演説を始めた。


 「戦犯の息子である日王が10年ほど前に、私にチョン星人慰安婦おばあさんとの仲介を頼んできたとき、私は日王にこう言ってやった」


 『チョン星人全員に心から土下座するのなら勝手に来ればいい、重罪人に相応しく裸にして手足を縛って頭を踏んで地面に擦り付けて謝らせてやる』


 『重罪人が土下座もせず、あいまいな言葉で過去をうやむやにしようとするのなら、その間抜けな顔を糞まみれにしてやる、心のこもっていない謝罪など通用しない、それなら入国は許さないぞ』


 「するとその時その場にいた日本のポルジャンモリが日王に対する不敬を謝罪しろと言ってきたが、『謝罪しなくてはならない側が謝罪せず、被害者であるチョン星人に謝罪しろとは何事か!盗人猛々しい!』と、一喝してやった」


 「さて、ここに素晴らしい作戦がある、作戦名『なんとしても日本人を差別して死にたい』これは日本をチョン星人が乗っ取り、日本国をチョン星の奴隷国にする作戦だ」


 「まずは在日チョン星人が日本国籍をとる、在日チョン星人の中には帰化に難色を示す人がいるが、在日チョン星人がたくさん日本国籍を取った方がいろいろ有利に事が運ぶ」


 「次にその帰化組の手引きで母星から移民を送り込み、この先どんどんチョン星系市民を増やす、すそうすれば、日本で大和民族がマイノリティーになる、日王なんて小数民族の酋長さんみたいなものになるであろう」


 「私には夢がある、私はあと一〇〇年生きて、この作戦で乗っ取った日本で、日本人どもを差別して虐めぬいてから死にたい、これが私の夢だ!」


 「世界のチョン星人同胞よ!反日の元に団結して!この夢を実現しようではないか!日本を世界のいじめられっ子にしてしまおう!ヤー、キブンジョッタ!」


 膨張し尽くした風船は今、破裂した。





 ―――同日 白家 白 善要 葬儀会場――――




 白兄の通夜の準備が整ったのは21時を過ぎた頃だった。会場には、憔悴しきった白弟を支えるかのように寄り添う根斗兄弟とはやぶさくんの姿が見える。また、お棺の近くで泣きじゃくる竹島貴子を無言で抱きしめることでなぐさめている旗子の姿も見えた。 


 そんな中、場違いな怒号が、いや怒号風のカラオケが始まった。「善要君は差別を!日本人からの差別を苦にして自殺したのです!彼は日本人の差別に殺された被害者なのです!」誰だか親族でさえ知らない参列者がノリノリで歌っている。


 そして葬儀に参列している鳳凰学園の教師たちを指さしながらこうシャウトした「そしてまた!善要君は学校で酷い差別を受けていただけでなく、教育の名の下に洗脳されていたのです!」桜井が一歩前に出たところを同僚の教師に羽交い締めにされ止められる。


 「善要君の心と身体を殺したのは鳳凰学園、鳳凰学園です!我々はここに謝罪と賠償を要求する!」親族と他の参列者たちはそのカラオケを止めるどころか合唱を始めた「謝罪と賠償!」「謝罪と賠償!」「謝罪と賠償!」「謝罪と賠償!」旗子の我慢が限界に達し、ラスフに変身しようとした。


 ―――その時!――― 「やめてーっ!」竹島貴子だった。


 「白兄が!白にぃが命懸けで守ろうとしたものを、侮辱しないで!」旗子とつないでいる手がふるえている「白兄が!私たちに話してくれた白兄の夢を」膝も泣いている「無かったことにしないでーっ!うわあああぁぁぁん!」崩れそうになる貴子を旗子は抱きしめて受止める。


 白兄の小さな恋人の訴えで会場は邪な空気を払拭し、弔いの雰囲気を取戻した。騒ぎを起こした参列者たちの多くは反省する様子もなく奥に引っ込み、酒盛りを始めていた。しかしよく見れば合唱隊をやっていた人たちの幾らかは反省しているようであった。


 旗子は腕の中の嗚咽で震える親友を抱きしめながら強く思った、貴子ちゃんの渾身の天誅のチュー!よ、在日チョン星人たちに届け!と。







 ―――同時刻 横田基地――――




 「おじゃまジョーカーくん、ホワイティのダミー死体、親族にバレたりしないよね?」「棺桶ひっくり返して死体蹴り上げるくらいしなきゃ術は解けないヨ!」「俺の親族ならファビョってそれぐらいやりそうだが?」笑えねーよと爆笑する滑走路脇の三人。


 「これからは日本人としての誇りを胸にアメリカに忠誠を誓って生きるよ」白兄はアカルに向き直って言った「日本人らしくね」「目指せ第442連隊戦闘団ってカ?先輩が日本にいなくなるの、日本の損失っス」


 「アカルも日系アメリカ人になるかい?ウェルカムだよ?CIAのパワーでカンタンにアメリカ国籍ゲット出来るのは見ての通りサ」冗談や社交事例ではない、白兄と同様のスカウトだった。アカルは無言で断りの意志を示す。サミーは外人がよくやる肩をすぼめるポーズをとって残念の意志表示をした。


 「俺はこれからCIAの諜報員として向うで生きる訳だけど、小見川たちに対する人質とか考えなくていいからな」「ウス、そんなの先輩に失礼っス」「なんかあったらすぐ腹切るから死んでると思ってくれよな」そう言いながらかわいい後輩の頭をくしゃくしゃする先輩、こういうのもこれが最後か。


 「そいうえばラスフちゃんって可愛いよな、付き合ってんの?」アカルが応える前にサミーが割って入る「今日これからお通夜の帰りの彼女を家まで送るささやかなデートなんだよな?」「なんで知ってんだよ!」「CIAなめんなよ?」


 「羨ましいな、俺も大好きな日本でそんなマンガみたいな青春してみたかったな…あ、そうだこの手紙、竹島貴子に渡してくれないか?」「ッ!ウス!」来たか!と思い一瞬動揺したアカルであった。受取った手紙を大切に懐にしまう。


 「俺は今回の件で日本人とチョン星人の友好を諦めた、まあ少なくともあのツァーリ・ボンバ演説で向う二世代の間は関係改善はまず無理だろ」「ウス…」「けど、あの娘は諦めてなさそうだよな」「ウ、ウス…特定の誰かたちと、じゃなくて、みんなでなかよくっスから、ウス」


 「行きつくところは彼女が傷つくだけってことになるんじゃないか?アカル、それでいいのか?」「ハーイ、タイムアップだよ!ホワイティはオスプレイに乗込んでね」お別れの時がきた「先輩、ご武運を!ウス!」「ああ、アカルもな」白先輩を乗せたオスプレイは夜空に消えた。







 ―――同日 夜の公園――――


 「やっぱりこうなったカー」いささか棒読み気味の、アカルともジョーカーくんともつかないしゃべりかたでつぶやいた。彼のまわりには在日チョン星人不良グループ「タバコで目え焼いたろ会」が蹴散らされていた。


 葬儀会場から竹島貴子を送り届けた後、旗子とアカルはふたりで旗子の家を目指していた。通り抜けようとした公園でアベック狩りに遭遇したのが一分ほど前のことだった。


 「この人たちが、この公園にいるって知っていて、わたしとここに来たんでしょ?」ラスフはしゃがんでひとりひとりに泣きながら天誅のチュー!をし始めた「早いうちにあきらめさせた方が傷が浅くて済むって考えなのかな?ひょっとして白兄あたりの入れ知恵?」


 「俺は学習したよ、白先輩が身体を張って教えてくれたことから」そのラスフの後ろにそっと立つおじゃまジョーカーくん「俺は君が白先輩みたいに深く傷つくところを見たくないんだ!」ラスフの前に回り込む「この連中は昼間すでに一度天誅のチュー!されたやつらなんだぜ!?」うんざりといった感じに連中たちを見下ろす。


 「あきらめてくれ、旗子!世の中には一定率で不幸な人たちが存在するんだ!みんなで仲良く、みんなで幸せに、そんなのは実現出来ない、夢でしかないんだよ!」




 「それでも私はその夢をあきらめない、いつの日か、すべての人類が、人種も、宗教も、格差も、そういったものすべてを超えて、みんなでなかよくなれる日が来るという夢を」魔法少女の戦いは続く。








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