ルミナ
「・・・・・・っは⁈」
目が覚めるとそこは真っ白で何も無い音の無い、『無』と言っていいほど何もない空間に一人立っていた。
「なんだここ。誰かいないのか。」
とりあえず声は出た。だが、そもそもここはどこなのだろうか。俺は確かにあの時電車に轢かれて死んだはずなのに。
「ようやく目を覚ましましたね。」
後ろから声が聞こえ振り返ると、大体150cmくらいの少女が現れた。
長い紫髪に、澄んだ青色の目、服装は中世ヨーロッパのローブような服を着て、右手に先端に丸い黄色い球が浮いている金色の棒を持っている。
しかも彼女は足が地に着かず、浮いていた。
「お前は誰だ。ここはどこだ。俺はどうなった。早く教えろ!」
とにかく俺はイラついていた。死んで無いなら早く仁を殴りにいきたい、彼女だって他の人間だって。
もう周りの人間なんて信じられない。
「そんなにいっぺんに質問しないで下さい。順番に説明しますから。」
若干、怯えているのかしどろもどろだ。
まぁ確かに、周りの奴らが怖がっていた事だしこいつが怖がらないのも無理はないが。
「まず、私は『神』と名乗っておきましょう。」
「あなたは、線路に落とされ電車に轢かれました。」
「じゃあやっぱり俺は死んだのか・・・」
俺は何故だか素直に受け入れられた。
そして俺の言葉を聞いた彼女はそっとまばたきをした後、何故か少し悲しそうな顔をした。
「そしてここは、私が創り出した世界。あなたと話すために作った異空間というやつです。」
嘘か本当かはよく分からないが、この空間について俺より詳しいのも事実。圧倒的不利な場合はまずは相手に合わせるのが基本。
とりあえず相手に話を合わせよう。
「なるほど。で、俺はこれからどうなるんだ。」
出来るなら仁と彼女を殴りに行くために生き返りたい。
「あなたにはこれから異世界に行って赤ちゃんからやり直してもらいます。」
予想外の言葉に流石に驚いて、一瞬イライラが無くなった。
「・・・は?異世界だ?お前頭大丈夫か?」
流石に言いすぎたか、自称神はほっぺを赤くして少し涙目になってしまった。
「私はいたってまともですっ!」
「とにかく、あなたにはこれから異世界にいってもらいます!」
若干怒りながら強引に言いつけてきた。
「わかったわかった。で、俺は何で異世界にいかなければいけない?」
すると自称神は表情を一変させ、明るい表情になった。
「簡単な事です。あなたは異世界にいって、今までやってきた事を反省し、その腐った性格を改心させるのです!」
「誰が腐った性格・・・」
「あなたは今でも自分が殺された理由を理解していないでしょう。今すぐ生き返らせる事も可能ですが、自分の何がいけないのか反省すべきことをしっかりと見つけ反省し、自分を見つめ直なさければいけません。」
「俺は何も悪くなんか・・・・・・」
「もしあなたが自分の行いを自覚し、反省した事が見受けられたら生き返らせましょう」
「だから俺は何も・・・・・・」
「さぁ、いってらっしゃーい!」
俺が最後まで文句を言う間も無く、自称神は俺を指差し、その瞬間あたりが光に包まれた。
最後に何か言った気がした。
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ん、ん?異世界に着いたのか?目を瞑ってるから何も見えないが、微かに左手に感触がある。
あぁ〜柔らかい感触、なんか若干触り覚えのある感じだ。
とりあえず触覚は大丈夫そうだ。
さてと次は視覚だな。異世界とはどんな世界なのだろう、現世と変わらないのだろうか。
恐る恐る目を開けると、目の前に少し小太りの女の人と、少し年のとったおばあさんが両脇にいる。真ん中には若い男が一人。
よし視覚も問題なし!
「おい、この子泣かないぞ!」
男の声だな。
「そんな嘘でしょ⁈」
これは女の人、しかも年配の声だな。
これで聴覚もオッケー。
幸いにも異世界の言語を習得した上で、来たようだ。
それにしても騒がしい。なんだ?泣かない?どういう事だ?
「あのー・・・」
「!!!旦那様今話しましたよ!」
「赤ん坊が喋るはずなかろう。」
赤ん坊⁈
そうだった、俺は赤ん坊から始まるって言われていたのをすっかり忘れてた。
なら泣かなくて焦るのも意味は無理はないな。
俺は全力で泣いたふりをした。あまり演技には自信が無いが、やらないよりはマシだろう。
「おっ、おぎゃーーー!」
こんなもんで大丈夫だろうか。
「なんか変な泣き方だけど、無事泣きましたよ!」
「おおー!良かった良かった。」
なるほど二人のおばさんは助産師か、ホッとした表情をしている。
そして少し奥には、汗をたくさんかいて顔が少し赤くなっているが嬉しそうな表情をしている女性がいる。
きっとこの人が俺のこの世界での新しいお母さんだろう。かなり可愛い。しかも巨乳。早く母乳をいただきものだ!
そしてお母さんの手を握りボロボロと泣いている、さっきの若い男がおそらく俺のお父さんになる人だ。結構イケメンだな。
こんな美男美女、これは成長したらかなりの美形になるかもしれないな。
親父が泣きながらより強く母ちゃんの手を強く握り始めた。その親父を見て母ちゃんも微笑んでる。
もしかして俺が初めての子供か、だとしたら感動するのも無理はないな。
だけど・・・・・・。
なに母さんの手を握ってやがる、離せよ!
少し嫉妬心をもったが、どちらもいい親みたいだと少し安心したな。
「ねぇあなた、名前はなににしましょうか?」
「もう名前は決めてあるぞ!」
「この子の名前は!」
俺の名前は・・・?
かっこいい名前がいいな、ゼットとかガルドとか。異世界だとこういう名前が多いってあの自称『神』が言ってたからな、変な名前は勘弁したいな。
「この子の名前は『ルミナ・シゼリス』だ!」
「ルミナ!かわいいお名前ですね。」
両親は嬉しそうにルミナという名前を語る。
いやいや、ちょっと待て。男にルミナって、おかしい気がするんだが、この世界では普通なのか?
「ルミナ、すくすく育ってくれよ〜」
「大丈夫ですよ。きっとルミナは上品な女の子になりますから。」
・・・女?俺は男なのに、なにを言って・・・
ん?そういえばさっきから思ってはいたが、あそこの感覚が前世とは違った、何も無い感じがするがまさか⁈
リトルルミナを手でさりげなく探した。
結果・・・・・・リトルルミナはいなかった。
・・・・・・。
なにーーーーーーーーーー⁈ま、まさか俺は、女に⁈
性別が変わるなんて聞いていないぞ、どうゆう事だよ。
だがこれでようやく理解した。
俺はこの異世界で『ルミナ』という女の子として前世の番長としての行いを反省し、善良な人間になれと。
そして、この異世界に行く直前にあの神は何かを言っていたが、恐らく善良な人間になって新たにこの世界で幸せに生きなさい。みたいなことだろう。
冗談じゃない。俺は好きで番長になった訳でも無いし、性格も腐ってない。
ただ、人とのコミュニケーションが苦手だっただけなのに、誰かに恨まれる様な事じゃ無いのに。
くそ!ふざけるな。こんな一方的に押しつけられるなんてごめんだ。
あの神の言うことなんか聞かずに、今度は自分の意思で番長になってやる。いや、女だから女番長か。
これからどんな生活が待っているのか不安もあるが、やってやろう。
目標は、異世界初の女番長になってやる!
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